政治(金融・経済)講座ⅴ977「新植民地政策」
盛者必衰、これが世の常であり、無常の世界である。今中国は絶頂期であるが、そのうち、敵を作り過ぎて、やり過ぎて衰退してゆくであろう。すべからず「中庸の徳」が肝要である。
中国の世界戦略の氷山の一角が「一帯一路」であり、中国の経済援助が債務の罠であることが暴露されてきた。今回はその関連記事を紹介する。
皇紀2683年4月2日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
中国、途上国に32兆円融資=「一帯一路」で、米は影響拡大懸念
9 時間前
【ワシントン時事】世界銀行は29日までに、中国が過剰債務を抱える途上国・新興国22カ国に対し、過去20年間に計2400億ドル(約32兆円)相当の緊急融資を行ったとする調査報告書を発表した。経済圏構想「一帯一路」の参加国が中心で、中国が巨額支援を通じ相手国への支配を強めてきた実態が浮き彫りとなった。
一帯一路では、中国が支援対象国のインフラを軍事などに利用する目的で借金漬けにして影響力を高める「債務のわな」が問題視されている。世銀が米ハーバード大と共に調査した結果、中国は2000年以降、デフォルト(債務不履行)危機に直面したスリランカやパキスタン、エジプトなどに計128件の緊急融資を行った。
報告書によれば、中国の海外融資全体に占める過剰債務国の割合は10年に5%弱だったが、22年には60%まで上昇した。中国は一帯一路の参加国による債務減免要求に応じない一方、短期融資で足元の資金繰りを支援しており、「グローバルな貸し手として世銀や国際通貨基金(IMF)を猛追している」(報告書)状況だ。
日米欧の先進7カ国(G7)は中国の影響力拡大を強く懸念している。イエレン米財務長官は29日の議会証言で「中国が世界の国々に『債務のわな』を仕掛けていることを非常に心配している」と強調。米国が主導する世銀など国際金融機関の改革を早期に実現しなければ、「中国の参入機会が一段と増えることになる」と警鐘を鳴らした。
出現した中国の「新植民地主義」 文化人類学者静岡大学教授・楊海英
2018/8/7 11:45
文化人類学者、静岡大学教授の楊海英氏
中国の習近平国家主席が7月、中東・アフリカ5カ国を歴訪した。習氏の外遊は今年3月に国家主席に再選され終身的独裁体制を築いて以降、初めてとなる。彼は訪問先で中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた金銭支援を打ち出し、アメリカの保護主義を批判した。習氏の外遊は「中国流新植民地体制」の幕開けを改めて印象付けた。
≪定住型と搾取型のパターン≫
一般的に植民地体制には2つのパターンがある。定住型と搾取型だ。習氏が訪問した南アフリカにはさまざまな先住民が暮らしてきたが、そこへオランダ系の白人が入植し、武力を駆使してアパルトヘイト国家を創建した。マンデラ氏のような平和運動家が終生にわたって闘争した結果、人種差別制度が撤廃された。しかし経済は外来の白人や定住した元植民地者に牛耳られたままだから、植民地統治の影響が消えたわけではない。
もう一つは搾取型だ。入植者の白人が植民地で勃発した民族解放運動によって追放され、本国に戻ってからも、旧来のルートで入植地の経済と政治に影響力を及ぼし続け、利権を手放さない間接支配を指す。習氏が訪れたセネガルなど西アフリカの諸国はフランスの統治から離脱しても、今日に至るまで経済的依存から脱却できないのが、その典型的な例だ。
フランスはその気になれば、いつでも現地の「子飼い」=代理人を通して宗主国の権益を確保する。こうしたヘゲモニックな状況は現在も全く変わっていない。
≪「一帯一路」こそ合致する≫
従来の植民地体制はどちらも1960年代に崩壊した、といわれてきたが、われわれが見落とした現代史の別の側面がある。それは、中国による「新植民地」体制の確立だ。チュニジアの首都チュニスで60年1月に「第2回全アフリカ人民会議」が開かれた際に、独立したばかりのアフリカ諸国は「新しい形態の植民地主義の出現に警戒しよう」と呼びかけた。そして「新植民地」には以下のような特徴がある、と予想していた。
第1は自らに従属する現地政府を擁護しながら内政干渉する。第2は経済援助を盾に多国間の権力構造を作り、軍事同盟と基地提供、ひいては軍隊派遣を通して弱小国を抑圧する-というものだ。
