そんな夜もある
そういえば、しばらくこの街で酒を飲んでいなかった
週末、旅の終わりにバスから電車に乗り換える駅で、夕食がてら1杯飲んでから帰ろうと考えていた。
登山や温泉旅の際の中継地点として年に何度も経由する駅なのだけど、そういえば日曜の夜に立ち寄るのはずいぶんひさびさかもしれない。
スマホの写真で確認してみると、最後にこの街で飲んだのは去年の11月。そのときは午後3時ごろの中途半端な時間に、通し営業しているお店を狙って飲みにいったのだ。
そして日曜夜にこの駅の周辺エリアで飲んだのは去年の7月が最後だった。
この1年間、同じ市内の温泉宿に何度も泊まっているし、少なく見積もっても10回以上この駅で降りているはずなのに、まるで避けていたかのようにぜんぜん飲んでいなかったな。なぜだろう。何か理由があったような気もするが、忘れてしまった。
とりあえずまだ18時を回ったばかりで時間も早いし、店が混む前にどこかに入ってしまおう……と、駅から外に出る。今回は荷物も多くないのでリュックはコインロッカーに預けず、背負ったまま。
まずは去年の7月にも立ち寄った、駅近くのお店に行ってみることにした。前回初めて伺ったのだが、6時半頃に入って空いていたカウンター席に座れたし、私の後にも飛び込みのお客が何組か入ってきていた。けっこうおいしかった記憶があったのでタイミングが合えば……と思ったのだが。
ガラス張りのお店なので外から様子を伺うと、カウンター席は4席ほど空いていて、奥のテーブル席も空席があるように見えた。中に入り、フロアのスタッフに
「1名なんですが、入れますか?」
と声をかける。
「1名様ですね……少々お待ちください」
と、席を管理しているタブレットを開いて調べてくれたのだが、そこにカウンターの中から
「予約でいっぱいだから断って!」
と声がかかる。スタッフの方は調べるのをやめ
「申し訳ありません!またお願いします」
と言われて外に出た。
ふうむ。
「まだ席はあったけど今日の感じだとすぐ埋まりそうだから、1人で2人分の席を使っちゃう1人客は断って!」
と、店長クラスの方が指示をした、という気配を感じなくもなかったけれど、まあ仕方がない。
そうだったとしても「休前日は空室があっても1人客の予約は取らない」温泉宿が多いのと同じ理屈だものね。別の店を探すか。
次に向かったのは、この街で最も好きな居酒屋さん。
すごくいい店なのだが、いつもめちゃくちゃ混んでいるので、実はコロナ禍以降少し足が遠のいていた。しかし、あの店ならカウンター席はほぼ1人客ばかりだし「1人客だから断られる」ということはありえない。回転が早いので、満席でも外で少し待っていれば入れることも多かったはずだ。
しかしなんと、間が悪いことにそのお店、本日臨時休業。
さてどうしたものか。
臨時休業していたお店のすぐ近くで、居酒屋の女性スタッフが呼び込みをしていた。呼び込みをしているということは、間違いなく席があるということだよね?と思い「入れますか?」と声をかけてみる。
「1名様ですか?確認してきます!」
とその方は店内に入っていき、ややあって戻ってくると
「すみません……予約でいっぱいになってしまって」
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