山と珈琲
『岳』という山をテーマにしたマンガがあります。山小屋にはほぼ必ずと言って良いほど置いてあるマンガです。
その主人公で、山岳救助ボランティアである島崎三歩さんはコーヒーが大好物。
テントや山小屋ではもちろん、
ロッククライミング中でもポータレッジ(休憩用のハンモックのようなテント)の上でコーヒーを淹れて飲んでいます。
絶景を前にして至福の一杯を飲む、
その何とも言い難い贅沢さが物語の端々に描かれ、私もその描写に共感します。
(興味のある方、ぜひ買って読んでください‼︎)
この島崎三歩さんに限らず、登山をする方にはコーヒー好きが多いと感じます。
冒頭の写真は一昨年に私の働く小屋で「発見」されたコーヒーミル。
ある雨の日に同僚が引っ張り出してきました。
そのミルで挽いたコーヒーを実際にお客さんに出していたかは定かではありませんが、
きっとコーヒー好きなスタッフか、もしくはオーナーがわざわざ荷揚げしたのでしょう。
現在このミルは使っていませんが、今でも小屋で出しているコーヒーには多少なりともこだわりを持って出しています。
インスタントではなくドリップコーヒーを、
それもスーパーで買えるようなものではなく、山麓のとある喫茶店から仕入れています。
山小屋の先代のオーナーがよく通っていたお店のコーヒーです。
先代オーナーに限らず、山小屋スタッフにはコーヒー好きが多いです。
自身の好きなコーヒーを持ってきているスタッフが数名、また簡単に持ち運べるミルと豆を小屋に持ってきているスタッフもいます。
系列小屋では支配人が豆を焙煎していたり、スタッフがコーヒーソムリエの資格を持っていたり。
なぜコーヒー好きが多いのか?
理由は定かではないのですが、以前記事にしたように山では暇な時間があるので
手軽に持ち運べる
かつ
時間をかけて楽しめるコーヒーが好まれるようになったのではないか、
と勝手に思っています。
私の働く小屋に限らず、他の山小屋でもコーヒーにこだわる所が多く、
例えば標高3100mにある北穂高小屋では注文が入ってから豆を挽き、コーヒーカップも温めて出すなどのこだわりよう、
私の投稿でしばしば登場する三俣山荘は一昨年までサイフォンコーヒーを出していましたし(昨年はドリップでしたが)、オリジナルの豆も売っていました。
山の景色を前にして飲むコーヒーは都会のどんなお洒落なカフェで飲むコーヒーにも勝ると思っています。
例えばこんな絶景を前に
例えば朝焼けを眺めながら
時には荒涼とした風景の中で
山小屋でこだわりの一杯を飲むのはもちろん、
自分で持ってきて、
好きな場所で、時間をかけて淹れる、
そんな一杯もきっと格別に違いありません。
山頂を目指すだけでない、
ただ絶景を前にコーヒーを飲むために、
山に来てみるのもいいと思いませんか?
つの
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