58年も前の警戒心は実に先見の明を有していた、と高く評価しなければならない。というのも、習近平体制が進める「一帯一路」構想はまさにその「予言」にぴったりと合致しているからだ。アフリカ諸国の最大の貿易相手国となった中国の狙いは、資源と「天然の同盟軍」を獲得するところにある、と習氏は公言している。大規模投資や多額の借款で相手国を負債に追い込み、そして港湾と要衝を軍事基地として永年借用する。
インド洋に面したパキスタンのグワダル港をはじめ、スリランカのコロンボ港とハンバントタ港、そしてアフリカのジブチなどは既に「成功例」とされている。
「中国流新植民地主義」には旧来の植民地開拓と異なる特徴がある。それは、現地の政治体制に対し、人権や民主、投資運用の透明化など、うるさいことを一切、言わない点だ。巨大な工場や港湾を整備しても、働いているのは中国国内から連れていかれた労働者たちだ。労働者たちの僅かな給料を搾り取ろうとしてやってきた性産業従事者もまた中国人だ。
こうして北京は「中国のアフリカ」を経営しているが、内政には干渉していないと宣言ができる。現地の独裁政府も地元の雇用につながっていない点に多少不満があっても、裏から大金が入るので、ほどよく解消されている。
≪国内の民族統治術が適用された≫
中国はどこからこのような「豊富な経験」を積んできたのだろうか。答えは、国内の植民地経営にある。1930年代にアメリカの「歩く歴史家」、オーウェン・ラティモアはその名著『満洲に於ける蒙古民族』(善隣協会)の中で次のように指摘している。
中国は確かに西洋列強の半植民地に転落してしまったが、同時に中国はモンゴルやチベットなどの諸民族に対し、西洋列強よりも苛烈な「植民地支配」を強制している、と喝破している。無数の漢民族をモンゴルの草原に入植させては軍閥政権を打ち立て、そして現地の人々が少しでも抵抗すれば、容赦なく虐殺する。
西洋列強と中国に比べて、新生の満州国はモンゴル人の生来の権益を守り、民族自治が実現できている、とラティモアは評価している。彼は生涯、日本に厳しい態度を取ってきたが、満州国の政策に関しては賛辞を惜しまなかった。
モンゴルとチベット、「東トルキスタン」(新疆)を漢民族の「国内植民地」として開拓して運営してきた中国共産党は現在、その統治術をアフリカ諸国に適用し始めた。こうした兆候は既に49年以降に表れていたものの、世界は共産主義体制に甘かったので不問にされてきた。「中国流新植民地主義」が世界を席巻しつつある今日において、国際社会はいかなる措置を講じるかが問われている。(よう かいえい)
中国の「条件付き」アフリカ援助に米が警鐘 それでも中国が歓迎される理由
Mar 19 2018
ジブチ沿岸の港とアフリカ内陸エチオピアの首都アジスアベバを結んでアフリカの砂漠地帯を蛇行していく新しい鉄道が開通し、電車の運行が始まっている。
中国人がこの鉄道工事に携わり、ジブチ港湾設備の一部、および、隣接する新しい軍事基地も建設した。この鉄道の他方の終点であるアジスアベバ側では、中国ドル資金が潤沢に流入し、新しい路面電車が開通し、環状道路が新たに整備され、銀色に輝いて高くそびえるアフリカ連合の本部ビルが建設された。
この変貌ぶりは、大西洋をはさんでアメリカの目に留まった。
ジブチからエチオピア、ケニアからエジプトまで アフリカにあふれるほど流入した中国の潤沢な資金が実は重大な条件付きでの投資であることに対し、アメリカは警鐘を鳴らしている。アメリカは、この投資には明確に新植民地主義的な含意が見られる、として注意を呼び掛けた。中国が港湾、道路および鉄道の建設へ驚くほど手厚い投資を行うことで、アフリカ諸国家の中国への依存、国民からの搾取、そして、国民の基本的な主権への侵入が生じている、とアメリカは危惧を表明している。
「我々は、中国が投資するドルをアフリカから締め出そうと、多少なりとも試みているわけではない。それら資金の拠出はアフリカ諸国から渇望されているものだ」と、前アメリカ合衆国国務長官レックス・ティラーソン氏は今週、エチオピアの首都アジスアベバで語り、「しかし、アフリカ諸国が慎重にその投資条件を検討することが非常に重要だ、と我々は考えている」とした。
これらの投資条件は、新たな建設事業が生み出す雇用に対し、アフリカ人労働者ではなく、中国人労働者が従事することを認める取引につながりかねない、と、ティラーソン氏やアメリカ当局者は警告し、中国企業はアメリカの企業とは異なり、贈賄防止の法令を遵守せず、アフリカにまん延する腐敗や汚職を助長することになる、と語った。また、国家が財政難に陥った場合、歴史的にこれまで債務を免除してくれるとは限らなかった貸し手である中国に対し債務不履行となった場合、国家の経済基盤が制御不能に陥る恐れが多分にある、とした。
