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政治講座ⅴ1667「商業用不動産の融資の不良債権化懸念」

不動産神話から脱却したはずなのにまだ後生大事に融資していたとは呆れる。所詮この世は無常の世界である。形あるものはいつかは亡びる。動産だけに限らず不動産の価値も常に変化しているのである。ニーズに合わせて不動産価値も変化するのである。世界的疫病によって、商業用不動産のニーズも変わって来たのである、今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2684年3月2日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

あおぞら銀行を追い込んだ「米国不動産」の底なし沼、15年ぶりの赤字転落、後手に回った債権処理

2/2(金) 16:32配信

あおぞら銀行の2024年3月期決算は、280億円の最終赤字に転落する見通しだ(撮影:尾形文繁)

 あおぞら銀行は2月1日、今2024年3月期決算を下方修正した。純利益は期初予想の240億円から大きく後退し、280億円の赤字に転落する。
純損失を計上するのは、リーマンショック後の2009年3月期以来、15年ぶりだ。
【図解】担保割れの債権がおよそ4割に  
急転直下の業績悪化には、2つの要因がある。
1つは有価証券の売却損だ。折からの海外金利の上昇で、あおぞら銀が保有する欧米債や投資信託の価格が急落
外貨調達コストも膨張し、有価証券の利回りを上回る逆ザヤに陥った。評価損を抱える有価証券の売却を急いだ結果、2023年度下期(2023年10月~2024年3月期)に410億円の損失を計上する。

 金利上昇を受けた有価証券の売却損については国内銀行が軒並み計上しており、あおぞら銀の損失計上も時間の問題と見られていた。
より深刻なのは、赤字転落のもう1つの要因である、アメリカの不動産向け融資だ。損失額が大きいだけでなく、損失処理の進め方にも課題を残した。
■オフィスビルの価格が急落
 「(投資対象として)最も安定していると考えていたオフィスが、大きな影響を受けた」。あおぞら銀の谷川啓社長は、同日に開催した決算説明会でこう説明した。

 あおぞら銀は邦銀でありながら米国企業や不動産向け融資への積極姿勢で知られる
2023年末時点で、米国不動産向けの融資残高は約25億ドル。用途別ではおよそ4分の3がオフィスだ。
 コロナ禍以降、アメリカのオフィス市場は絶不調だ。
在宅勤務の普及で出社人数が減少し、オフィス需要が“蒸発”。米不動産サービス大手CBREによれば、2023年10~12月期のニューヨーク・マンハッタンのオフィス空室率は15%。サンフランシスコに至っては35%だ。

 追い打ちをかけたのが金利上昇だ。金利負担を嫌った投資家が不動産投資に消極的になり、銀行も貸し渋り姿勢を鮮明にした結果、オフィスの買い手が減少。価格はみるみる下落していった。
■債権の担保割れが続出
 あおぞら銀の米国不動産向け融資は、担保物件からの賃料収入や売却益のみを返済原資とする「ノンリコースローン」だ。返済が滞った場合は担保物件を処分し、銀行は得られた資金の範囲内で融資を回収する。あおぞら銀が追い込まれたのは、担保に設定したオフィスの価格が急落し、売却しても融資の回収が果たせなくなったためだ。
2023年12月末時点で、あおぞら銀の米国向けノンリコースローンの残高は18.9億ドル。このうち、物件を売却しても融資の全額回収が困難と見られる案件は7.1億ドルと、全体の4割弱を占める。物件価格と融資額が拮抗し、担保割れと背中合わせの案件も存在する。
 今回、あおぞら銀はノンリコースローンの焦げ付きを見越して、2023年9~12月期に324億円の貸倒引当金を計上した。有価証券の売却損とともに、多額の引当金を計上したことが赤字転落の主因となった。

