【読書記録】不村家奇譚 ある憑き物一族の年代記
2022年46冊目。
令和の怪奇小説とはこういうものかと思いました。
この前紹介した『小さな手 ホラー短編集4』もそうですが、怪奇小説を読んでるとどうしても古い作品ばかりになりがちです。
本書は、怪奇小説が枯れたジャンルではないことを声高に叫ぶ一冊です。
東北の旧家の不村家は憑き物筋の一族でした。一族は繁栄の代わりに、数代に一人奇形の子どもが産まれる業を背負っていました。
不村家では当家以外の健常者は決して一人で居てはいけないという掟があり、使用人は全てかたわ者でした。
年代記とあるとおり、戦前から現代に至るまで時代を追う形で展開されていき、章ごとに語り手が交代していきます。
憑き物に振り回される不村家一族とその周辺の人々が描かれますが、ホラー描写が主眼ではなく、登場人物の心理描写に重きがおかれている感じがしました。
不村家の憑き物は水子とされています。
水子の憑き物というと、京極夏彦『姑獲鳥の夏』を思わせる設定です。
『姑獲鳥の夏』では水子は憑き物にならないとされていますが、本書でも水子は純粋なので祟らないともされており、その憑き物の正体が謎の一つとして提示されます。
また、身体障がい者を集めるという設定は『感応グラン=ギニョル』を彷彿とさせますね。
『感応グラン=ギニョル』はミステリーズの特集「怪奇・幻想小説の新しい地平」に掲載された作品で、令和の怪奇小説として本書と併読することをオススメしたい作品です。