生物(植物・動物・微生物)講座「紅葉の研究(光合成と葉緑体)」
吾輩は、余生の健康のための散歩中に、紅葉の落ち葉を見た。植物の一部の「葉っぱ」の一生を考察してみた。
緑色⇒黄色⇒赤色(落ち葉)の現象(可視光は電磁波の一部であるが)、そして、その紅葉から、「滅びの美学」を感じた。冬を越し、その先の春の「新しい芽生え」を期待し、疫病(武漢ウイルス疫病)に苦しむ者もいるので終息を願いながら、執筆するものである。そして、私的な話であるが、この論文は我が孫の菊地優明の勉学の一助になればうれしい限りである。
皇紀2683年11月7日
さいたま市桜区
理論物理学研究者 田村 司
目次
はじめに
1、葉の内部と葉緑体
2、光合成のメカニズム
⑴、光化学反応
⑵、カルビン回路
⑶、光合成に必要なスペクトル
3、落葉のしくみ
4、春化
5、紅葉のしくみ
6、紅葉の種類と時期
はじめに
生物学は実に面白い。物理学も面白いが、生物の世界はもっと面白い。生物学には物理知識、化学知識、などの知識が横断的に要求されて、幅広い知識が要求される。今回は電磁波の中の可視光が光合成にどのように寄与しているかと、その光合成で頑張った「葉っぱ」の終焉の紅葉をテーマにしてみました。味気ない電磁波(可視光)が植物の光合成に貢献しているのには驚きを禁じ得ない。
光合成(葉緑体)を現代の科学技術でできるか、不可能である。改めて、自然の不思議と恩恵に感謝する次第である。生けるものすべてに感謝し、「いただきます」合掌。
1、葉の内部と葉緑体
光合成をおこなっている主な器官は葉である。サボテンのように茎で行っているものもある。植物の葉は光を受けやすいように平らな構造をしている。葉をはじめ植物体で光合成を行っている部分は緑色をしている。これは、クロロフィル(葉緑素)と呼ばれる色素が含まれているからである。光のエネルギーはクロロフィルによって吸収されて植物に利用される。光合成色素にはクロロフィルのほか、カロチン(オレンジ色の色素でニンジンに多く含まれる。)キサントフィル(黄色又は無色)があり、光の吸収を助ける。
植物の葉の細胞内には、「葉緑体」と呼ばれる構造体(細胞小器官の一つ)がありこの構造体で光合成の反応が行われる。葉緑体は外側に二重の膜構造を持つ。さらに「チラコイド」と呼ばれる膜構造がある。クロロフィルなどの光合成色素はこの膜に含まれる。とくにこのチラコイドが円盤状になってたくさん重なっている部分を「グラナ」と呼ぶ。
グラナとグラナの間をつないでいるチラコイドを「ストロマチラコイド」と呼ぶ。
「出典:大場秀章監修・清水晶子著『植物の世界』講談社 p49」
葉緑体はラン藻を起源とし、ミトコンドリアと同様に細胞内に取り込まれて細胞小器官になったと考えられている(細胞内共生説)。
2、光合成のメカニズム
光合成の反応はたくさんの化学反応からなる複雑な過程であるが大きく2つの過程からなる。
⑴、光化学反応
葉緑体のチラコイドの膜に含まれるクロロフィルなどの色素によって光が吸収されて起こる過程で、「光化学反応」と呼ばれる。この過程では水の分解が起こり、水分子(H₂O)に含まれていた水素(H)は電子を放出して水素イオン(H⁺)となり、NADPと呼ばれる物質と結合し(NADPH)、還元力としてその後の反応に使われる。
酸素はその後の反応には必要なく、放出される。その後に必要な「ATP」もこの過程で生産される。ATPはアデノシン三リン酸と呼ばれる物質です。
⑵、カルビン回路
この過程は光は必要なく、二酸化炭素(CO²)を吸収してブドウ糖(グルコース)を合成する。前述の光化学反応でできたATPのエネルギーとNADPHによる還元力で行われる。これらの過程を「カルビン回路」と呼ばれる。カルビン回路の反応は、葉緑体のストロマ(膜の周りにある気質部分)において、酵素の働きで行われる。
「出典:大場秀章監修・清水晶子著『植物の世界』講談社 p57」
(出典:芦原坦・作田正明共編 「植物分子細胞生物学』オーム社 p7)
⑶、光合成に必要なスペクトル
太陽の光には可視光として、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤のおよそ7色である。しかし、厳密な境界がない。だから紫、藍、青をまとめて「青色光」とし、緑、黄を「緑色光」、橙、赤を「赤色光」とし、光合成に関する光を表現するときは、青色光、緑色光、赤色光の三色に分ける。
