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さまよう子羊へ | ショートショート

ある人は「せらびー」と云い
またある人は「セラヴィ」と叫び
さらにある人は「C'est la vie.」と嘆く

いずれもまだ新緑のような息吹を感じる
若さを秘めた子羊たちが何故にさまよう

悟りを開くにはあと数十年必要そうな話を
心の眼を開いたかのように今を悟っている

先人が長年抱えてきた負債を投げつけられ
宛名の消された一通の手紙を託されられた

そこに「納得」という二文字は存在しない
「消去」という形でもって受け入れられる

「運命」と容易に受け止めるのはまだ早く
「試練」として立ち向かうには経験が浅い

予め用意されていた轍や道具が揃っているのに
どうしてこんなに生きるのは難しいのでしょう

ここはいったい何処なのですか?
ここはもしかしたら楽園ですか?
ここは既に天国か地獄のどちら?

「これが人生なんだ」とある人が云えば
「これもまた人生」と見限るように歎き
「これぞ人生」と開き直って見上げれば

空の蒼さと群れに自我を保てられる
そう気の迷いが生じていた



(410文字)


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タダノツカサ
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