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コロナ禍によって「寄付」のもつ意味は大きく変わる 【 #ウィズアフターコロナの寄付 】

私は、現在株式会社STYZが運営するSyncableという寄付決済サービスのファンドレイザーとして働いている繋 奏太郎(つなぎ そうたろう)と申します。

寄付の現場で働く中で、私が感じている「寄付」の正と負の側面、そして今後の「寄付」の新たな可能性について、少しでも団体の方々に少しの勇気と寄付を検討している方々には寄付の仕方をお伝えできればと思います。

(※本記事の内容は、すべて個人の見解です。)

コロナ禍で寄付は大きく伸びている(正の側面)

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新型コロナウィルスは私たちの生活を激変させ、生活基盤を失う/失いかけている人々を生み、飲食・旅行業界、ソーシャルセクター(NPOなど)をはじめ、大打撃を与えています。

外出自粛や先行き不透明な経済の中での消費減退によって、倒産する企業・飲食店・団体が出てきている一方、寄付市場は大きく伸びているのです。

大手クラウドファンディング会社CAMPFIREは4月単月での流通額が22億円と、前年度同月比で415%とという数字を出している。3月からの前月比でも2倍以上の流通額となっています。

飲食・音楽・美容・宿泊・製造などをはじめ経営に大幅な支障をきたした事業者支援を目的とした「新型コロナウイルスサポートプログラム」を2月末より開始しました。プログラムへの申し込みは現在(2020年5月2日時点)までに約2,900件、資金調達を開始したプロジェクトは850件、支援者数は延べ15万人、集まった支援総額は14.5億円と多くの事業者・支援者が集まり、市場環境の変化が利用者急増に起因しています。

そして、もう一つの大手クラウドファンディング会社であるReadyforも決算報告は出していないにしろ、これほど大型プロジェクトが立ち上がり、達成金額の大きさを考えても確実に伸びているでしょう。

また、クラウドファンディングのプラットフォームだけでなく、Yahoo! JAPANも検索で10円寄付になる「みんなでのりこえよう〜医療従事者感謝検索」やYahoo! ネット募金でTポイントなどで寄付ができるようなプロジェクトも出来上がっています。

さらに、ボーダレス・ジャパンからつい最近リリースされたハチドリ電力というサービスもとても素適です。毎月の電気の利用料金の1%がNPOの寄付に回るそうなんです!

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このように、寄付というものが、もはや日常のどこかに当たり前のように存在するようなスキームやサービスが整ってきています。

危機が寄付を加速・拡大させる

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日本ファンドレイジング協会が出しているデータ(寄付白書2017)では、2011年の東日本大震災を契機に、個人、法人、助成額含めて拡大してきました。

東日本大震災が起こった2011年の寄付額は1兆円を超えています。

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(寄付白書2017より)

阪神淡路大震災の震源地である兵庫県への義援金も約1793億円という金額を鑑みても、日本の中で寄付の土壌が徐々にできてきていると考えていいかもしれません。

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神戸新聞NEXT, データで見る阪神・淡路大震災より)

日本は有事が「寄付」を盛んにする一つの要因になっているのは明らかでしょう。

そして、こういった有事の際にすぐに寄付ができるような仕組みが整ってきたことも寄付を盛り上げている大きな要因です。

その大きな一角を担うのはやはりクラウドファンディングです。クラウドファンディングがもたらした功績は3つあると考えています。

1. インターネットの普及によりいつでもどこでも寄付を可能にした
2. リターンという仕組みにより寄付という感覚を薄くした
3. 社会課題に触れるチャネルを増やした

2011年以降、クラウドファンディングというインターネットを通じた手段によって、寄付のハードルが下がりました。

クラウドファンディングだけではなく、「いま、わたしができること|3.11企画 Yahoo! JAPAN など気軽に寄付ができるオプションが一気に広がっています。

こういった有事の際の直接的な寄付のあつまりは、わかりやすく巨額の金額が動きます。

この緊急時にこれほど寄付が広まっていくことは素晴らしい。個人・組織・プラットフォームの努力によって、寄付は確実に前進することができているのではないでしょうか。

ただし、私が本当に伝えたいことは、ここからです。

私たちはこの瞬間風速的に寄付が盛り上がることの、負の側面があることも理解しなくてはいけません

寄付を集めにくくなる領域の出現(負の側面)

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有事の際に、人はわかりやすくその緊急度の高いイシューへの寄付を行います。