 オフィス市場の軟調さは、今に始まったことではない。あおぞら銀の引き当てが後手に回り、このタイミングで多額の損失計上に追い込まれた印象は拭えない。
 あおぞら銀が初めて、ノンリコースローンの引当金を大規模に計上したのは2023年1~3月期だ。ただ、金額は51億円にとどまった。「『LTV(ローン・トゥー・バリュー)60%』だ。何もなければ(追加の)引き当ては不要だ」。2023年5月に行われた決算説明会の席上、谷川社長はこう説明していた。

 LTVとは、物件価格に対する融資額を指す。LTV60%であれば、物件価格の6割しか融資しておらず、仮に物件価格が4割下落しても理論上は融資の全額回収が可能という意味だ。したがって、引当金は51億円で十分。むしろ保守的ですらあるというのが、当時のあおぞら銀の認識だった。
 だが、「LTV60%が安全」という保証はどこにもなかった
 買い手不在の米国オフィス市場では取引事例が少なく、周辺相場の推定が困難だった。そこであおぞら銀は独自に価格を算定し、引き当ての有無を判断していた。その後、周辺で成約事例が現れた場合には物件価格を修正する。

 再評価した際に物件価格が融資額を下回れば、当初問題ないと判断した案件でも、引当金の計上を迫られる。あおぞら銀にとって想定外だったのは、周辺相場が当初の見込みを大きく下回り、引き当てに追われる物件が日を追うごとに増加したことだ。2023年4~9月期では新たに124億円を引き当てた。
 膨らむ引当金とは対照的に、あおぞら銀から発せられるメッセージは楽観的だった。谷川社長は2023年11月の決算説明会でも「相当厚く積んだ。追加の引き当ては、ほぼないのでは」と明言していた。だが、そこからわずか3カ月後の2月1日に、3度目の引き当てとなる324億円もの引当金が発表された。谷川社長も「今後も個別案件ごとに若干の損失があるかもしれない」と、発言のニュアンスが変化。米国オフィスをめぐる引き当てが本当に底を打ったのか、投資家の疑念は晴れない。
■引責辞任との見方を打ち消す
 あおぞら銀は業績予想の下方修正と同時に、社長交代も発表した。4月1日付で大見秀人副社長が社長に昇格し、谷川社長は6月の株主総会で取締役を退任する。「後継者計画は1、2年前から進めており、ちょうどこのタイミングになった」(谷川社長)とし、業績悪化に伴う引責辞任という見方は打ち消した。

 有価証券と米国オフィスという懸案がくすぶる中、大見新社長にとっては荒波での船出となりそうだ。「メガバンクほどの規模はなく、地域金融機関のような強固な営業地盤は(あおぞら銀には)ない。存在感を示すために、あおぞら型投資銀行ビジネスを磨いていく」。大見新社長は就任の抱負をこう述べた。
 今回の赤字計上により、あおぞら銀の自己資本比率(普通株式Tier1比率)は6.6%に低下する見通しだ。同行が目標とする7%を下回り、リスクテイクには慎重にならざるを得ない。赤字転落を契機に、リスクの取り方が適切だったかの検証が急務だ。 一井 純 :東洋経済 記者

赤字のあおぞら銀行、米不動産融資に新型コロナの誤算

日本経済新聞

2024年2月25日 5:00 

オフィスは(他の不動産に比べて)最も安定していると考えていた」。米商業用不動産向け融資で損失に備える引当金が膨らみ、2024年3月期は15年ぶりの最終赤字になるあおぞら銀行。谷川啓社長は厳しい面持ちでこう話す。

あおぞら銀の前身は1957年に設立された日本不動産銀行だ。77年に日本債券信用銀行2001年にはあおぞら銀行と銀行名を変えながら「祖業」とも言える不動産絡みの融資を強みとしていた。...


米商業不動産、迫る借り換え5年で400兆円 利上げ影響

2023年8月1日 

金利高・与信厳格化が導火線 軟着陸への航路曇らす

米国の商業用不動産が苦境に直面している。在宅勤務など需要の構造変化に加え、金利上昇や融資の引き締めで資金繰りに変調が出ている。5年間で返済満期を迎えるローンは400兆円近くにおよび、債務不履行予備軍の物件は膨らんでいる。銀行の経営体力をそげば実体経済への影響も出る。米当局は監視を強めている。

ニューヨーク・マンハッタン島の目抜き通り、5番街。金曜日の夕方で多くの人々が行き交うなか、ひっそりとたた...

