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【読書記録】人狼ヴァグナー
2022年1冊目。
19世紀の怪奇小説です。解説によると、人狼を主人公とした最初期の作品とのことです。
ドイツの黒い森に住むヴァグナーは孤独に死を待つばかりの身の上でしたが、ある夜謎の人物の訪問を受けます。
謎の人物はヴァグナーにある契約を持ちかけます。それは、莫大な富と不死の命を得る代わりに人狼となるというものでした。
人狼となったヴァグナーはイタリアのフィレンツェに居を構えます。そこで聾唖の貴族の娘であるニシダ姫と恋に落ちるのですが、ニシダ姫にはある秘密があり、そこから2人の数奇な運命が展開されていきます。
ヴァグナーとニシダ姫の2人を軸に物語は展開されますが、全体としてはいくつかのブロックに分かれていて、各場面ごとに戦闘やロマンスなどの見せ場があります。感覚としてはRPGゲームに近いでしょうか。
人狼が主人公の物語ですが必ずしも主題というわけではなく、数多く散りばめられた怪奇的なモチーフのうちの一つといったところ。むしろヒロインであるニシダ姫の抱える秘密とは何なのかがストーリーとして重要な意味を持っています。
ニシダ姫の方がヴァグナーよりも存在感を放っていました。ヴァグナーや弟を愛する一方で目的のために悪辣なこともやってのける烈女として描かれていました。最終盤で秘密が明かされるまで行動原理が読めず、何をするか分からないところが魅力です。
舞台転換も巧みで、オスマン帝国とキリスト教国家との戦いのようなスケールの大きい場面がある一方で、修道院の地下にある隠された牢獄のような怪奇小説らしい場面もあり、長大な作品ですが読んでいて飽きません。
全体的として完成度が高く、19世紀の作品ながら今読んでも楽しめるおすすめの作品です。