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【読書記録】兄の嫁と暮らしています。 10

2021年200冊目(漫画等118冊目)。

前巻で兄の死を受け入れることができた志乃ですが、希がハイジと一緒にいるところを見て動揺してしまうあたり、唯一の家族である希を失ってしまうかもしれないという恐怖は克服できていないようです。そして、その恐怖は大志の死を受け入れられず、志乃が進学(または就職)で家を出るかもしれないという状況下の希にはより強く襲いかかります。

志乃に大志の面影を見ることを支えとしている希にとって、志乃が近くにいないということは深刻な事態です。逆に志乃にはその葛藤は見受けられません。この関係を教え子に仮託したエピソードがDairy.93 でしょう。遠くに転校してしまう友人と喧嘩してしまった教え子を見た諸星先生の言葉が刺さります。

結局物理的距離が離れただけで関係性が崩れるって思うのは相手を信用してないって事だからね

物理的距離が離れていても、苦しみを共有し理解しあうためには、その苦しみを告白し受け止めあわなければなりません。大志の死という同じ事象が原因でも苦しみの感情は自分だけのものだからです。希は姉の仮面を外すことができないのは、志乃を信用しきれていないのでしょう。

大志の死を受け入れた志乃にしても、苦しみから解放されたわけではありません。仮に希に新しい恋人ができて家を出るとなったら今の関係性を維持できるとは思っていないのではないでしょうか。この場合は物理的距離が離れただけとはいえませんが、相手を信用しきってはいないという意味では同じでしょう。

二人の関係性を前に進めるために。二人の告白が始まります。

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