夫と紙おむつ -宇宙レベルの包容力- 〜とけいさん その3〜 #008
うんちが大好きな友人(とけいさん)が、理想のパートナーについて、「うんちを踏んでも、笑ってネタにできる人」と言っていた事を、先日書いた*。彼女は結婚し、今や二児の母である。夫が、ご自身でもよく踏んでおられるかどうか私は知らないが、妻がいくら踏んでも気にしない人であることは確かである。
とけいさんの夫の、受け止める度量の大きさは折り紙つきだ。結婚式の際、妻が今後全部金歯になってもキラキラしてていいと思う、と言っていたし、新婚当初彼女が箱のティッシュを丸々洗濯し、巨大な柏餅のような白い塊が洗濯機から出てきた話も、横でニコニコ聞いていた。二次会は参加者全員「サンダル限定」という謎のドレスコードで、受付は新郎新婦、新郎新婦の席はそのまま受付であった。
この間とけいさんが最近の発見について送ってきた。
「この間高速の渋滞に巻き込まれて、もうどうしてもおしっこ我慢できなくて、子どものおむつ借りてしたよ。おむつの吸収力、宇宙だわ」
どこに突っ込んでいいものかわからず、「おむつ…大人にも対応してるの?」と返信してみると、「懐深かった。今度試してみて。あげるから。遠慮しないで!」と、なぜかこちらに薦めてきた。車の中でどうやって使用したかは想像したくもないのでちょっと置いておくとして、ここで気になるのは夫の反応である。運転していたのは夫で、とけいさんは助手席にいた。
「ご主人はなんて?」
「渋滞で眠かったけど目が覚めた、ありがとうって言ってた。おむつには、人に感謝されたり、眠気覚ましの効果もあるからね!」
とけいさんはオムツのすごさを伝えたいのだろうが、夫の懐の深さ、吸収力こそ、宇宙である。
二人は小学校の教員だ。こういう先生に育てられる子は幸せだと思う、日本の未来は明るい。
(追記)
このエッセイを読んだ知人たちは、渋滞の際のトイレの苦労話を次々してきた。尿意を我慢する、ということではなくて、どうやって車内にあるものを使うかということだ。マクドナルドのコーラを飲んだあとトイレに行きたくなり、ドリンクのカップを使ったら、その容量では足りず、なぜ飲んだ量より多いのだ、と怒っていた友人もいた。あまり詳細に聞きたくもないのだが、人に話したくても話せず、自分の中に封印していた話のようで、こちらの微妙な感情とは裏腹に、話し終えた相手はみな話せてどこかすっきりした表情だったので、よかったと思うことにした。
*「よく踏む人 とけいさんその1」参照
*とけいさんシリーズ
2023年9月26日執筆、2023年10月6日投稿