見出し画像

「普通」を超えて カサンドラからの脱出- HSPとASDの夫婦が見つけた幸せのカタチ


はじめに

私はアラフォーの主婦です。2つ年下の夫はフリーランスの作家として活動しています。結婚して6年が経ち、現在4歳になる子どもの育児に奮闘する日々です。この5年間、夫の独特な性格や行動パターンに悩まされ、産後うつ状態に陥りましたが、「普通」という概念から解放されることで見つけた新たな幸せについて綴りたいと思います。

結婚当初の幸せと戸惑い

結婚当初、夫の「少し変わった」ところは魅力的に感じていました。仕事への没頭ぶり、歴史や哲学に関する該博な知識、率直な物言いなど、他の男性には見られない個性的な魅力がありました。今思えば、これらの特徴は私にない部分だったからこそ、強く惹かれたのかもしれません。
しかし、同居を始めてから、少しずつ戸惑いが生じ始めました。

  • 感情表現が乏しく、共感性が低い

  • こだわりが強い

  • 直前まで予定を立てなかったり共有しない

  • 社交的な場面を著しく苦手とする

  • 感覚過敏がある(音、匂い、触覚、味覚)

例えば、私が体調不良で寝込んでいても、夫は普段通り仕事に没頭し、気遣いの言葉をかけてくれることはありませんでした。しかし、黙って温かい飲み物を作ってくれたり、静かに家事をこなしてくれたりすることはありました。言葉での気遣いがない分行動で示してくれることはあったのです。
また、実家への訪問や友人との食事会を極力避けようとし、私一人で参加することが増えていきました。予定を立てる際も、直前まで決めようとせず、私にとってはストレスの種となっていました。
一方で、夫の味覚過敏による食へのこだわりの強さから、結婚当初から料理を担当してくれていました。この点は本当に救われました。夫の作る料理は繊細で美味しく、食事の時間が私たちの大切なコミュニケーションの場となっていました。

妊娠をきっかけに深まる溝

結婚1年目で妊娠が分かった時、夫の反応は私の想像とはかけ離れていました。「おめでとう」とは言ってくれたものの、その反応の薄さに軽いショックを受けました。喜びや驚きの表情もなく、淡々とした態度だったのです。
その後も、つわりで苦しむ私への共感や言葉での気遣いはほとんどありませんでした。しかし、夫なりに努力している様子は見られました。例えば、私の好みの匂いや味を避けて料理を作ってくれたり、静かな環境を維持しようと努めてくれたりしました。
夫の責任感の強さから来るものなのか、彼自身が自分の特性を理解した上でできる最大限のことを頑張ってくれている感はありました。しかし、「共感というものが本当にわからない」と夫自身が言っていたことが、私の心に引っかかっていました。

産後うつと転機

結婚2年目に出産しましたが、予想以上に育児が大変で、私は産後うつ状態に陥りました。夫は料理を担当し、夜泣きやミルクの世話も引き受けてくれました。しかし、仕事も忙しくなり、夫のキャパシティを超えてしまったようです。頑張りすぎたせいか、次第に夫はキツく当たるようになりました。

私の方が赤ちゃんの泣き声に感情移入して辛くなってしまう一方で、夫は子供の世話に対しては辛くなさそうでした。しかし、予定が立てられないことで、育児のルーティンを確立するのにも苦労しました。さらに辛かったのは、私が感じる育児の辛さが全くわからない夫が、私を責めるようになったことです。「母親の自覚がない」などと言われ、心が砕けそうになりました。

夫の努力は認めつつも、精神面での寄り添いがないことに深い孤独を感じていました。疲労と孤独感で押しつぶされそうになっていた時、夫の友人が私に声をかけてくれました。「彼には何かしらの発達障害だと思うよ。あいつなりに精一杯やっているんだと思う。」この一言が、私の視点を大きく変えるきっかけとなりました。「普通」を求めていたから苦しくなったのだと気づき、夫の特性について理解を深めようと、インターネットで調べ始めました。

ASDとカサンドラ症候群の発見、そして自己理解へ

調査を進めるうちに、夫の特徴がASD(アスペルガー症候群・自閉スペクトラム症)の特性と多く重なることに気づきました。感情表現の乏しさ、共感の難しさ、こだわりの強さ、感覚過敏など、すべてがASDの特徴と一致していました。同時に、ASDのパートナーが経験する「カサンドラ症候群」という概念を知り自分の苦しみに名前をつけることができました。カサンドラ症候群とは、ASDのパートナーが経験する心理的ストレス状態を指します。理解されない孤独感、コミュニケーションの行き違い、期待と現実のギャップなど、まさに私が経験していたものでした。

さらに驚いたことに、私自身もHSP(Highly Sensitive Person:非常に感受性が強く敏感な気質もった人)の気質があることに気づきました。音や匂い、触覚に敏感で、他人の感情を敏感に察知してしまうなど、ASDの夫が苦手とすることと重なる部分が多々ありました。この発見により、夫の特性をより深く理解できるようになりました。

ここから先は

4,770字 / 9画像
この記事のみ ¥ 200

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?