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妻を訪ねて8時間
山小屋での仕事のため
北アルプスの奥深くへ入っていた妻↓
そんな妻が働く山小屋に行ってきました。
片道8時間かけて。
私が山小屋を訪れるその前日、
山小屋スタッフの妻はヘリコプターで入山。
今シーズンの営業が始まる前で、
食糧や燃料といった荷物と一緒に
山へ運ばれていきました。
私は山小屋のいちサポーターとして、
下界のヘリポートで、現地スタッフが行ってしまった後の荷物の積み込みをしていました。
ヘリコプターに積み込める荷物の量は
決まっているので
総重量を計算しながら、
その便の荷物を積み込まなければいけません。
小規模な山小屋ながら、それでもトン単位の荷物が上がります。
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どの山小屋もそうですが、
下でのサポートがあって初めて成り立ちます。
本当はお金を払ってでも
ヘリコプターに乗ってみたかったのですが、
私は歩いて行くことに。
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天候不良でヘリコプターが飛べないことも
考慮して本業は3連休をとっていたので、
残り2日で山小屋へ向かいます。
妻が働く小屋へは
標準的な所要時間としては10時間。
登山口へはバスで向かいますが、
始発が遅く歩き始めは午前8時。
一般的な登山のマナーですと、
山小屋へは16時頃には着かないといけませんので
なかなかシビアです。
本来であれば途中の山小屋に泊まって
片道2日かけて行きたいところですが、
残念ながら休みは2日しか無く、
明後日の仕事に出るためには
1日で到達するしかありません。
まずは沢沿いの道。
7月とはいえまだ雪が残っています。
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登山口からすぐの場所とはいえ、
バスで来なければ大変な山奥です。
圧倒的な渓谷の深さに驚嘆しながら進みます。
1時間弱歩くと
本格的な登りがスタート。
人がほとんど歩かないルートのため
草がボーボー。
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パッと見では、どこに道があるのかわかりません。(翌日に草刈りしてました)
草の道を通り過ぎると
今度は岩場を横切ります。
岩がゴロゴロした道を登っていると、
手を置いた岩が動き、下に落ちていきました。
足の上に落ちていたら骨折していたでしょう。
他の山域にもこういった場所は多いですが、
人が歩かない分、不安定です。
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そんなこんなで山を1つ越えました。
しかし小屋は山深くにあるので
山を1個登るだけでは着きません。
そしてルートの長さもキツいのですが、
追い討ちをかけるのが、暑さとの戦い。
登山をしない人にとっては
山は涼しいと思うかもしれませんが、
「山に登る」という行為は実際にやってみると
すごい汗をかきます。
私も気温の高い7〜8月は
極力キツい登山はしないようにしてきましたが
今回ばかりは我慢。
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山を1つ越えて今度はまた沢。
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1つ気がかりなのは沢の増水。
にわか雨でも雨量が多ければ
大氾濫を起こして、
時に橋を流し、
登山道を飲み込むこともあります。
私が下山してから数日後、
実際に橋を流されたそう。
その時に身動きがとれなくなって
山中で一晩過ごした人がいたとか。
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橋を渡った後も、沢スレスレの道を通ります。
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せめて雨が降る前に沢沿いは
通過しようと思い
なんとか通過。
沢を通過したら予定通り雨が降ってきました。
これまでも何度も雨に打たれてきたので
慣れてはいますが
1人で雨の中歩いていると切なくなります。
雷も鳴っていましたが
まだ森林限界は越えていなかったので、
体勢を低くして通過。
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8時に出発して16時。
8時間かかってようやく妻が働く小屋に到着しました。さすがにコースタイム10時間はかかりませんでしたが、久しぶりに疲れました。
マイナーな山域なので登山者には1組しか会わず。
(それがオーストラリア人カップルなのは驚きですが)
妻はヘリコプターで10分だったとか。
私は48倍の時間をかけて着いたことになります。
妻よ、羨ましいぞ。
到着して少し休憩したら夕食のお手伝い。
北アルプスの最奥ながら
妻の隣で洗い物をしていると、普段の生活のような感じがして不思議な気分になります。
そんなこんなで一晩山小屋に泊って
翌朝6時には出発。
帰りは筋肉痛の足で帰ったので
ゆっくり7時間。
往復の距離は22km
累積標高差は2500m。
けっこう歩きました。
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今回の私の例はまだまだ序の口で
私が山小屋で働いていた時には
山で働く妻のために
ワンシーズンに7回通い詰めた夫さんや、
(片道7〜8時間の道のりですよ)
彼女さんの誕生日に合わせて
花束を荷上げした彼氏さんなど、
(この方も4〜5回来てたかな?)
そこまでできないなぁ、などと言っては
妻に怪訝な顔をされるかもしれませんが。
(冗談です)
そんな感じで物理的にも繋がりを保つために
山小屋スタッフのパートナーは頑張っています、
というお話でした。
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