米商業用不動産の隠れリスク、オフィス値下がりで露呈-世界中に波紋

Natalie Wong、Patrick Clark

2024年2月15日 9:09 JST

  • 米国の商業用不動産取引が再開、価値低下が顕在化

  • 世界の銀行が引当金計上迫られる-米国から遠い日本やドイツでも

米商業用不動産市場は20兆ドル(約3010兆円)規模に上るが、この巨大市場の淘汰(とうた)が長らく遅れていたのには、単純な理由がある。

  不動産にどれだけの価値があるのか、誰も把握できなかったからだ。それを望む人がほとんどいなかったことで決定的となった。

  新型コロナウイルスの大流行が世界中の不動産利用を根底から覆して以来、金融機関は高騰する金利に圧迫された借り手に厳しく接し、価値を失ったローンを引き受けるインセンティブをほとんど持たなくなった。

  売り手側がディスレスト価格で物件を手放したがらないため、取引は行われなくなった。この結果、どの当事者も根本的には何も変わっていないふりをすることができた。

  しかし多くの人々にとって、様子見できる時間は終わりに近づいている。  

  全米で取引が再開され、不動産価格がどれほど下落しているかが明らかになりつつある。これに伴い、世界の金融システムを揺るがし得る損失を巡る幅広い懸念が浮上した。

  米ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)や日本のあおぞら銀行、ドイツのドイチェ・ファンドブリーフバンク(PBBが不良債権引当金を積み増し、最近の混乱が深刻化。懸念に拍車をかけている。

  ニューヨーク市マンハッタンでは、ブローカーがブラックストーンが出資したオフィスビルを担保とする債権を約50%引きで売り始めた

  ロサンゼルスの一等地にあるオフィスタワーは昨年12月、10年前の購入価格より約45%安い価格で売却された。同じ頃、米連邦預金保険公社(FDIC)は、ニューヨーク市のアパートメントビルを担保にした約150億ドルのローン債権を40%のディスカウントで売却した。

NY市ブロードウェイ1740番地のビル。ブラックロックは2年前にこの物件から手を引く

Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  連邦準備制度がここ数十年で最速ペースの利上げに終止符を打ち、不動産投資家にとって借り入れコストの状況がより明瞭になった今は、市場の転換点だ。一部の不動産所有者は、借入金の返済期限が到来するため、売却せざるを得なくなるだろう。

  データ会社のトレップによれば、来年末までに1兆ドル以上の商業用不動産ローンが満期を迎える

深刻度

  影響はそこら中で見受けられる。10年に及ぶ低金利時代、世界の投資家は債券に代わる安全な選択肢としてオフィスやその他の商業ビルに投資した。ロサンゼルスやニューヨークといった米国の大都市は、固定資産税の財源を満たすために、オフィスビルの価値に頼ってきた。そして金融機関、特に米国の地方銀行は、当初のほんの一部の価値しかないビルのローン債権を大量に保有している。

  こうした金融機関は今、バランスシートの「ブラックホール」と、認識された現実がもたらしている結果に対処するしかない。

  マディソン・リアルティー・キャピタルの共同創業者ジョシュ・ゼーゲン氏は「永久に手をこまねいていることはできない。売買が成立し、価格が下がってくれば、時価評価について話し合わざるを得なくなるだろう」と述べた。

  危機の深刻度については議論がある。イエレン米財務長官は先週商業用不動産の損失は心配だが、状況は「管理可能」だと述べた。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長も4日、CBSの番組「60ミニッツ」とのインタビューで同様の見方を示した。

