5弦ギター【掌編】275字

遺品として貰ってきたフォークギターを鳴らしてみる。

楽器など何一つ弾けないわたしでもわかる。

このギターには弦が1本足りない。

振り回して切れたのかも。

チューニングだってろくにされていないだろう。

ホコリまみれのボディを見れば長いことほったらかしだったことがわかる。

でも、わたしにはちょうどいい。

5本の弦の音のズレたギターを、コードを1つも知らないわたしがかき鳴らす。

ジミヘン顔負けの名曲が生まれている気がする。

深夜に近所迷惑を考えずに演奏しているんだからきっとロックのはずだ。両隣から壁ドラムのセッションも入ってきた。

ボーカルは譲ろう。お前が地獄から叫べ。

2021年6月

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見出し画像に写真をお借りしました。ギターではなくプロの方が使うコントラバスのようです。