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双極症の私は何を持って今「正常」だと判断すればいいのか

はじめましての方ははじめまして。こんにちは。森国司(モリクニツカサ)です。
少しでも双極症やうつ病の助けや支えになりたいため、発信活動に勤しんでいます。

この記事では、双極症という気分の波がある精神疾患を持つ私は、一体全体いつなら「正常」「普通」「正気」だと思っていいのか?という問いについて考えたいと思います。
特に、躁状態は社会的に活動できてしまっているように見えるため、当事者自身が異常性を自覚・自認しづらいという特徴があります。そのため、特に躁側からの観点で「正常」だと言えるためには?というテーマについて考えたいと思います。

私自身がこの問いに対して明確な答えを持っているわけではなく、試行錯誤中ではありますが、どのような内面や考え方で向き合っているかは言語化できると思い、筆を取りました。最後までお付き合いいただけると幸いです。

私の場合、躁の時やうつの時にどうなるかは以下の記事にまとめていますので、よろしければご参照ください。

「正常」とはどんな状態か

考えを深ぼるためには、基準や定義が欲しいところです。そこで、専門書にヒントがないか探してみます。

躁側からのアプローチ

躁エピソードの基本的特徴は、気分が高揚する、開放的になる、あるいは怒りっぽくなる、といった気分の変化に(中略)気力・活力の増加が必須(中略)。この気分、気力・活動性の変化が1日の大半を占める状態がほぼ毎日、少なくとも1週間以上続く

『標準精神医学 第9版』

条件として、「気分の変化」プラス「気力・活力の増加」とされています。いつもとは違う気分や性格でとてもエネルギッシュになるということですね。

躁かどうかの判定基準の中に「1日の大半を占める」かどうかの基準が入っているということは、1日の中にも躁の瞬間とそうではない瞬間が入り混じる可能性があるということになります。朝から夕方まで躁だったが、夜は正常だったということがあることになります。
1日の中でも気分の上がり下がりがあるのは経験上も納得できます。

ここから分かるのは、躁側からみた時の「正常」であるための条件は、以下のようになります。

  1. 気分の変化がない、かつ、気力・活力の増加がない

  2. 気分の変化があり、気力・活力の増加がある場合でも、1日の大半を占めていない

  3. 1日の大半を占めていても、連続で1週間以上続いていない

加えて以下の詳細な条件が続きます。

基本的特徴を示す期間内に、以下の7項目のうち、3項目が顕著に、かつまた持続して存在することを確認することが診断上必要
(1) 過度の自尊心あるいは誇大的思考(中略)
(2) 睡眠に対する欲求が減る(中略)
(3) 普段より多弁で、話したい気持ちが強い(中略)
(4) 考えが次々浮かぶ(中略)
(5) 注意転導性 (中略)
(6) 目標指向性のある行動が高まる、あるいは精神運動性の興奮(中略)
(7) 困った結果を引き起こす可能性が高いにも関わらず、自らの楽しみに熱中する

『標準精神医学 第9版』

さらに、上記のように具体的な診断基準が設けられています。ちなみに私の場合は、7項目中3項目どころか、7項目中7項目当てはまります。「自分のことを書いているのかしら?」と思うぐらい当てはまります。

端的にするために言い換えてはいますが、この診断基準を裏返すと以下のようになります。

具体的な躁の診断基準からみた「正常」であるための条件は、以下の7項目のうち、顕著かつ持続的に続く項目が2項目以下であること。

  1. 自信満々

  2. 寝ない

  3. 多弁

  4. 考えが次々と浮かぶ

  5. 注意力がない

  6. 目的指向

  7. 熱中する

軽躁の基準

この上で、躁と「正常」の間に存在する軽躁状態について基準を明確にする必要があります。

躁エピソードと、基本症状を含む症状項目は同一であるが、第一に期間が少なくとも4日間、第二にその重篤さも社会的・職業的機能障害を起こすほどではないか、入院を要しない程度(中略)。端的に言えば、躁エピソードと同様の症状があるが、程度が軽く、その人が元来もっている社会的な能力が残されている状態にとどまっている

『標準精神医学 第9版』

躁を基準として弱くしたのが軽躁となります。弱くする観点は、持続期間と症状の出方の程度の強さになります。

程度をはかる重要な観点として、「元々持っている社会的な能力が残されている」かどうか、ということになります。
裏を返すと、軽躁状態では社会的に能力を行使することができることになるので、一定の社会活動ができている状態を指すことになります。
私はこの条件を「パートナーと長時間連続して話せるか」「人とテキストコミュニケーションができるか」「文章を長時間連続して書けるか」と置き換えて判断するようにしたいと考えています。なぜなら、私の場合はこの3つができていれば、家庭内でも問題なく過ごすことができ、仕事をどうにかすることができる可能性が高いためです。

この基準は、軽躁を躁と区別するためにあると理解できるので、「正常」の基準を考える上では考える必要がないことになります。

躁側からみる「正常」の条件

ここまでで、躁側からみる「正常」の観点は、以下のように整理することができます。

  1. 気分の変化がない、かつ、気力・活力の増加がない

  2. 気分の変化と気力・活力の増加がある場合でも、1日の大半を占めていない

  3. 1日の大半を占めたとしても、それが連続で4日以上続いていない

  4. 4日以上連続していたとしても、以下の7項目のうち、あてはまるものが2つ未満

    1. 自信満々

    2. 寝ない

    3. 多弁

    4. 考えが次々と浮かぶ

    5. 注意力がない

    6. 目的指向

    7. 熱中する

「正常」の条件について考える

まず、第一条件の「気分の変化がない、かつ、気力・活力の増加がない」という条件に納得感がありました。
というのも、日々暮らしていて様々な要因で気分が変化したり、気力や活力が湧いてくることはあるからです。そのため、この条件は、両方の条件が揃ってはじめて「躁かもしれない」という基準になっています。

次に第二条件の「気分の変化と気力・活力の増加がある場合でも、1日の大半を占めていない」についてです。「1日の大半」というのが曖昧なので、例えば8割以上と考えると、起きているのが16時間とすると約13時間です。数時間は落ち着いているかもしれない時間帯はあっても、他はずっと躁という状態ということでしょう。

第三条件の「1日の大半を占めたとしても、それが連続で4日以上続いていない」はポイントになるのではないかと思えます。連続している必要があるので、1日や2日程度であれば「まだ分からない、様子を見て考えよう」と考えられる場合もあるということです。
いつでもすぐメンタルクリニックの先生に相談できるわけではないので、私としては「まだ分からない、落ち着け自分」と考える余地が残っているのは地味に救いになります。

最後に、第四条件の7つの項目への該当性です。これに関しては、個人的には最もどう扱えばいいかが悩むポイントでした。というのも、上述しましたが私は元々の自分自身の特性として7つ全てにあてはまっているように感じるためです。
私はこれを程度の問題だと捉えています。相対的に、人と比べるとこれら7項目にいつでも該当するように思えてしまいますが、元来そういう性格だと受け入れて、その性格が大きく増幅されているかどうかで考えることにしています。

最後に

躁側を基準に、「正常」について考えを深めてみました。いかがでしたでしょうか。各基準に対する条件の捉え方については個人差があるとは思いますが、少なくとも大枠としては参考になるのではないかと思います。お役に立てていると幸いです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

参考


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