【読書記録】草祭
2024年205冊目。
この世界のひとつ奥にある美奥を舞台にした短編集。
これまでの恒川作品はここでないどこかが舞台で、そこが現実に接続されるような作品が多かったですが、『草祭』は普通に暮らしている街に不思議なことが潜んでいるといった感じで、いつもと雰囲気が違ってよかったです。特に「屋根猩猩」「天化の宿」はその感じがよくでていたと思います。
「けものはら」はこれまで通りここでないどこか系の作品。美奥からさらに隠されたけものはらに行く内容です。春がけものになったのは後で出てくるクサナギとは関係ないかもしれませんが、動物が別の何かに変化するのが短編集全体のイメージのように感じました。
「天化の宿」はこの短編集の中で一番好きな作品。やり切ったら悟りを開いてお地蔵さんになっていたのかもしれませんが、苦しみが戻ってきたとしても現実に生きる選択もありですよね。強く生きてほしいと思いました。