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『影響力の武器』あまりに重厚でしっかりとまとめたくなったので二部構成でアップします。(前編)

 こんにちは! オオハシです。週末柏に行くことも増えてきて、ブログの継続が危うくなってきてますが、今週はなんとか続けられますので投稿です。
 こちらも有識者の方からアドバイスいただいた古典的名著なのであるけれど、一回目読み切りも、二回目も、相当な時間を要する読書となりました。深く読み込んでいったこともあり、結果として付箋の数量が相当多くなり、ブログにまとめながら組み立て直したいな、と思いまして、はじめて前半・後半との二部構成で投稿することにしました。 
 内容としては、「返報性の法則」はじめ承諾の心理に関する科学的証拠を6種類、心理学的原理としてまとめ、それらに対する考察、そして防御策含めて、比較的読みやすいストーリー形式にてまとめられたもの。影響力の武器(wepons of influence)、承諾誘導の技術として勉強になり、さらにこれら原理は相当恐ろしいものだ、と認識しました。

影響力の武器 [第三版]
なぜ、人は動かされるのか

ロバート・B・チャルディーニ 著 社会行動学研究会 訳
2014年7月の本

 第三版として刊行された年が2014年(英語版では第五版とのこと)、原書の初版が出版されたのは1985年とのこと。30年以上も読み深められたシリーズということもあり、このタイミングであらためて勉強できたことは良かったと思います。だいぶ読みたい本が乱立してきていて困っている事実はありますが、「実践編」や「戦略編」「ポケットブック」などの関連本も読み進めていきたいと思います。

 話が少しそれるのですが、私がnoteへ読書レビュをアップする際には、ほとんどの場合、一回目の読書後、二回目を再読し、自分なりに咀嚼した内容と感想をまとめ、後半は引用で〆る、という構成をとっています。しかしながら、今回の書籍においては、前半部分の咀嚼+感想まとめ、が、たぶんうまくできなそう、まとめながら考えていきたいな、という思考が生じ、ブログとしてまとめながら自分なりに整理していく手法をとってみたいと思います。はじめての取り組みであり、結果として読みにくくなっていたらすみません。
 私がnoteを行っているモチベーションとして、本のタイトルやカバーで興味を持っていただける方の代わりに代読・レビューをアップして、お忙しいひと様への人生に貢献したい、と思っている観点が主軸ですが、読んだ本について自分なりの理解をまとめてアップすることにより、自分の成長につなげていきたい、という観点もあります。つまり今回の投稿は後者の位置づけが強くなります。 

 それでは、本編引用・解説へと進んでいきましょう。


1.返報性のルール

私たちの身の回りにあるさまざまな影響力の武器のなかでも最も強力な武器ー返報性のルールです。これは「他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなくてはならない」というルールです。 (中略)英語のほか、さまざまな言語で、「恩に着ます」という表現が「ありがとうございます」という表現の同意語になっています(たとえばポルトガル語の「obrigado」がそうです)。恩義の感情が未来に及ぶことは日本語の「ありがとう」を表すフレーズ、「すみません」によく現れています。「すみません」というのは文字通りに読むと、「これでは終わりません」という意味になります。

影響力の武器 P35 

返報性のルールは、あまりに有名であり、無学な私でも知っていた行動であるが「すみません」に関して、こういう解釈なのだと知らされたことは、なるほど日本人として改めて勉強になったと思い、引用の一番目にもってきました。

後世に大きな影響を与えたフランスの人類学者、マルセル・モースが「人間文化における贈与過程にまつわる社会的圧力に関して、与える義務、受け取る義務、お返しをする義務がある」と述べているのも、不思議ではありません。

影響力の武器 P57

読書を重ねていると、あ、来た!という時ってありますよね。返報性のルールを読み進めていた時に、これって「贈与論」の話に繋がっていきそうだな、と思っていたら、やっぱりその話題につながった箇所がありましたので思わず付箋しました。 贈与論に関して触れていた本に関してもリンクしておきます。


厚意は厚意に返すもの

このルールは厚意には厚意を返すべきだと言っているのであって、策略に対して厚意を返せと要求しているわけではないからです。(中略)

厚意は厚意に返すべきものであってーセールスの戦術に対して返すものではないからです。(中略)

結局のところ、返報性のルールは、それが正義がなされるのだとすれば、搾取の試みには搾取でお返しをすべきだと主張しているのです。

影響力の武器 P87

6つの影響力の武器に対して、章の後半部においてはその防御策が書かれている構成となっているのですが、返報性のルールに対する防御策は、上記の通り、厚意に対する厚意か、策略に対する返報かをしっかり判断することと解説してくれています。策略・搾取に対して、不要な恩義を感じる必要はない、と主張してくださっています。

