タバコ代わりの気分転換?
私が「ココアシガレット」というお菓子を知ったのは、社会人として働きはじめた一年目の頃だった。
それまで一個も口にすることがないどころか、学生時代はその存在すら知らずにいたのである。因みに小学生の頃、地元の近所に駄菓子屋は2、3軒ほどあったが、自分の記憶が定かであれば、いずれもその類は置いていなかった気がする。
世間一般で「往年のベストセラー」という冠がついているにも関わらず、自分の親からだけでなく親戚、あるいは親の知人から一切情報を受け取る機会がないまま、齢20にして、初めてレトロ調の青い箱にお目にかかるのであった。
しかしその時の私は、パッケージに「ココア…」と白文字でわかりやすく印字されておきながら、それが一種のお菓子であることを認識していなかったのである。
偶然にも、当時の職場で使っていたデスクの引き出しに、普段の仕事でよく使うボールペンや定規などに混じって入っていた。そのために、チョークに似た文房具の一種かと勘違いしていたのだ。
そもそも、当時私が勤めていた職場では、チョークで書くのに必要とする黒板自体が設置されていない。そうでありながら、自分の知らない用途でいずれ誰かが使うのだろうと、入社してから半年間ずっと放置していたのであった。
箱の側面には、賞味期限を表す日付がハッキリと印字されているにも関わらず…。
やがて、職場内では尋常じゃない量のタバコを吸うことで有名だったH先輩から「喫煙する前に食べるお菓子」だと教わり、そこで生まれて初めてココアシガレットを口にすることになる。
しかし、名前の通りの「ココア」の味をほとんど感じない。何方かと云えば、砂糖もしくはハッカの香りが強い。予想していたものとは異なる結果に、少々微妙な感想をもってしまったのである。
だが個人的には、自分自身が大人になりかけようとしているあのタイミングで、一つの味を知って良かったと思っている。
なにより「タバコを吸うよりこの一本」というキャッチコピーを掲げたココアシガレットは、禁煙したくてもなかなか実行に移せない大人に向けた商品なのだと、改めて解釈するのだった。
因みに私自身、生まれてから一度もタバコを吸ったことがない。そのために、いざ口にしたら自分の身に何が起こるのか、齢30にして未だに知らない。
ただ仮に一度手を出したら、ある意味でその虜になってしまい、おそらく死ぬまで吸い続けることになるかもしれない。
だからこそ、一丁前にタバコを吸うつもりでココアシガレットを口に咥えながら、一つのストレス解消にして気分転換という方法を試みるのであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!