『元彼の遺言状』文庫サイズになって買ってよかった、一気読みでした!【読書レビュ】
おもしろかった! 買ってよかった。僕はあまり小説とか特にミステリーとかはほとんど読まないのだけれど、たまには読みたくなることもあるので、今年初の丸善まとめ買いの際に購入してきた本。ちょうど一年前のまとめ買いの際にも気になっていて、その時は「心淋し川」「推し、燃ゆ」を買っていて、横にあったこの本もすごく気になっていたのだけれど、上記のとおりミステリーはあんまり読まないこともあって、その時は買わなかった。でもずっと気になっていて今回文庫本になったのを見て喜んで買いました。楽しく一日で読み切り、内容を把握した上で翌日の午前中に二度読み完了、ミステリーでもやっぱり二度読みはいいですね。
元彼の遺言状
新川帆立 著 2021年10月の本
主人公の剣持麗子さんが破天荒過ぎて強すぎて、でも小説の中でも彼女の成長や葛藤なども表現されていて、もちろんミステリーとしても面白いんだけれど、二度読みの際に散りばめられたいくつかのヒント情報をたどっていくのもとても楽しかったです。
剣持麗子さんもそうなんですけど、著者の新川帆立さんも相当にぶっとんでいる方であり、そのご経験があってこそ、こうしたキレッキレの書籍が書けるんだなぁと、頭のあまりよくない私は思います。新川帆立さんのご経歴が巻末の「解説」に書かれており、ざっと記載しておきます。
現在、小説執筆に集中するために弁護士業は休業中だという。ほんと、麗子に似て、とんでもない人だ。(最高位戦日本プロ麻雀協会プロテストに合格が刺さった。。)
さて、ミステリーの読書レビュってすごく書きにくいのだけれど、ストーリーに直接かかわらない程度で、引用しておきます。
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贈与論
はっ、いきなり来た。 そんなに多読家でもないけれど、この話って最近読んだよね。そうそう『思考のコンパス』山口周さんの本の第2章の近内悠太さんの章で出て来た!と思ってました。
雪乃の解説
登場人物が複数人いる小説のため、特徴的な名前として読者の頭に残りやすい工夫をしてくださっていて、雪乃はまさに細くて白くて雪のようなというイメージの女性と書かれていたが、二度読みの際にこちらの記述は思わずなるほどと思ってしまった。こうしていくつかの箇所に仕掛けをまいていっている情報を二度読みで探していくのも面白いですよね。
弁護士の仕事って
こちら著者の新川さんの想いがそのまま文字になっているんだろうな、とも思いながら、このくだりも後々のストーリーのヒントになっていく、散りばめられた断片の一つですよね。 後々、麗子が変わっていく前の印象です。
法医人材
この部分は一回目読んだ時点で、『アンナチュラル』!と思いました。石原さとみさんが法医学者として「不自然死究明研究所(UDIラボ)」で働き、そこに運び込まれるのは、“不自然な死”(アンナチュラル・デス)」の怪しい死体ばかりというお話。その時のミコトさんの話がよく思い出されました!解剖されない「ご遺体」の話。
(まったくどうでもいい話ですが、娘の誕生日にアンナチュラルのディスクをプレゼントしたことがあります。)
使命感
小見出しは自分の判断でつけているのですが、この時の麗子の心境は僕の感覚だと使命感という言葉が当てはまるんだと思うんです。何のために働くのか?というポイントは前半は明確にお金の話が出てくるが、P259、260あたりから、その何とも言えないものに突き動かされていく、麗子が成長していくシーン。P143の抜粋からすでに変化がある。自分では気づいていないが、お金のためでない何かのために行動しようとし始めている!
こころのねっこ
麗子の成長のストーリーに、心をウキウキさせながら(自分がカネのために働く人間でないので勝手に超共感していて)、たぶんどっかで来るだろうなと思っていたところに、彼女が弁護士を目指した背景が明かされるシーン。
当人は、既にまったく記憶にない、金の亡者的に前半部書かれているだけに、このシーンは「やっぱりね」な水戸黄門的な安心感はあったけど、超うれしかった。小見出しは、自分の子ども達の保育園の卒園式時に聞いて私が大泣きした曲のタイトルです。
責任感
もうこのころの麗子は、完全に振り切れていて痛快。お金のことしか考えていなかったところから、こんなにも純粋に心から突き動かされて行動できるようになっている。そして、その行動を「これが私の仕事なんだから」と自分に言い聞かせている。この一文、著者の新川帆立さんが自分に言い聞かせているのかしら。 純粋に人のために自ら犠牲を取って行動できる人、超共感します!
インテグリティ
クライマックスの後のシーン、達成感で「大の字になって」寝る麗子。「お天道様に恥じるようなことは何もしていない」もうこの言葉、インテグリティしかないです。 カネがもらえるとか、仕事になるとか、そんなことはどうでもよくて、とにかくP262のようなこころのねっこがある中で、ひと様のために汗をかいて、「お天道様に恥ずかしくないか」という観点での判断基準に麗子が変化、というか進化?、したことが超超うれしかったです。
こころのねっこその2
前半に父上とのバトルがあったりしたシーンがあった後の最後のオチ的な内容をこちらで記載してしまっては本当はいけないのかもしれないが、やっぱりここは書いておきたかったのでお許しください。 本当に心優しい勝気の麗子が実は自分から父親に言っていた、という事実が確認されるシーン。
次作はまだ読んでないけど、麗子さん、もうちょっと素直になってください、強くて美しいのはわかるけど、と思う弱者な(このお兄ちゃんのような)自分がいました。。
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以上
最後まで読んでいただきありがとうございました!
一応、ミステリーの根幹に関わる内容には触れていませんが、麗子の成長という観点では触れてしまっていまして、その点はご容赦ください。
ブクログレビュもアップしておきます。みなさん、受け止め方がいろいろですね。
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