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京都みなみ会館の思い出

2023年9月30日に京都みなみ会館が閉館した。

旧館時代、映画が観たくて観たくて一生懸命観に行ったミニシアターだ。
京都の映画館では一番の思い出がある。なのに、この数年は近所の映画館に行ってばかりで閉館のニュースを聴いた時は不義理な自分を呪った。とてもさみしい。

娘が小さくて自分の時間が取れなかったとき、映画館に行けない私の映画愛は高まるいっぽうだった。

そんな時、みなみ会館の小さな駐車場に私は救われた。
前夫が娘をみているあいだに、車を飛ばして東寺横の駐車場に停めて2時間後、全速力で帰宅する。たとえどこにも寄らなくても映画を映画館で観たことが幸せだった。

時間をやりくりして、時には仕事を休んでまで一生懸命観た作品はとても良く覚えている。もちろん、観れた本数は少なく、みなみ会館上映作品が個性的な作品だらけだったのも大きいけど。

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」「ピンポン」「リンダ リンダ リンダ」阪本順治監督の「顔」「あの頃ペニーレインと」…2000年ごろの作品が多い。

SNSもやってなくて、観た映画の感想を語り合う人もなく、家族が寝静まった深夜に映画館の売店で買ったサントラを聴きながら、パンフレットを読んでいた。

それでも誰かと映画のことを話したくて、メールでつながっている友人に「あの頃ペニーレインと」の尋常じゃない長文の感想を送り付けたりもした。面倒がらずに読んでくれたその人は「映画の感想をどこかに書けばいい」と言ってくれたことを思い出す。私は時間ができたらそんな日を過ごしてみたいとぼんやり思っていた。

今は時間がある。SNSに感想も書ける。配信もあるし、ネットでチケットの予約をして徒歩圏内の映画館に行く。映画はこれからもずっと好きだと思う。

でも、あの頃の切実な気持ちとはどこか違うような気がしている。みなみ会館での時間は、夫婦でいても感じていた寂しさや、性に合わない仕事を忘れさせてくれた大切なものだった。たとえ2時間であっても。

京都みなみ会館さん、本当にありがとうございました。

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