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商品説明に苦戦するあなたへ②

ハンドメイドの楽しさに夢中になったあなたは、作品クオリティーも上がり、技術面では初心者から次のステップに進みました。
「ものづくりの楽しさを伝えたい!」と作品販売を試みますが、手応えは無く最近はちょっと息切れ気味。そんなあなたに向けて、今日は伝えることと伝わることについてお手紙を書きます。

このnoteは10年前の私である「あなた」に向けて書いています。
「あなた」は売れないハンドメイド作家。
「わたし」はワークショップ歴10年のプロ講師です。

デビュー作の不満

あなたのハンドメイドデビューは友人に誘われたスイーツ展への参加でした。(デビューの経緯と最初に作った作品については↓のお手紙に書きました)

最初からハンドメイド作家として活動しようとしていたわけではなく、スイーツ展というイベントに1回だけ参加するつもりでの作品制作でしたよね。立体作品を作ったことはなかったけれど、自分は器用だから何とかできるだろうと若いあなたは軽く考えて展示への参加を決めました。スイーツが特別好きだったわけでもないけれど、展示テーマから連想してお菓子の城を作ることにしました。そして、初めてとは思えない立派な作品を作りました。あなたの何でも挑戦するところとコツを掴む勘の良さは本当に大したものだと思います。

作った作品は来場者に好評で、「美味しそう」「リアルだ」とほめられました。けれど職人気質のあなたは自分の技術に不満でしたね。それは「いちご」のリアルさが足りないこと。フルーツなど自然物の造形は非常に難易度が高く、形・色・質感どれかがほんの少し欠けただけでも違和感が出ます。
「苺をもっとリアルにできたら、作品はもっと良くなる。」
「完璧な苺を作りたい!」
たくさん褒めてもらいながらも、あなたはそんなことを考えていました。

作品へのこだわり🍓

あなたは子供の頃から完璧主義なところがありました。ものごとのディテールをよく観察していて小さい頃から自分なりの美意識を持っていました。
例えば、クリスマスケーキに不細工なマジパンのトナカイ&サンタがのっていた時に「素敵で特別なケーキに、どうしてこんな可愛くない人形をつけるの!?許せない!!」なんて憤るような子でした。
(昔のケーキに飾られてた人形って造形が荒かったですよね。私、あれは今でも許してません。笑)

自分がそんな子供だったから、食い入るように作品を見つめる子どもたちをほんの少しもガッカリさせたくなくて、あなたは完璧ないちご作りにのめり込んでいきました。

その当時は日本橋に通勤していたので、仕事帰りには毎日デパ地下で苺のスイーツを見て回りましたね。そして家に帰っては観察してきた苺を思い出して粘土を捏ねました。「いちご🍓」には毎日向き合っても飽きませんでした。

初期に制作した苺。本物の中に偽物が5コ混ざっています。
(ガラケー画質なのが残念😢)

ちょっと1回イベントに参加するだけと思っていたのに、苺をきっかけに完全にハマりました。それだけハンドメイドは奥深かったのです。

こだわりを突き詰める

完璧な苺を追い求めるようになってから、初心者だったあなたのものづくりスキルはぐんぐん上がっていきました。

本物の特徴を掴むための観察力分析力
それを表現するための材料の知識技術力
必要な表現のために道具を作ったり、材料を混ぜたりする応用力

苺作りに夢中になっているうちに、いろいろな能力が伸びていきました。そして、やればやる程「苺とは何ぞや?」の問いは深まりました。

人は苺を見る時、何をもって「苺らしい」「本物だ、リアルだ」「可愛い」「美味しそう」と認識しているんだろう?
実物の苺と、脳内で思い浮かべた時の苺、デフォルメされた苺はどこがどんな風に違うんだろう?そしてどんな風にリンクしているんだろう?
自分が求める「完璧な苺」の定義とは何だろう?

