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「己」を生きるため「魔法」とともに「運命」に抗え



先日耳にした久々の新曲に、リピートが止まらない。


先行で発表されたばかりであるスガシカオの「Let's get it on」を、昨日の夜から今日の朝夕の通勤時間を跨ぎ、そして今現在も繰り返し聴いている。それと同時に、最近まで発表されてきた曲とは、何かが異なるという錯覚に陥っていた。

この違和感の正体は、いったいなんなのか。かれこれ数十回も聴き続けているが、なかなか真相には辿り着けない。それでも、近年目立ってきているポップなサウンドや歌詞の世界観と、どこか似ているようで異なるようなものだとは薄々気づいていた。

ただ、初期の頃に多く見受けられていた、生々しくもエッジの効いた世界観は影を潜めていることに違いない。そう思いながらも、99年に発表された3枚目のアルバム「Sweet」に収録されている「グッド・バイ」を、彷彿とさせるものがあるように感じたのである。

そうした一つの着地点に行き着いた時、今年の6月頃に自身の「X」で、スタッフの訃報を伝えていたことを思い出した。



スガシカオが、デビュー当初から長年在籍していた事務所からの独立後は、ブログなどを通じて非常に苦労されていたことを知っていた。

そんな中でLIVE活動など多岐に渡り、彼のアーティスト活動をずっと支え続けてきた一人のスタッフの功労は、私たちリスナーの想像だけでは計り知れないものがあると考えさせられるものがあった。

もし、新曲の「Let's get it on」が、今年の6月亡くなったスタッフに宛てて書き下ろした曲だとするなら、前述のように抱えていた一連の違和感というのは、なんとなく辻褄が合う気がしていた。

単に、自分の音楽を聴いているリスナーをはじめとした誰かに宛てたメッセージのみならず、長年付き添ってきた大事な人に捧げるとともに「俺は俺で精一杯頑張るから、どうか天国で見守ってくれ」と、そう伝えているようにも感じ取れる。

それよりも彼はどんな思いで、この曲を世に放とうとしたのだろう。訃報を発表してからリリースされるまでのおよそ4ヶ月の間、悲しみに暮れる日々に塞ぎ込んでいたと思う。

真相は何であれ、サビ終盤の歌詞に「明けない夜があっても」「止まない雨が降っても」「君がもういなくなっても」という言葉を繰り返し綴ったのは、仲間を失ってしまい消沈していた自分を、もう一度奮い立たすための決意が表れているのかもしれない。


私も今日に至るまで、ありとあらゆる人たちに支えられ続けてきた。それと同時に、自分の大切にしてきたものも多く失ってきてしまった。けれど、それらにいつまで経っても固執している場合ではない。

私も私で、自分の信じた道を突き進んでいく意志がここにある。再び自分を見失ってしまわないよう、決意を新たに歌い上げる彼の姿にあやかるようにして、私も「Let's get it on」と口ずさむのだ。


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