  不動産投資家のバリー・スターンリヒト氏は、オフィス関連の損失は1兆ドルに上ると予測した。

  より多くの取引が市場に透明性を与えるにつれ、投資家は価値の下落を反映させるために資本の再投入が必要になるだろうと、ニューヨークの不動産オーナーであるRXRの最高経営責任者(CEO)、スコット・レクラー氏は言う。

  同氏の会社は昨年、ローワーマンハッタンにあるタワーに関連する2億4000万ドルのローンを、これ以上資金を投入する価値がないと判断してデフォルト(債務不履行)にした。同時に、割安になった不動産を購入することを視野にアレス・マネジメントと合弁会社を設立した。

  レクラー氏は市場の痛みを悲しみの5段階になぞらえ、否定から始まり、怒り、交渉、うつへと進むと説明。「2024年、私たちは悲しみの第5段階にいる。今は受け入れの段階だ」と語った。

先延ばしと見ないふり

  何年もの間、金融機関はいわゆる「先延ばしと見ないふり」の戦略をとってきた。混乱期に融資期間を延長することに重点を置き、短期的な評価を無視してきた。

  新型コロナのパンデミック(世界的大流行)時には、オフィスや店舗、ホテルが空っぽになり、ローン返済の延滞に直面したが、ローンで大きな評価損を計上するのは得策ではなかった。問題がパンデミックに関連した短期的なものなのかどうかが明確でなかったためだ。

  不運だったのは、この危機がインフレ高進へと移行し、最終的には一連の利上げによって建物の評価額が暴落したことだ。リモートワークが引き起こした記録的な空室率から回復していないオフィスセクター全体の問題がさらに悪化した。仲介のジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)によると、問題はオフィスへの回帰率が欧州やアジアよりも低い米州で特に深刻だ。

  ロンドンから香港まで世界の金融センターオフィス価格が下落したが、米国の都市では特に大きな下げが見られた。ブローカーのサヴィルズによると、ハイテク企業の好景気需要の恩恵を受けたサンフランシスコの空きオフィス率は昨年10-12月(第4四半期)時点で37%と、米国で最も高かった。

  ニューヨークは、金融サービスや法律事務所、メディア企業など、より多様なテナントが入居しているため、これより低いが、既存オフィスの2割近くが空いていた。

  MSCIリアル・アセッツによれば、これら地域のビル評価額は低迷しているが、取引活動が通常のレベルに達するためには、価格がさらに下落する必要がある。

  米不動産の値下がりは、米国の大都市物件がかつて世界からの投資の中心だったことから世界中に波及している。

  過去10年の低金利時代、投資家は米国のオフィスをほとんど債券のように扱っていた。オフィスは長期リース契約付きで賃料上昇が見込める優良資産に裏打ちされた超安全な投資と見なされた。しかし、それが今、投資家を痛い目にあわせている。

  このため、ドイツや日本など米国から遠く離れた地域でも所々で不良債権が発生している。より多くのローンが満期を迎え、投資家が物件の評価損を計上したり、物件から手を引いたりするにつれて、世界中の金融機関は想定される損失に対処するため、より多くの引当金を準備しなければならなくなるだろう。

  この事態が各社にどのように影響するかは、それぞれのローンの質によるところが大きい。そのため、ディストレスはさまざまな場所、さまざまなタイミングで顕在化するとみられる。

  ドイツのドイチェPBBとアーリアル銀行は、投資家が帳簿上の米国向け融資を吟味するに伴い、無担保社債価格が下落し借り入れコストが上昇した。近年、欧米の商業ビルへの最大級の投資家グループの一つだった韓国の銀行や資産運用会社もまた、不良債権の波に備えつつある。

  カナダの保険会社サン・ライフ・ファイナンシャルは、米オフィス投資の評価額が急落。カナダの年金制度投資委員会(CPPIB)は最近、マンハッタンのオフィスタワーの持ち分を不動産ローン引き受けと運転資金に加えてわずか1ドルで売却したと、事情に詳しい関係者が明らかにした。