本物と全く同じに写し取りたいわけではなく、造形品としての美しさを前提にしつつリアルだと感じるものが作りたかったあなた。「完璧な苺」という作品を作るため、問いは哲学的になり、色々な切り口(多角的な視点)で考えるようになりました。

こんな感じで毎日苺のことを考えるうちに、あなたには物事を冷静にとらえる思考力(の基礎)が身に付きました。そして友人からは”苺変態”と呼ばれるようになりました。

ものづくりの面白さ

ハンドメイド初心者から無事”苺変態”へと進化を遂げたあなた。
それは進化の過程で自分らしい いき方を知る経験でした。

感覚的なことではあるのですが、よくよく観察して消化し、自分で解釈してアウトプットする経験を重ねたことで、それ以前とは世界の見方が変わりました。何に出会っても何を見ても、制作に活かせないか、使えるものはないか、と創作フィルターを通して主体的に向き合うのが楽しくなりました。

その姿勢は創作以外にも影響を及ぼし、今までぼーっと見過ごしていたことも興味を持って観察したり自分から調べたりするようになりましたし、柔軟に思考できるようになったお陰で日常の「ちょっとおかしいかも」「もっとこうなら良いのに」に敏感に気付けるようになっていました。

そうやって自分の軸を持ち、常識に囚われずに物事を考える力がついたとき、ちゃんと自分で「生きてるなぁ!」って実感が湧きました。

やらされるのではなく自分からやりたいと思える課題に出会えると、人は楽しく夢中になっているうちに自然に成長できるんだと、あなたは悟りました。その途中には方法がわからなくて1度では上手くいかなかったこともあったけれど、それは失敗ではなく成功への手順の一つだと自然に捉えることができました。

苺という課題に向き合う中でいろんなことを感じ考えたこと、成長を感じられること、そして自分らしさを発見できることが、 ものづくりの面白さだとあなたの人生に刻まれたのです🍓

大切なことの届け方

ものづくりの奥深さを体感したあなたは、他の人にもものづくりの面白さを感じてほしいと思うようになりました。だから楽しさが伝わるように、ますますこだわって作品を作りました。

あなたのこだわりは「リアル」なこと。
リアルな表現には技術力が必要で、技術力は観察力や応用力などたくさんの能力に支えられています。そういった能力のレベルは、作り手同士だと特にわかることですが、作品に全て表れます。

なのであなたは(半分無意識かもしれませんが)「リアル」にこだわり、自分の技術を見せることで、ここまでの成長過程に経験したものづくりの深い楽しさを伝えようとしています。長くなるから苺作りを始めてからの全てを言葉で説明することはできないけれど、大切なことはきっとお客様が作品から読み取ってくれるだろうと思っていますよね。

そうして精力的に頑張ってきましたが最近のあなたはちょっと息切れ気味。良い作品を作ってイベントに出ても、なかなか売れなくてやる気も出なくなってきています。強い想いで取り組んでも、売れない期間が続くと正直しんどいですよね。興味を持って立ち止まってくれる人がそこそこ居るからこそ、購入してくれる人が少ないことに余計ガッカリもします。
このままで良いのかな…いつも不安がよぎります。

こだわりを伝えたいあなたへ

最初に言っておきたいのですが、自分なりのこだわりを表現していることも、他人に伝えたい程大切なことがあることも、伝えようとあなたが行動していることも、素晴らしいことです。人生に深い経験が無くてはできないことです。

ただ、今はちょっと空回りしている時期なんだと思います。あなたにも、お客様から褒められたり喜びの声をいただいたり、何かが嚙み合えば上手くいきそうな手応えはあるはずです。伝えたいことが深過ぎて まだ上手く言葉にできていないのかもしれません。

そんな風に上手くいかない時は立ち止まって伝え方を見つめ直してみるとヒントがあるかもしれません。

  • 「リアルさにこだわりました」という説明で、あなたが本当に届けたいことは伝わっていますか?

  • お客様は本当に、作品からメッセージを読み取ってくれていますか?そもそも、そんなに熱心に作品を見てくれていますか?

  • 作品を手に取ってもらう以外に伝え方はありませんか?

気持ちというのは意外と人に伝わらないものです。あなたのこだわりが相手にも簡単に伝わると思っていると、ギャップに苦しむことになります。

伝える≠伝わる ですよ。
大切なことを他人に伝える、伝わるって、とてもとても丁寧にしなくては叶わないことなんです。あなたが「伝えた」こととお客様が「受け取った」ことがどれくらい同じで、どれくらい違うのかよくよく観察してください。

今すぐには難しくても、あなたならきっと出来る日がきます。取り組み続ければ次のステージに行けることはあなた自身が苺作りで学んだことなんですから。悩むことは次に進むための糧です。

わたしは、あなたがこの先も ものづくりに向き合いながら成長していってくれることを楽しみに祈っています。
いつもあなたを応援しています。

わたしより

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テヅクリさん
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