【読書記録】初夏ものがたり
2024年222冊目。
山尾悠子の初期作品の復刊です。集英社コバルト文庫の『オットーと魔術師』から「初夏ものがたり」のみを抜き出して復刊しています。こうなると『オットーと魔術師』自体が読みたくなってしまいますね。こちらも復刊してほしいところですが難しいでしょうか。
もとが少女小説のレーベルだったこともあり雰囲気が代表作の『夢の棲む街』などとはかなり異なる印象です。こちらの方が読みやすくはありますが、山尾悠子の現在に至る系譜を考えると異端側の作品だと思います。
ただ山尾悠子らしくないとかそういうわけではなく、どれも粒揃いで面白い連作短編集となっています。
依頼するのは生者ではなく死者の側というのが面白いです。この手の作品では生者の方が死者の死を受け入れるために死者を呼び出すのがお約束ですが、それを死者から依頼することで雰囲気が儚くなったり幻想的になったりして山尾悠子らしさがグッとでてきたように感じました。