高まるディストレス

  オフィス需要の減少や、パンデミック期の熱狂の中でピーク価格で買われたアパートなど、新型コロナに起因する苦境は、借り入れコストの大幅な上昇によって悪化している。

  MSCIによると、昨年12月現在、不良資産化した米不動産のうちオフィスが占める割合は41%で、その額は860億ドル近い。現時点で資産の財務状況が悪化している潜在的ディストレスト物件は、全ての不動産タイプで約2350億ドルに達しているとMSCIは試算。

  アパートはそのリストの上位にあり、670億ドル以上が潜在的ディストレス状態にある。その金額の30%以上は過去3年間、多くの場合ピーク価格で購入された建物に関連している。

  アパートの大家が直面している問題は、スペース過剰のオフィスオーナーとはかなり異なっている。

  大半の都市で住宅は今でも不足している。このセクターの苦境は、主に借り入れコストの高騰に起因している。21年の低金利時代に投資家が市場に殺到した後、借り換えが必要になった矢先、金利急上昇が建物の価値を低下させたデベロッパーがここ数世代で最速のペースでアパートを建設したため、賃料はそれ以来横ばいとなっている

  一部の金融機関は既に、不動産に付随するローンポートフォリオの売却をひそかに試みている。

  キャピタル・ワン・ファイナンシャルは昨年、約10億ドルのオフィスローンポートフォリオを売却し、ニューヨークのオフィスやアパートに関連した正常債権と不良債権から成るポートフォリオを市場に出した。カナディアン・インペリアル・バンク・オブ・コマースも、米国の不動産に関連するローン約3億1600万ドルの買い手を探している。

  多くの銀行はまだ、建物のアップグレードに向けた資本再投資の見返りとしての融資の延長など、既存の家主との取引を望んでいる。しかし、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の一部門やブラックストーンなど大手不動産投資家は、これ以上資金を投入したくない物件から手を引いている。場合によっては、建物の価値が土地よりも低いこともある。

  不動産ローン債権に投資するアリーナ・インベスターズのダン・ズワーンCEOは、「人々が鍵を返せばそれで終わりというわけではない。エクイティー部分は消滅したが債務部分も大きく棄損(きそん)した。物件が土地そのものの価値に近づいており、場合によっては取り壊しが始まるだろう」と話した。

PIMCO傘下のオフィスオーナー、サンフランシスコのビルなど担保のローンでデフォルト

Photographer: Loren Elliott/Bloomberg

  悲観的な見出しばかりで、まだ本当に早期だという事実を見失いがちだ。商業用住宅ローンは通常、期間5年または10年で、30年のスケジュールで償却される。大きな額の返済または借り換えが必要になるのは満期を迎えた時だ。

  金融機関は総じて、できるだけ長く差し押さえを回避するためにローンの変更に積極的で、より良い解決策が見つかる可能性を高めようとしている。オフィス需要が回復し、借り手が新たな資本を投入するだけの自信を持つ可能性はまだある。米国がリセッション(景気後退)を回避すればその可能性は高まる。

  オベロン・セキュリティーズのマネジングパートナー、ニコール・シュミット氏は「金利は下がるはずで、そうなれば一部はぎりぎりで切り抜けるだろう。政府はいかなる種類の金融機関メルトダウンも望みはしない」と話した。

  ローンの期間を延長することで、銀行は問題のあるローンの評価額を引き下げるために必要な引当金を積み立てる時間を稼げる。他の金融業者も同様に、事態を引き延ばす傾向を示している。

  前回のサイクルでは、商業用不動産担保証券の延滞率は、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが破産法適用を申請してから4年近くたった12年7月に10%を超えてピークに達した。トレップによれば、現在の証券化ローン延滞率は4.7%だ。

銀行の引当金

  一部の銀行は、価値下落やデフォルトの可能性から身を守るため、引当金を積んでいる。ウェルズ・ファーゴは、昨年末時点で商業用不動産の潜在的損失に備える引当金を39億ドルと前年同期の22億ドルから増やしていた。