まとめから抜粋

返報性のルールは、他者から与えられたら自分も同じようなやり方で相手に返すように努めることを要求する。返報性のルールは、行為の受け手が将来それに対してお返しをすることを義務づけるので、人は自分が何かを他者に与えてもそれが決して無駄にはならないと確信できる。このルールに将来への義務感が含まれることによって、社会にとって有益なさまざまな人間関係や交流、交換が発達することになる

(中略)

返報性のルールを使って私たちを丸め込もうとする者に対する最善の防御法は、他者の最初の申し出を杓子定規に拒否してしまうことではない。むしろ最初の親切や譲歩は誠意をもって受け入れ、後で計略とわかった時点で、それを計略だと再定義できるようにしておくことである。

影響力の武器 P91

ほかにも「コントラストの法則」や「拒否されたら譲歩」法など、いくつかの方法も紹介されていたが、返報性のルールは、厚意に対して厚意でお返しすることが結果として社会の発展に寄与したと記載されており、その防御策として明確に、策略に対して厚意で返答する必要はない、と断じてくれています。私は、かなり騙されやすいたちなので、意識して行動していきたいです。


2.コミットメントと一貫性

ひとたび決定を下したり、ある立場をとる(コミットする)と、自分の内からも外からも、そのコミットメントと一貫した行動を取るように圧力がかかります。そのような圧力によって、私たちは自分の決断を正当化しながら行動するようになります。そして自分が正しい選択をしたと自分に言い聞かせるだけで、本当に、自分の決定に対する満足度が上がるのです。
(中略)
 なぜ人が、これほど一貫性を保とうとするのか。それを理解するには日常の大部分において、一貫していることは望ましくもあり、適応的であるという事実を認識する必要があります。一貫していないというのは、通常望ましくない性格特性であるとみなされます。

影響力の武器 P97

これはかなり自分の人生において重要視している価値観、以前、黒田博樹さんの「決断(決めて断つ)」に関してコメントしたことがありますが、自分が迷いながら選択した道を正解にしていく、という行動指針は大事な価値観としています。実際、満足度が上がる、というのは経験上明らかだと思っています。


自己決定、責任の自覚

 社会科学者によれば、人は自分が外部からの強い圧力なしに、ある行為をする選択を行ったと考えるときに、その行為の責任が自分にあると認めるようになります。 (中略)
 ここで述べたことはすべて、子育てに関する重要なヒントとなります。つまり、子どもに何かを本心からやらせようと思うなら、決して魅力的なごほうびで釣ったり、強く脅してはいけないということが言えるでしょう。(中略) 親のさせたい行動に対して、子ども自身が責任を感じるように、お膳立てをしなくてはなりません

影響力の武器 P150

子育て期のヒントの話をアナロジーとして紹介してくれており、共感できた部分を抜粋。自分としても大事な価値観としているが、やらされ仕事ではなくて、自主・自律で自分で決めた事に関してはコミットメント効果が高まるし、結果として、GRITというか、どんな苦境に対してもめげずにやり遂げる、という力が湧いてくると思います。GRITも良本なので引用しておきます。


避けるべき種類の一貫性

 一貫性は基本的にはよいもので、不可欠でさえあるけれども、なかには馬鹿げていて、コントロールしにくい、避けるべき一貫性も存在すると意識することです。よく考えもしないで、ただ自動的に一貫性を保とうとしないよう、よくよく気をつけなければいけません。

影響力の武器 P166 

 コミットメントを伴う決定は、それが間違っているときでさえ、「自分を支える柱を築く」ことができるので、人はその決定に固執することになる。つまり、多くの場合、人は自分がしたコミットメントに、その正しさを示す新しい理由や正当化を付け加える。その結果、コミットメントを生み出した状況が変化したずっと後も、そのコミットメントの効力は持続する。
(中略)
 承諾の決定に対する一貫性の圧力の不当な影響を認識し、それに抵抗するには、身体の中の二つの部位 ー胃と、心の奥底― から送られる合図に耳を澄ます必要がある

影響力の武器 P182

柔軟な発想や状況判断、不確実な時代だからこその朝令暮改、その時その時に応じた臨機応変さ、というところは頭ではわかってはいるものの、自分としてはどうしても初志貫徹・一貫性に強くコミットしてしまうところあり、避けるべき種類の一貫性に引きずり込まれがちな人間だと思っています。危ないと感じたら、胃と、心の奥底、の声をよく感じて、行動を判断していきたいですね。 長くなってきてしまいましたが、もうあと一章です。


