#01 パリのちいさな店での美味しい珈琲時間
こちらのエッセイはパリの珈琲にまつわるetcの連載マガジンです。その他の記事はこちらからどうぞ。
某月某日
パリのいわゆる北マレ地区はおしゃれなお店や人々が集まる界隈で、つい歩いている人々の人間観察をしてしまう。この日はアート系の専門書店 « Yvon Lambert » でココ・カピタンの展覧会があったので覗いた帰り、「珈琲を飲みたい、しかもちょっと美味しい珈琲を。」と思い書店の通りを曲がったところにある « fringe »へ出向いた。
それに平日はなんと16時に店じまいするので午後の早い時間にこの界隈にいる機会を逃すまいと思ったのだ。
ちいさな店内に入るとほぼ満席。写真家でもあると後に知った店主。カフェと写真(と美味しそうなお菓子)が売りのようで、店内の壁はちいさな写真の展覧会が開かれていた。
カウンター席と迷ったけれど、初めてなので一番奥の壁際のテーブル席に座った。いきなりカウンターに行く度胸はないし、本も読みたかったから。奥と言っても入り口から普通に歩いて三歩くらいで着くくらいのちいさな店だ。
初めての店なので飲み物だけ。一緒にケーキなんかを頼んでしまうとコーヒーの味がぼやけてしまう、というこだわりがあるわけではなく、単にお腹が空いていなかったのだ。
しばしののち、英語の接客する女性の方が(店主もアメリカ人だからか)注文したFlat white / フラットホワイトを運んできた。カプチーノほどミルクが多くなく、コーヒーの味がより味わえる、私はこの手こだわりのカフェではフラットホワイトを飲みたくなる。
※このマガジンのタイトルにしているので、もしもう少し詳しくフラットホワイトについて知りたい方のために、図解もついたこちらのリンクをどうぞ。
カプチーノ同様、店やバリスタによってだいぶ違うものが出てくるのです。
コーヒー豆の違いはもちろんのこと、その濃さとミルクの量、さらにスチームされたミルクのきめの細かさなどいろいろと美味しさのポイントがある。
なみなみとカップに注がれたフラットホワイト。模様にこだわるわけではないけれど、なんとなくそこにも作り手のクセや性格が出るように思う。あまりファンシーな模様にされると、正直げんなりしてしまう、そして恥ずかしい。特に一人の時などは無難な模様が良い。くまさんの模様なんかが出てきたら、隣のテーブルの人に「あら、あの人一人なのに張り切って、クマの模様?」と思われているかもしれない、そう考えると顔から火が出そうだ。
さらにあくまでも私の飲み方であるが、はじめは決してスプーンで上のミルク部分とカフェは混ぜない。せっかく作ってくれた模様を、無下に破壊してしまうのは客として気が引ける。誰も見てないと思うけれど、丁寧に作ってくれたものはある程度丁寧に飲みたいものです。
ここのフラットホワイトはなかなか美味しかった。いや、かなり美味しかった。好みの強さの苦みとミルクの味と量のバランスに配慮を感じる、というかきっと店主と好みが合うのだと思う。苦味が少し強めのコーヒーにコクのあるミルク。この手のカフェは豆の販売をしているところも多いし、そうでなくてもどんな豆を使っているかを店内に明記していることが多い。みたところ、オランダに拠点をおくこちらのメーカーのようだ。
近所の常連さんは犬の散歩ついでに外のベンチ席で一杯。観光客はまばらだけれど、それでもネットの情報などを頼りにここの一杯を飲みにわざわざ来たという感じのお客さんもいる。いずれにしても英語率が高い。
私はいつものように文庫本を数ページ読んで、ちょっとメモを取って過ごす。
でも結局は店内の人間観察をしてしまいます。そのライブ感ほど面白いものはなかなかない。
ちいさな店にはちいさな店なりのライブ感があって、そこに店の個性があるのだ。
fringe
106 Rue de Turenne Paris 75003
mon-fri 8:30-16:00
sat&sun 10:00-17:00
http://www.fringecoffeeparis.com
この記事が参加している募集
サポート代は連載中のパリのカフェ手帖「フラットホワイトをめぐる冒険」のコーヒー代や美術館エッセイ「カルトブランシュ・ミュゼ」の資料代にあてさせていただきます。応援よろしくお願いします!