  資産規模で最大の地方銀行であるUSバンコープによると、同行は昨年10-12月(第4四半期)の貸倒引当金繰入額を前年同期比で1億1100万ドル(約28%)増加させた。

  大手銀行は、潜在的な損失に対処するために多額の引当金を用意。クレジットカードや投資銀行業務など、他の大規模な業務にも依存しているため、混乱をより容易に乗り切ることができる。中小規模の銀行にとっては、問題はより深刻な可能性がある。

  モルガン・スタンレーが今週出したリポートによれば、銀行のバランスシート上にあり25年末までに満期を迎える商業用不動産債務の70%を地方銀行が占め大手25行が残りを占める。また、一部地銀の規制環境も変化しており、負債コストを押し上げ、資本を投下する能力を制限し、さらに脆弱(ぜいじゃく)にする可能性があるとモルガン・スタンレーは分析している。

大幅値引き価格で売却されたサンフランシスコのビル

Photographer: Loren Elliott/Bloomberg

  他の市場混乱と同様、チャンスもある。JLLの昨年10月時点のデータによれば、潜在的な買い手や投資家は、商業用不動産取引を視野に約4020億ドルの資金を準備した。世界最大のオルタナティブ資産運用会社のブラックストーンは昨年、300億ドル以上の資本コミットメントを確保し、過去最大規模の不動産ファンドの募集を終了した。

  サンフランシスコでは、買い手が急激な値引きを行っている。ダウンタウンにあるオフィスタワー、スピア・ストリート201番地のビルは、前所有者が貸し手にビルを引き渡した後、10年前の価値の半額近くで最近売却された。JLLによると、市内のオフィス物件は面積ベースで、ドットコム不況と金融危機後の市場底値に近い価格で売買されている。

  このような取引は、先見の明のある買い物に見えるかもしれないが、貸し手にとってはバランスシートに抱えている潜在的な爆弾のようなものだ。

  レクラー氏は評価額下落について「もう無視することはできない。下落幅の大きさによって、誰が適切に時価評価をし、誰がしていないかったかが分かる」と語った。

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原題:Massive Office Tower Losses Reveal Hidden Risks Across the Globe(抜粋)


NYCB赤字転落で米地銀株急落:米銀危機第2ステージの幕開けか:米商業用不動産の調整は世界の金融リスクとなるか

#木内 登英

2024/02/02

米国地銀株は昨年3月の米銀破綻時以来の大幅下落

米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利の据え置きを決めた1月31日に、米国株式市場では地方銀行の株価が急落した。米KBW地方銀行株指数は6%下落し、昨年3月にシリコンバレーバンク(SVB)に取り付け騒動が起きた時以来の大幅下落となった。

そのきっかけとなったのは、ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)が同日に発表した2023年10〜12月期決算が、市場予想に反して最終赤字に沈み、また減配を決めたことを受けて、株価が38%急落したことだ。

同行の2023年10〜12月期の最終損益は2億5200万ドル(約370億円)の赤字となった。前年同期は1億7,200万ドルの黒字だった。

NYCBは、2023年のシグネチャー・バンクの破綻を受けて、一部資産を同社から引き受けていた。救済に回っていた銀行が、今度は自らが躓いてしまった形だ。

業績悪化の主因は商業用不動産向け融資を中心とする保有資産の急速な劣化だ。債権の焦げ付きに備える貸倒引当金の繰入額は5億5,200万ドルと、前年同期の4倍以上に拡大した。

商業用不動産市場の悪化で米銀危機「第2ステージ」の幕開けか

米国の商業用不動産市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げの影響、リモートワーク定着によるオフィスの空室率の高止まりなどによって大きな打撃を受けている。

昨年3月のシリコンバレーバンク、シグネチャー・バンクの破綻は、長期金利の急騰による債券含み損の拡大が引き金の一つとなった。米国の長期金利は一時と比べて低下してきており、そのリスクは軽減してきているが、米国景気の減速や商業用不動産の調整を受けた不良債権の増加が、新たな経営不安の火種となっている。

