映画『俺はまだ本気出してないだけ』堤真一主演
楽しいバージョンの堤真一です。TVドラマ「スーパーサラリーマン左江内氏」の堤真一が好きな方なら、きっと大丈夫です。楽しめます。私はシリアスかっこいいバージョンの堤真一より、もはや、このふざけた堤真一の方が好きになっています。青野春秋のマンガ原作。監督・脚本は「スーパーサラリーマン左江内氏」「今日から俺は!!」「聖☆おにいさん」の福田雄一。Amazonプライムビデオで鑑賞しました。2013年製作。
ストーリー
42歳、離婚歴ありで、子供を持つ大黒シズオ(堤真一)は「本当の自分を探す」という理由で会社を辞めるが、毎日朝からゲームをしてばかり。ある日、ふらりと本屋に立ち寄ったシズオは漫画家デビューを思い立つ。シズオは出版社に原稿を持ち込み始めるが、、
堤真一が楽しそうに大黒シズオを演じています。この大黒シズオという大人は、漫画家になりたいという夢実現のために会社を辞めたのではないのです。
先に会社を辞めちゃって、夢は後付けです。
こんな42歳、一般的にはダメなんでしょうが、私はこの主人公嫌いじゃないです。
会社を辞め、やりたい事が見つからず宙に浮いたような状態から、全くの素人がガンガン漫画を描いて出版社に持ち込むようになる。もちろんボツばかりです。
高校生の娘(橋本愛)と父親(石橋蓮司)もいるのに、おかまいなし。橋本愛、柴犬の様に可愛いです。
実際にいたら迷惑な大人でしょうが、アルバイト先でも幼なじみからも家族からも愛されている。
担当の編集者を演じる濱田岳がさすがのいい味です。何回もシズオが原稿を持ち込むシーンがありますが、この時の濱田岳とのやりとりだけでも、観る値打ちあります。濱田岳のソフトな物腰が最高です。
シズオは無茶苦茶なようですが、自分のおかれた立場も解かっているのです。先に対する不安や、「残念なオレ」感も出ていて、それがあるから共感もできます。
劇中、キャバクラでバイトする中年男性(村松利史)のエピソードがあります。この中年新人バイトは、おどおどしていて、自分よりずっと若い上司に理不尽にいじめられていました。上司に八つ当たりされ、おもちゃにされて土下座まで求められても、応じるのです。嫌なシーンです。
いじめる方もクズですが、応じる村松利史も卑屈すぎます。ミジメです。でも、彼には受験生の娘がいて「絶対にこの仕事を辞めるわけにはいかない」と打ち明けます。
卑屈に見えるけど、強かったです。
子供のためにそう思ってしまう気持ち、わかります。本当は、しがみつかなくても他の道もあるんだろうけど、目の前の学費優先、生活優先、になってしまい、その場所で働き続ける日々。まあ、この映画のような酷い上司のいる職場は頑張るに値しない最低な場所だと思いますが。
この映画は、シズオの生き方だけを肯定するでもなく、一つの仕事を続ける人を否定するわけでもありません。様々な登場人物がそれぞれの場所で生きてゆく様が描かれていて、そこがドラマとして好きでした。