アフリカ諸国の中には、現在、年間経済産出量の2倍の額にものぼる借金を抱えている国々もあり、そのほとんどが中国からの借金を負っている状況だ、とアメリカは考えている。ジブチのマハムード・アリ・ユースフ外務大臣は3月9日、ジブチの合計負債額はGDPのおよそ84パーセントに相当する額にのぼっている、と認めた。
アメリカの筆頭外交官としてティラーソン前国務長官がアフリカ沿岸の小国、ジブチを訪問した時、その隣に並んだユースフ外務大臣は「しかし、我々はその負債を心配していない」と語った。そして、「強靭な経済基盤を持たずに国家を開発し発展させていくことはできない。中国は、その観点から見れば、非常に秀れたパートナーである」と話した。
アメリカが、自国と自国の企業をアフリカ諸国にとって中国よりも望ましいパートナーに仕立て上げたい理由は明白だ。中国は地理的・政治的に競合であり、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、そして中東諸国への影響を強めている経済面での競争相手であるからだ。
しかし、アフリカの政治家と経済学者は、そこに問題がある、と言う。アメリカとは違い、中国は、大金の入った財布を片手に持ちながら、気前よく札束をばらまきつつアフリカ大陸での存在感を徐々に増している。貧しい国々へ投資することに対し、予測不能なリスクが付きまとうことを考慮すれば、たいていの場合、そのリスクを甘受した上で投資してくれるのは中国だけである。
そして、アメリカが支援に乗り出す時は、人権や優れた統治について口やかましく干渉が入るのが常であるが、中国が投資してくれる場合にはそういった余計な煩わしさが無いことをアフリカ諸国はよく知っている。
前連邦準備制度経済学者であり、ブルッキングズ研究所のアフリカ人学者でもあるブラヒーマ・クーリバリ氏は、「中国は基本的にいつでもビジネスを行うつもりでいる」と言う。そして「中国とパートナーを組むことに好意的な国であれば、中国にとって意味があり、中国が抱く遠謀にとって望ましい方法を選んだうえで、どんな小国とでも関係を結ぶ」と話す。
中国は、アフリカを含め世界中いたる所での中国企業が搾取的であるという論調に激しく抗議し、代わりに、中国が寛大であるからこそ、世界の他の国々が経済的、社会的な発展を遂げることが約束されるのだ、と主張している。
中華人民共和国外交部の王毅氏は3月8日、年次記者会見において、「支配者は誰もおらず、全ての当事者は平等な立場で参加している」と言い、「何一つ秘密の運用は無く、オープンで透明な運用があるだけだ、『勝者独り占め』ではなく、全員が相互の恩恵を認め合い、『互いに利益のある』結果を得ているのだ」とした。
中国の「一帯一路」構想に基づく目を見張るほどの巨額投資は数兆ドルにものぼると考えられており、これは、中国を中心とする新たな世界的規模の経済システムの構築を推進するアジアの大国、中国の威力発揮のほんの一部に過ぎないものだ。アメリカにとって中国の経済投資と同様に警戒の対象となっているのが中国の軍事計画だ。
中国は、ヨーロッパとアジアを結ぶ重要な航路に沿う初の海外拠点をジブチに創設した。中国の「真珠の首飾り」戦略は、中国からペルシャ湾まで伸びている港湾ネットワークの構築を狙いとする。ここのところ中国は人工島の建築に余念が無く、海岸から遠く離れた水域まで支配を広げるために人工島の武装化へ踏み込みつつある。
ジブチは中国から非常に大きな恩義を受けた国であるが、ここに完成した新しい中国の拠点は、唯一アフリカに常設されているアメリカ軍基地からわずか数マイルしか離れていない。このジブチの拠点が現在のところアフリカに置かれた唯一の中国の拠点だが、アメリカアフリカ軍の長官、トーマス・ワルドハウザー海兵隊大将は今週、「そんな基地が今後増えることだろう」と予測した。
「中国がジブチの拠点において実施している行動をスパイ防止活動の観点で行っているだけ、と無邪気に考えているほど我々もお人好しではない。スパイ活動は実際に行われている」とワルドハウザー大将は下院軍事委員会に話した。そして、「しかるに、我々は用心と警戒を怠ってはならない、ということを意味している」とした。
良かれ悪しかれ、中国の野望に対するアメリカの猜疑心は留まることを知らず、アフリカという範囲を遥かに超えている。中国企業はパキスタンとキルギスタンで発電所の建設や資金援助を行い、ギリシャの港の管理を担当し、タイやタジキスタンで鉄道建設プロジェクトに参画し、中南米へも継続的で積極的な進出を計画中である。
