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言い間違えがち -肛門いかとマサラダ- #007

「マラカス」と「マスカラ」の違いを御存じか。

中南米の陽気な打楽器がマラカスで、まつげに塗るのがマスカラである。そんなの当たり前だろう、と言われるかもしれない。しかし、私はいつもちょっと考えないと違う方を言ってしまう。まつげに塗るのは色をつけるから「カラー」で、だからマスカラーは塗るやつ。そうでない方のマラカスは打楽器、と言う前に頭の中で考える。何を言っているのか自分でもわからないが、とにかくそうなのである。

言い間違えてしまう言葉は他にもたくさんある。

沖縄に行った時のこと。「アンダーサータギー美味しいよね」(美味しい揚げドーナツはサーターアンダギー)、「ここが、やむちん通りか」(やちむん通りが正しい。陶芸が有名なところ)、と何度も間違えてしまう。自分では正しいと思って言っている。ハワイでは「マサラダ美味しかったなぁ」(正しくはマラサダ。シュガードーナツみたいなやつ)と言っていたようで、南国に行くと特にひどいのかもしれない。暑いからか。

大学生の時、お昼にひとりで某回転寿司店に行った。当時タッチパネルはなく、インターホンみたいなのを押して、マイクを通して店員さんに注文するしくみだった。「いか」を注文しようと思って私は言った。

「ご注文をどうぞ!」
「こうもんいか、一皿お願いします」
「え?…かしこまりました」
「…ん?」

店員のどよめきに、戸惑った私がメニューをよく見ると、「もんごういか」と書いてあった。…なんだそれは。私は紋甲イカなるものを知らなかった。間違えて、肛門を注文してしまった、と気づいた私は動揺した。しかし、店員さんはさすがの判断で、注文品を運ぶ新幹線のレールに乗って、いかのお寿司が届いたのだった。

しかしなぜ自分はこんなに言い間違えるのだろうか。妻によると「自分の言い慣れてる言葉に勝手に変換するんだよ。ほらアンダーとか、サラダとか、言いやすいし」ということらしい。

ぁ、そうか。と一瞬納得しかけたものの、しかし、肛門が言いやすいとしたら、それはどうなのか。「やむちん」だと、言いやすそうな言葉は「ちん」ではないか。小学生か。

そういえば以前、海外に向かう飛行機の中で、飲み物を聞かれた際「Orange Juice!(オレンジジュース)」と自信満々で伝えたら、「OK!」と笑顔で言われ、白ワインがでてきたことがあった。日本語だけでなく、自分の英語力はどうなっているのだ。

別の機内食の時、蕎麦がでたことがあった。そばつゆと海苔やネギを入れて、美味しく蕎麦を食べた後気づいたのは、そのカップは飲み物をついでもらう用のカップであって、注いでもらったコーヒーにネギが浮いていたのはよい思い出である。

(追記)
「消毒したがり」というのエッセイの後半で、マジックでほくろを足していた精神保健福祉士の後輩もよく言い間違えるが、彼女の書き間違えもなかなかのものだ。新人の時に書いたあるレポートは、内容はきちんとしていたが、「スタッフ」という文字がほとんど全部「スッタフ」になっていた。「スッタフの役割は…(中略)。私もこんなスッタフになりたいと思っています」。文章が頭に入ってこない。しかし、彼女も今やよいスッタフになったものだと思う(先輩風)。

2023年9月24日執筆、2023年10月5日投稿


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