3.社会的証明の原理

特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断します
 ほかのみんながやっているのなら、それは適切な行動だとみなす態度は、通常の場合はうまく機能します。一般に、社会的証拠に合致した行動をする方が、それと反対の行動をとるよりも、間違いを犯すことが少ないはずです。たいていの場合、多くの人が行っているのであれば、それは正しい行動なのです。社会的証明の原理が持つ、こうした特徴は、この原理の強みでもあると同時に弱点でもあります。

影響力の武器 P189

この章を読んでいて、すごく怖くなった。「ほかのみんながやっているのなら、それは適切な行動だとみなす態度」というのは、私は小さなころから極めて違和感をもって接してきた人間であり、だからこそ不協和音が出て来た時に、すごく共感をした記憶がある。


集団的無知

彼らが示した無関心は、まさしく大都市でしか見られないものの一つだった。もし、人が無数の人間に取り囲まれて圧力をかけられたら、周囲との終わりなき衝突から自分を守ることは、心理的サバイバルと言ってもいい問題である。そして、わが身を守る唯一の方法は、彼らを出来る限り無視することであろう。隣人や、彼らのトラブルに対する無関心は、ニューヨークのーそして、それ以外の大都市のー生活においては条件反射なのである。
(中略)
 目撃者が三十八人もいたせいだというのです。事件に関するこれまでの説明では、三十八人もの人が見ていたのに、誰も行動しなかったという点が強調されてきました。しかし、ラダネとダーリーは、それだけ多くの観察者がいたので、誰も助けなかったのだと考えたのです。
(中略)
助けられそうな人がほかに何人かいれば、一人ひとりの個人的には責任は少なくなるからというものです。「たぶん、誰かが助けるか、助けを呼ぶかするだろう。もうそうしているかもしれないな。」ほかの誰かが助けるだろう、もう助けてしまっただろうと皆が考えるので、結局だれも助けないという結果になってしまうのです。

影響力の武器 P214

さらには、グループでいるときには、何もしない場合が多く、特にグループの人たちがお互いに初対面の場合は、こうした傾向が強まります。集団的無知の効果は、見知らぬ人同士のあいだで最も強く現れるようです、とのことです。 また、「あなた自身が犠牲者にならないために」と書かれていた節には、こう書かれていました。 これまで見てきた研究結果に基づいてアドバイスするなら『群衆から一人の人間を分離しなさい』とのことです。


防衛法

社会的証明の原理は、多くの飛行機に装備されているような自動操縦装置を私たちに提供してくれているのです。
 しかし、自動操縦にはときとして現実的な問題が生じます。装置に入力された飛行情報が間違っていれば、問題が必ず起こります。(中略)私たちの幸福にとっては両刃の剣であるこの装置を、どのように使いこなしたらいいのかという問題です。
 幸いなことに、このジレンマから逃れる方法が一つあります。自動操縦が支障をきたすのは、主として不正確なデータが装置に入力された場合なのですから、こうした事態に対処する最良の防衛法は、どういうときにデータが誤るのかを知ることです。社会的証明という自動操縦装置が不正確な情報をもとに作動する状況に対して敏感になれば、そうする必要があるときには、手動に切り替えて、自分で操縦桿を握ることができるのです。

影響力の武器 P250

ドクターホワイトの第6回の時にも言ってましたよね。AIが誤るのは、適切な情報を与えていないからだ、と。 そして、自動操縦装置に対して不正確な情報をもとに作動する状況になったら「僕は嫌だ!」と言えばいいんですよね。


まとめから抜粋

社会的証明は二つの条件下において最も強い影響力を持つ。一つは不確かさである。人は自分の決定に確信をもてないとき、あるいは状況が曖昧なとき、ほかの人々の行動に注意を向け、それを正しいものとして受け入れようとする。たとえば、状況が曖昧だと、明確な緊急時と較べて、援助に関する傍観者の決定に、ほかの傍観者の行動が大きく影響を与えるようになる。社会的証明が強い力を発揮する第二の条件は類似性である。すなわち、人は自分と似た他者のリードに従う傾向にある。
(中略)
誤った社会的証明に影響されないために、次のことを肝に銘じることが必要である。①類似した他者が行っている明らかに偽りの証拠に対して敏感であること。②自分の行動を決定する際には、類似した他者の行動だけを決定の基礎にしないこと

影響力の武器 P263

不確かな時代、類似性に流されず、自主・自律の精神で一つずつ一つずつ自らの判断を積み重ねていきたいと、強く思いました。


以上

随分と長くなってしまいました。 そして最後までたどりついてくださって真にありがとうございます。二度読みからブログとしてまとめ上げる際に、自分なりに工夫して取捨選択したけれども、前半の3つの原理だけでこのボリュームになってしまったので、次週と二回に分割することにしました。 次週も、ご覧いただけたら嬉しいです。

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