クロロフィルの吸収スペクトルと光合成の作用スペクトルにおいて、クロロフィルへの吸収スペクトルは青色光と赤色光である。緑色光は橙色の色素カロテンや黄色の色素キサントフィルなどのカロテノイドと呼ばれる色素がある。それらも光を吸収し、光合成に役立つ。これだけでは緑色は光合成にかなり役立つ一因では説明できない。
緑色光は細胞内などで乱反射されて、最終的にはクロロフィルに吸収されるなどの「寄り道効果」と呼ばれる現象が起きて光合成の作用スペクトルに含まれるのである。
3、落葉のしくみ
葉の付け根には離層と呼ばれる細胞層がある。
秋になるとこの層の細胞壁のセルロースやペクチンが分解されて、細胞どうしの接着が弱くなり、落葉が起こる。葉でつくられるオーキシンが、離層の細胞どうしが離れないようにしているが、秋になると、夜間の低温や日長の短さが引き金となって、葉からエチレンが放出されこの反応が起きる。エチレンは植物ホルモンとしての働きを持ち、植物がストレスを受けたときや、傷ついた組織で多くつくられる。このほかにも果実を熟させる働きを持つ。
落葉に際しては、葉にある有用物質を茎の方へ回収し、さらに植物体の不用物質を葉に移動させる。植物にとって落葉は、「老廃物の排出」として、意義ある現象である。
落葉で感傷に浸る必要は無いのである。人間でいう「糞」であろう。呵々。
4、春化
植物は秋になると活動を停止して、冬の間は休眠する。植物にとっては、低温に長期間晒されることがその後の植物の活動、種子の発芽、花芽の形成に不可欠である。小麦の栽培品種の一部では低温処理をしないと発芽しないことからこの現象を春化と呼ばれる。このような低温に対する植物の反応には、主にジベレリンという植物ホルモンの蓄積が関係していると考えられる。植物をジベレリンで処理すると低温処理した場合と同じ反応を引き起こす。
5、紅葉のしくみ
晩秋になると葉から茎への物質の移動が妨げられるようになり、葉の組織内に溜まった糖分がアントシアンという紅色の色素に変わる。同時に葉緑素は分解され、葉は赤に色づく。これが紅葉である。アントシアンが形成されない葉では、葉緑素が分解されると葉緑体にあったカロチノイドという色素が目立つようになり、葉は黄色に色づく。アントシアン形成とカロチノイドの程度によって、葉は様々な色調を示す。
葉緑体ある葉。
カロチノイドの色素が目立つ葉
アントシアンの色素が目立つ葉
3枚とも同じ種類の木(サクラの木)から採取したものである。
6、紅葉の種類と時期
狭義には、赤色に変わるのを「紅葉(こうよう)」、黄色に変わるのを「黄葉(こうよう、おうよう)」、褐色に変わるのを「褐葉(かつよう)」と呼ぶが、これらを厳密に区別するのが困難な場合も多く、いずれも「紅葉」として扱われることが多い。また、前述の通り、同じ種類の木でも、生育条件や個体差によって、赤くなったり黄色くなったりすることがある。下の葉の映像は同じ種類(桜の木)である。秋になると草や低木の葉も紅葉し、それらを総称して「草紅葉(くさもみじ)」ということがある。常緑樹も紅葉するものがあるが、緑の葉と一緒の時期であったり、時期がそろわなかったりするため、目立たない。ホルトノキは、常に少数の葉が赤く色づくのが見分けの目安になっている。
また、日本における紅葉は、9月頃から北海道の大雪山を手始めに始まり、徐々に南下する。紅葉の見頃の推移を桜前線と対比して「紅葉前線」と呼ぶ。紅葉が始まってから完了するまでは約1か月かかる。見頃は開始後20〜25日程度で、時期は北海道と東北地方が10月、関東から九州では11月から12月初め頃まで。
ただし、山間部や内陸では朝晩の冷え込みが起こりやすいために、通常これより早い。
参考資料
田中修著 『たのしい植物学』講談社 2007.1.20 第1刷発行 p101~緑色の寄り道効果
林 将之著 『葉っぱはなぜこんな形なのか』講談社 2019.5.14 第1刷発行
岩瀬徹・大野啓一著 『写真で見る植物用語』全国農村教育協会 2004.10.25 2刷発行
芦原坦・作田正明共編 「植物分子細胞生物学』オーム社 2004.5.20 1版1刷 p3
大場秀章監修・清水晶子著『植物の世界』講談社サイエンティフィク 2004.10.1 一刷発行 p48 葉緑体
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