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老父と娘の"ちょっといい時間"

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認知症の実父と娘の"ちょっといい時間"を綴ったエッセイ。介護の中には、幸せがいっぱいでした。
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2020年5月の記事一覧

父を抱きしめる

父を抱きしめる

コロナの到来により、ハグの文化は、世界中で当面の間お預けだが、近頃は日本でも、再会や別れなど様々な場で、友人とハグすることは珍しくない。

8年程前、私はふと

「両親とハグできるだろうか」

と、思った。

当時両親は、あちこちが歳相応に錆びついてはいるものの、おかげ様で、まぁなんとか普通に元気に暮らしています、という状態だった。それでも、70代後半という年齢を思えば、そう遠くはない未来に必ず別

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なくなったデジカメ

なくなったデジカメ

去年は、6月に父を連れて旅行にでかけた。そうか、あの“事件”から、もう1年もたつのか。

「お父さん、写真現像してくるからデジカメちょうだい」
父のデジカメが、見当たらない。

先日出かけた時の画像がそのままになっているので、写真にして、データを削除しようと思ったのだが見つからない。一昨日の父の日記に、写真を現像しなければと思っていると記されていたから、その時にはあったのだろう。

明後日から一緒

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タカオちゃんの”おてつじゃま”

タカオちゃんの”おてつじゃま”

今は、コロナ禍で外出を極端に自粛しているが、去年の今頃は、タカオちゃんだけを自宅に残して、頻繁に買い物などに出かけていた。家を留守にすると、たまにタカオちゃんが、私のことを思いやって、いろいろと家のことをしてくれる。

溜まった新聞を片付けなくてはと思っていたら、古い電気コードで縛って雨ざらしの軒下に置いてくれていた。新聞の回収日までには、まだ随分と日がある。きっと、たっぷりと雨を吸うことだろう。

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