しかし、その一方で今は緊急ではないかもしれない領域には逆に寄付が集まりにくくなってしまっているのです。

直近2ヶ月で、当初予定していた寄付のキャンペーンの延期が起こっています。

社会課題の解決の最前線にいる非営利団体から

「このタイミングで私たちが寄付を集めるのは、申し訳ない。」
「今キャンペーンをやっても集まらないのではないか。」

という声をもらうことが増えました。

日常、寄付を集めるための努力をしている中で、今寄付を集めることによる批判への怖れをよく耳にするようになりました。

しかし、その団体も厳しい状況に直面しているのです。助成金の打ち切りから、事業の停止による収益の激減など間接的な被害を被っています。

例えば、国際協力・芸術・スポーツ・若者の就労支援・福祉・環境問題解決・まちづくりなどが該当します。

今の状況では優先度が下がってしまうことはあるかもしれません。

しかし、重要度の側面からみたときには、コロナ禍における医療従事者への支援とは変わらないはずです。

中長期的にみたときに、上記であげた課題解決に従事する団体が経営破綻してなくなってしまうことは
従来の行政や企業の枠組みからこぼれ落ちてしまう人々のセーフティネットがなくなる
ということを意味します。

きっとこの先、医療現場以外の領域で課題が表出してくるのは必然でしょう。

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しかし、その課題が表出してきたときには、もはや誰も手を差し伸べる人・団体がいなくなり、手遅れになってしまいます。

そうなっては、もっと大きな被害が出るかもしれない。コロナ感染ではない、間接的に命が失われる、生活が失われるかもしれません。

私たちは、その課題が表出してくる前に、予防策を打つ必要があるのです。

その最前線で活動する団体がどのように寄付を集めていけばいいのでしょうか。

私は、この危機を凌ぐための解決の糸口は、コロナ禍によって断絶された人々のつながりを創出することにあると考えています。

「寄付」は人と人の繋がりを創出する新たな手段になる

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寄付が人との繋がりを創出していくというのは、どういうことでしょうか。

まず、私が体験した寄付のこれからの可能性を感じた2つの出来事をお伝えできればと思います。

1つ目は、私が毎月寄付をしている認定NPO法人底上げさんの寄付者向けのオンライン会でした。

この会では、寄付者と団体職員同士で「どのようにこのコロナの危機を乗り越えていけるか」ということを話していました。

このオンライン会での私が驚いたのは、寄付者から出た言葉でした。

「コロナの自粛中の中で誰にも会えないけど、オンラインを通じて会えること、話せることが嬉しい」
「コロナの中だからこそ、支え合って共に乗り越えていきたい」

このような言葉が出てきたのです。

また、もう一つの出来事も上記の寄付者の言葉とほぼ一緒でした。

私が現在、ファンドレイジングをサポートさせていただいているEarth Companyという団体は寄付キャンペーンを行っています。

キャンペーン初日にFacebook Liveを実施したときのことでした。

このFacebook Liveでは代表の濱川明日香さんが現状の共有とキャンペーンにかける思いを話してくださったのですが、

「離れていてもこんな風に繋がっていて、リアルタイムでお話が聞けるのが嬉しいです」
「今だからこそ、世界の問題の数字が身近に感じます。内側に向きそうになっていた気持ちを外に広げていただきました。」

というコメントをいただきました。

この2つの出来事から見えてくるのは、コロナ禍による誰にも会えないという状況の中での不安・心配をソーシャルセクターは解消できる可能性を持っているということです。

外出自粛の中で誰にも会えず、先行きがどうなるかわからない中で不安な気持ちがあります。

でも、同じように不安なのは1人じゃない、そして一緒にどうやって乗り越えていけるかということを考えたり、最前線で活動する団体の方々の勇姿から勇気をもらっているのです。

あなたの団体が前を向くことで、元気を、勇気をもらう人がたくさんいることを忘れないでいただきたいです。

そして、私たちファンドレイザーもいます。団体も1人にさせません。

このコロナ禍をきっかけに「寄付」には、社会課題の解決を託すための意味だけではなく、人と人とを繋ぎ、勇気を与える、そんな意味も込められていくと信じています。

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最後に

団体に従事されている方々は、今は、できないことが多いかもしれません。それでも、寄付者と寄付者を繋ぐこと、いつも応援してくれている人と共にこのコロナの危機をどう乗り越えていけるかを考えていくこと、新たにできることがあります。

オンライン飲み会でも、今のリアルを伝えるFacebook Liveでも手段はたくさんあります。

そして、寄付を検討している方々、すでに寄付をされている方々、あなたは1人じゃありません。あなたの半径5mの関わりのある人、団体への寄付が不安・心配を溶かしてくれるきっかけになるかもしれません。

今こそ、繋がりを再構築し、ウィズ・アフターコロナの世界へ行くために、ファンドレイザーとして、プラットフォームとしてやらなければいけないこと、できることをこれからもやっていきます。






P.S. 最後に、僕や友人・知人が関わっているオンラインイベントを紹介します。少しでもあなたのつながりが増えますように。




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