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人間クサく生きるって

数日前から息子(4)が発熱して,保育園を休んでいる。
熱といっても比較的元気なので,今現在もここぞとばかりに彼が所有している膨大な量のトミカをリビングにぶちまけて遊んでいる。

発熱が続くと,保育園に登園する際に何らかの報告が必要になるので(感染症ではなかったので大丈夫です〜的な),今日は朝イチで近所の小児科へ連れていき受診。そして大体いつももらう咳止めや痰切りの薬をもらって帰宅した。
そして粉薬が苦手な彼のためにゼリー状のオブラートに包んで薬を飲ませた直後,惨劇は起きた。

ここ,シンガポールでしたっけ?
と一瞬勘違いするほど,突如としてマーライオンと化した息子の口から吐き出されたとんでもない量の吐瀉物が私の全身に降りかかってきた。
(…お食事中の方すみません)
吐いたものがちょっと洋服についちゃった!とかそんな可愛いレベルではなく,真正面から。
薬を飲んだ後に大量のお茶を飲み干していたのも災いした。
もはや笑うしかないレベルだった。

私は全身ゲロまみれになりながら,出すもの出し切って涙目になってスッキリしている息子をみながら,「千と千尋の神隠し」でカオナシが川の神様からもらった団子を千尋に食べさせられた後に,それまでに飲み込んだあらゆるものを吐き出したシーンが頭に浮かべていた。

食べれば食べるほどどんどんと欲深く,悪くなるカオナシ。
人間も同じ。日々無意識に,いや場合によっては意識的に「別に欲しくもないもの」を飲み込むことがどんどんと増えて,飲み込んだモノに自分の心と体が蝕まれていく。
「気持ちが悪い」と思える感覚があればまだ救いだけど,それすらないままに飲み込み続けて,気づいた時にはもう手遅れ…そんな人生は嫌だ。

何でもスッと飲み込める生き方は一見するとスマートでカッコよく見える。大人って感じがする。
いちいち喉のところでつっかえて飲み込めないとか,飲んでも吐き出しちゃうような人間は「面倒臭いやつ」だと思われるし,なんなら嫌なものを他人よりも頑張って飲み込んだ分だけ沢山お金がもらえるような世の中だったりもするから余計に厄介。

子どもは素直だ。
「これを飲めば病気に効くよ」「元気になるよ」なんて大人の言葉には絶対に惑わされない。生き物の本能として「怪しいと判断したもの」は容赦なく異物として外に吐き出す。

息子に薬を飲ませるのは面倒臭い。
常に自分がゲロまみれになるリスクもある。
でも「飲み込みたくないものは頑として飲み込まない!」
という息子のありように
これまでの人生を川鵜のごとく生きてきてしまった己の人生を思い返しながら,なんかいいな,と母は感心してしまった。

面倒臭い人って言われるの上等。
ゲロ臭くなるのも上等。
なんだかスマートにカッコよく生きるよりもそっちの方がはるかに生きている感じがする。
一度しかない限りある人生の時間。
人間クサく生きたいもんです。



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