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民主主義が危ない~自由、平等、友愛の精神が揺らぐ:高橋成知

■80年目を迎えた民主主義
 今年は太平洋戦争から数えて80年目を迎える。わが国は、戦後初めて民主主義を学び実践して、戦争をしない平和な経済・社会を築いてきた。戦前の封建主義的な天皇を崇拝する神国から、一人一人が考えて、行動する民主主義を植え付けられてきた。
 しかし、現代はインターネットの登場から個人、個人が顔を合わさずに、議論もなくSNSに載っている情報を鵜呑みにする社会に大きく変化してきている。
 オールド・メディアと言われる新聞やテレビ等のマスコミが、ファクトチェックをしながら流している情報にもの足りなさを感じ、自分好みの意見を読み、それが真実であると思い込み。人と議論をしないままの「正論」が一人一人に形成されていく。
 そこでは、誹謗中傷、妬み・恨みなど「自分こそ正しい」と言わんばかりの独善的な主張が蔓延る。そこに、現代の対立、紛争の種があるのではないだろうか?

■SNSのよる選挙の逆転劇
 兵庫県で起きた前齋藤知事の辞職による再選挙で、終盤まで新候補が当選すると新聞やマスコミで言われていたとが、選挙結果は齋藤知事の圧勝であった。今は、SNS選挙を主導した女性コンサルタントが公職選挙法違反ではないかと問われている。

 現在の公職選挙法は、政治家が選挙で悪さをしないように、かなりきめ細かく規制の網を張っていて、普通の人にはわかりにくく、立候補者を出させにくい形となっている。
 選挙期間中は、新聞やテレビは特定候補に偏らないよう中立を保った報道しかしないので、候補者の足を靴の上から掻くような記事しか載らない。現代は、その候補がどんな人物かは、SNSなどの検索で簡単に調べられる。
 その手を逆に使えば、候補者を良い人物であるとのたくさんの情報を流しておけば、新聞やテレビを見ない世代はそれそのまま信じて判断することになる。
 米国のトランプ氏が大統領選で勝った理由も、民主党のハリス氏と激戦を戦った7州で、モータースポーツやガンマニア、格闘技などの若者向けのSNSを発信続け、男らしさ、強さを前面に出し、トランプ氏への投票を促したのが勝因と言われている。
 第39代大統領の座を57歳で退任し、のちのノーベル平和賞を受賞した、ジミー・カーター氏が100歳で先日亡くなられた。「凡庸な大統領、偉大な元大統領」と揶揄されるが、トランプ氏の主導による連邦議会議事堂襲撃は「民主主義が危ない」と分断社会に大きく警告を鳴らされた。

■より複雑化してきている国際社会
 1989年ベルリンの壁が崩壊し、共産主義社会から民主主義社会が良いという構図が出来上がったが、いま世界を見ると民主主義国家の数が減ってきて、ロシア、中国に代表される覇権国家の台頭が著しく、急速に発展するグローバル・サウス国の意見も強く反映する、複雑な国際社会となってきている。
 こうした世界の対立構造に関して、第2次大戦後発足した国連の衰えがある。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻に対して、安保理での決議をいくら行っても「戦争」が止まらない。
 国連の機能を強化していくしかないが、それを支える民主主義国の政治に極右勢力が台頭してきて、ますます対立を仰ぐ傾向も止まらない。その結果、多数の少数政党が他の党の批判、中傷に明け暮れ、足の引っ張り合い。現代は大衆におもなくポピュリズムとなり自国中心の1国主義がまかり通る。
 そこで、難民や他国から働きに来ている人達を排除しようとする。現代の遺伝学者よると、人類にはホモサピエンス1種しかおらす、人種によっての分類はできないそうだ。

■江戸の知恵、会読のすすめ
 そこで2つ提案をしたい。1つは、江戸の儒学者、伊藤仁斎に学ぶことだ。学問を立身出世に利用しない。虚心坦懐に討論する江戸の読書会、「会読」のすすめだ。
 自分の意見だけが正しいと思わず、他人の意見に耳を貸す。異なる意見に出会い、学ぼうとする姿勢が学を極め、自己修養につながる。一人スマホで学ぶ現代には必要な素養であろう。
 もう1つは、いま世界でロングラーとなっている「ネガティブ・ケーパビリティ」という本がある。処方箋の難しい課題をすぐに解決せず、「わからない状態に耐える力」を付けていくことであろう。

■高度な民主主義作りへ
 この2つの知恵を使って、現在の政党間や国家間の対立を少しでも緩和して行って欲しい。そうして、民主主義を高度化し、さらに高めていく努力をしていかないと、「自由」、「平等」、「友愛」を掲げたフランス革命の民主主義の灯が消えていってしまう危険性を現代は孕んでいる。

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