批評家たちは、過去に習うべき教訓がある、と言う。
スリランカでは2015年、元大統領が選挙戦で驚くべき歴史的な大敗を喫した。ハムバントタ港建設費用の捻出のために中国に負った債務がかさみ、その合計がおよそ50億ドルになったことを対立候補が批判した後のことだ。この借金のうち15億ドルの返済が遅延していたが、スリランカ政府は12月、所有していたハムバントタ港の80パーセントの権益を中国の国有企業に売却した。
アフリカでは、中国が資金提供を行って建築した道路があちこち崩壊し始めた。アメリカはこれを手抜き工事のせいである、としている。フランスの新聞、ル・モンド紙は1月、2012年に中国がアフリカ連合のために2億ドルの費用を掛けて建築した本部ビルに盗聴器を仕掛けていた、と報じた。しかし、中国はこれを否定している。
By JOSH LEDERMAN, Associated Press
Translated by ka28310 via Conyac
中国「一帯一路」22カ国に2400億ドル救済支援、インフラ融資返済に苦しむ国増える
Record China によるストーリー • 4 時間前
中国が2008年から21年にかけて発展途上国22カ国に総額2400億ドル(現レートで約31兆4400億円)の救済資金支援を行ったことが世界銀行などのリポートで明らかになった、とロイター通信が報じた。中国主導の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」のインフラ建設に充てた融資の返済に苦しむ国が増えたためだ。
中国が2008年から21年にかけ発展途上国22カ国に総額2400億ドルの救済資金支援を行ったことが明らかになった。
ロイター通信によると、リポートは世界銀行、ハーバード・ケネディ・スクール、米ウィリアム・アンド・メアリー大学の研究機関エイドデータ、キール世界経済研究所の研究員がまとめた。救済支援の約80%が16~21年に集中しており、対象国の多くをアルゼンチン、モンゴル、パキスタンなど中所得国が占めた。
中国は途上国のインフラ建設に数千億ドルを融資したが、プロジェクトの多くは想定通りに利益が上がらず、融資は16年以降徐々に減少している。債務返済に支障を来している国への融資が海外への貸し付け全体に占める比率は10年には5%弱だったが、22年には60%に上昇した。
支援額が最も多かったのはアルゼンチンの1118億ドルで、以下パキスタン(485億ドル)、エジプト(156億ドル)となっている。9カ国は支援額が10億ドルより少なかった。
中国の途上国向け融資をめぐっては欧米諸国から「有形無形の拘束を受け、債務の代償として中国が合法的に重要な権利を取得する『債務の罠(わな)』になっている」の批判を集めている。スリランカがその典型とされ、中国の支援の下で進められたハンバントタ港建設時の費用約13億ドルの債務が返済できなくなり、17年に中国の国営企業が救済という形で99年間借り受ける契約を結んで実質的に中国が所有する港湾となっている。
ロイター通信はエイドデータのディレクターでリポート執筆陣の1人であるブラッド・パークス氏が「中国の救済支援は『不透明』でまとまりがないと指摘した」と報道。中国外交部の毛寧報道官は3月28日の定例記者会見で「中国は一貫してオープンで透明という原則に基づいて、発展途上国に投融資協力を行っている」と反論した。
この中で毛報道官は「最近、多くの外部要因の影響により発展途上国の債務リスクが著しく高まっていることで、一部の人間がこの機に乗じて、これをいわゆる中国の『債務の罠』であり、融資が不透明であると騒ぎ立て、中国に汚名を着せようとしている」と主張。「中国は一貫して発展途上国の経済・社会の発展を支援している」と強調し、「中国は各国の発展への要求に立脚して、対外投融資協力の重点をインフラ、生産と建設などの分野に置き、発展途上国の自主的で持続可能な発展能力の向上を支援している」と述べた。(編集/日向)
参考文献・参考資料
中国、途上国に32兆円融資=「一帯一路」で、米は影響拡大懸念 (msn.com)
【正論】出現した中国の「新植民地主義」 文化人類学者静岡大学教授・楊海英(1/3ページ) - 産経ニュース (sankei.com)
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