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写真日記

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2022年11月の記事一覧

値札

値札

生きている食べ物の価値は高い。スーパーに陳列された商品の値札を眺め、今日も踵を返す。自分の食道に規制をかけ、犬の飯のような献立にしているせいで食欲に苛まれているが、まだ問題なく生きていられる。食の選択肢が多い人間だが、商品の種類を増やすことに労力を割き、街のスーパーを食べ物園と化してしまうことにどんな目的があるのだろうか。

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1/10s

耳ざわり

耳ざわり

耳ざわりの良い文言には悪意が存在するとみなしている。相手がどう受け取るのかを考慮するということは、自分にとって都合が良い方向へ相手の思考を導くということに他ならない。だから残酷な文言や描写からしか現実を捉えないと決めている。

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モノクロの世界

モノクロの世界

自由という権利を最大限に活用する意志がある人はどれだけいるのだろう。未だ捨てきれない社会との接点の中で、大衆が憧れる自由とは、自分を中心として思い通りに世界が動くという下品な欲望であることが分かった。本当はそれが叶わない夢だと知りながら、自分の色が染められないようにただ望むことしかできない有り様は目も当てられない。モノクロの世界は制限されているように見えるが、自由だ。元が何色だったか迷うことがない

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矛盾

矛盾

故郷や旧友との物理的距離に受ける影響は想いの深さの程度を表す。過ごす時間が少なくなることで、その関係が途絶することもあれば、今まで通り続くこともある。維持しようという意識だけで関係性が成り立てば良いが、それは稀だろう。時と共に変化する各々の境遇の中で変えられない項目を増やすことは矛盾を抱えることであり、何かを消耗する必要があるように思う。だから自他関係なく、絶え間ない変化の中で得た価値や認識を大切

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方角

方角

手をかけて自ら生み出したものには愛着が湧き、過大な評価をしてしまいがちだ。全ての物事に対する思い入れの比重を統一することは不可能だろう。だが、常に過小評価をすることで愛着の差を縮めることならなんとかできそうだ。そんな意識の中で際立って良いと思えるものこそが道導であり、舵を切って向かうべき方角として然るべきだ。

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1/6s

偽善

偽善

悪だと信じて疑わなかったことが知らない風土では善とされていることがある。自分の善を信じることを悪であると不当に評価されるのであれば、その地で善悪の認識を改めるべきではないだろう。しかし、その差異を逆手にとった渉外活動は確かに存在し、恩恵は想像以上に大きい。研鑽した自分の価値観の露呈が友好関係を崩壊させる原因となり得るのであれば、偽善を振り撒くことが恩恵を受け続けると同時に自身の価値観の安全を保障す

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冬の歌声

冬の歌声

日が沈み、歩いたことのない街でいつもより暗く、寒くて寂しいような感覚に陥った。こんな時は人の跡を辿ることで自分の居場所や温もりを確保できるものだ。次第に人、ビル、ネオンやオブジェが増えて安堵していると、どこかから冬の歌声が響いてきた。寒さに季節の経過を憶えるのは自分だけではないという事実がほんのり温かく感じた。この人混みの中にはもう少しだけ居たいと思えた。

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1/10s

作法

作法

それほど激しくない雨の中、自分だけがびしょ濡れであることに気付いた。都合が悪い時は構造物の中で雨風を凌ぎ、どうしても避けられない時は傘で雨粒を弾くのがこの国の作法なのだろう。とはいえ、自分も鞄の中に傘を常備している。必要となり得るものだからこそ依存しないことにしている。場面を見誤り、動いているのか止まっているのかも分からない流れを発生させる習慣は非常に愚かしい。

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1/15s

普通

普通

煌びやかな照明を横目に普通とは何か考えている。冷え切った四肢や懐を温めるためにジムのシャワー室へ通うことか。安い豆腐を主食とし、空腹を自身の拳で鎮めることか。飲まず食わずカメラを片手に街を彷徨うことか。思い浮かぶ普通はどれも苦しみを伴うものばかりだ。ただ一つ、こだわった珈琲を啜りながら夜を更かすことを除いて。

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1/40s

趣向

趣向

理由なく有名なものに触れることは避けるようにしている。注目度や評判に趣向を左右されるつもりはない。多くの作品に触れることで評価の物差しが形成され、良いものは水面下に数多にあることを知った。そして、世に囃し立てられているものの価値を疑うようになった。

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1/15s

手段

手段

人間はその叡智を以て文明を勃興した。目的のために手段を講じ、意志や技術を継承することで暇を得るほど水準を高めている。しかし、簡便化の進んだ社会では目的と手段の順序どころか資源の減耗にすらも無関心になっていることが多い。幾多も生み出してきた手段はどれだけ崇高な目的を果たし、どれだけの資源を無駄遣いしたのだろうか。

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f7.1
1/8s

無力

無力

肌寒い風が吹く季節になってきた。変化の只中で足を止め、過ぎる景色を眺めることしかできないこの無力感も季節の一部として夜に溶けてしまえば良いのだが。

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1/10s

権力

権力

権力で人を虐げる構造に迎合する多数派の一人には数えられたくない。教育、勤労および納税を義務付ける反面、予備校頼りの教育環境、非生産的議会および不透明な税金用途を放置するこの国家の一因であることは人生の汚点になり得る。愚かさを睨みながらの生活は息が詰まる。

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f3.5
1/6s

脇道

脇道

自分が取り残されているのか、逆に自分が変化しているのかが時々分からなくなる。美しいと知れた景色をただ眺めるのも悪くないが、能動的に働きかけることで誰もが見落とす景色を観測することが叶う。この味を知ってしまったら脇道へ逸れることも、歩みを止めたり早足になることも厭わなくなる。それが如何に過酷であろうとも。

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1/200s