映画『ギター弾きの恋』失って気が付いた大切な人
2021年初めての記事となります。今年もどうぞよろしくお願いします。
この作品はウディ・アレンの作品の中でも、ちょっと特別です。いつものアレンの分身のようなキャラクターは出現しません。アレンが創りだした、服装にお金をかけ派手で自分のことしか考えない、わがままな天才ジャズギタリストが主人公です。
監督・脚本ウディ・アレン。音楽監督ディック・ハイマン。1999年製作。アメリカ映画。
アレンの愛するジャズミュージックと恋愛ストーリーが融合した作品ですが、見終わった後はとても切ないです。
1930年代ジャズ全盛期のシカゴ。クラブでギターを弾いているエメット・レイ(ショーン・ペン)は「世界一のギタリストはジャンゴ・ラインハルトで2番目は自分だ」と豪語しています。飲酒による遅刻や無断欠勤を繰り返していますが、実際、ステージに立つと彼のギターは素晴らしく皆の心をつかみます。
エメット・レイを演じたショーン・ペンはギターを特訓して、使われた曲すべてを演奏できるようになったそうですが、実際はハワード・アルデンが吹き替えています。
エメットはハッティ(サマンサ・モートン)という洗濯屋で働く、話すことができない女性と出会います。ハッティは聴くことはできるので(そのあたりは映画では深くふれられていません)エメットのギター演奏が大好きになり、エメットと共に暮らすようになります。
全く話さないハッティを演じるサマンサ・モートンが素晴らしい。表情だけでエメットを大好きなことが凄くわかるんです。全身で、でも静かに感情を表していてとても可愛い。エメットにないがしろにされていても、愛していることが伝わります。
2人は1年一緒に暮らしますが、エメットはハッティと別れ、上流階級の女性ブランチ(ユマ・サーマン)と衝動的に結婚してしまいます。ユマ・サーマンが妖艶でとても美しかったです。
エメットとブランチが破局するのはあっという間でした。
ブランチとの離婚後、エメットはもう一度ハッティに会いに行きます。
出合ったときと同じ洗濯屋で働いているハッティ。
「黙って去って悪かった」
「お前のことは嫌いじゃなかった」
「NYに良ければ一緒に来ないか」
エメットは精一杯誠実にハッティに話しかけますが、ハッティからメモを渡されます。
「結婚して子供がいる」
自分が行けばいつでも暖かく迎えてくれるはずのハッティは、別の人と結婚し新しい生活がある。
ハッティの心も静かに揺れています。
ショーン・ペンが一人でセリフを話すシーンになるのですが、メモを読んだ時の何とも言えない表情。
その夜に、ハッティと初めて出会った時の曲をギターで弾いて
「俺はバカだった」と
ギターを電柱にたたきつけて破壊し、号泣するエメット。
絶望と後悔が一気に押し寄せるシーンです。
この場面は凄く強いインパクトがありました。
映画全体がギターの美しい音色に彩られているところが、一層切ないです。
何度も何度もサントラを聴いていたのが懐かしいです。
いつものふわっとした楽しいアレン作品とは異なり、ストレートに心に響きます。とても好きな作品です。