これは、米銀危機の「第2ステージ」の幕開けかもしれない。今後どの程度自体が悪化するかは、商業用不動産の調整、景気減速の程度次第だ。

グリーン・ストリートの米国不動産価格指数(CPPI)は、最新の昨年12月に前月比横ばいと、2か月連続で3%以上の大幅下落となった後、やや安定を取り戻した(図表)。しかし、下落傾向に歯止めがかかったと判断するのは早計だ。前年同月比では-9.5%と2桁近いペースでの下落を続けている。

米国商業不動産市場の悪化の影響はドイツ銀行や邦銀にも

米国商業不動産市場の悪化は、米国のみならず世界の銀行経営に打撃を与えている。ドイツ銀行は2023年10-12月に、米商業用不動産関連の損失に備える引当金が、前年同期の4倍以上にまで膨らんだ。引当金は1億2,300万ユーロ(約195億円)と、前年同期の2,600万ユーロから大幅に増加した。前期比ではほぼ2倍である。

ドイツ銀の米オフィス向け融資は融資残高全体の約1.5%に相当し、対象物件はニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどにある。そしてこの先、借り換えが大きなリスクになるとしている。価値が低下した不動産向けの融資に返済期限が到来し、借り手が新たなローンを確保するために追加資本を注入する必要が生じる可能性を同行は指摘した。

また日本では、あおぞら銀行が2月1日に、2024年3月期に280億円の連結最終赤字(前期は87億円の黒字)の予想を出した。最終赤字は2009年3月期以来、15年ぶりとなる。そのうえで、第3四半期と期末配当予想を無配にする、と発表したことで、同行の株価は大幅に下落した。同行は、米金利の上昇で膨らんだ有価証券の含み損を処理するほか、米商業用不動産向け融資で損失に備える追加の引当金を計上することが赤字見通しにつながった。米国商業用不動産の悪化の影響は、邦銀の経営にも飛び火してきているのである。

昨年3月の米銀破綻は、米国内の問題に留まったが、米国商業用不動産の悪化、米国景気の減速は、世界の金融機関の経営にも大きな逆風となる可能性があるのではないか。




日本の不動産に海外投資家が注目している理由

投資家は低金利と強力なファンダメンタルズに惹きつけられ、日本への投資機会を模索している。

2023年 06月 06日

2023年に入って日本の不動産投資市場は世界屈指の活況さを取り戻している。背景にあるのは低金利政策だ。投資環境の優位性を維持していると、世界的に高く評価されている。

JLLのデータによると、2023年第1四半期における日本の商業用不動産投資額は88.7億米ドル、前年比41%増(米ドルベース)を記録した。

日本に対して旺盛な投資意欲を見せる海外投資家が原動力となっている。同四半期における海外投資家による投資額は前年同期のほぼ2倍となる20億米ドルとなった。

国内外の不動産投資市場に詳しいJLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター 内藤 康二は「他国の主要市場と比べて日本は低金利で資金調達できるため、多くの海外投資家が日本市場に積極的に参入しようとしている」と指摘。海外投資家にとって円安が最大の恩恵となっており、「日本の力強いファンダメンタルズは、日本に資金を投入する投資家にとって依然として最大の魅力となっている」と説明する。

実際、同四半期における日本市場が積み上げた投資額は突出している。JLLのデータによると、南北アメリカ地域とヨーロッパ地域の投資額は前者が660億米ドルで前年比61%減、後者が350億米ドルで前年比58%減となるなど、世界の主要市場の状況とは対照的な状況で、まさに日本の一人勝ちといった様相だ。

投資を引き寄せる磁力

日本の投資市場を牽引するのはオフィスセクターだ。2023年第1四半期に行われた取引事例の代表例として、シンガポール政​​府系ファンドであるGICが大阪の「北浜ネクスビルディング」を取得した事例が挙げられる。

日本市場における最大の投資先がオフィスセクターとなり、同第1四半期の総投資額の50%を占めた。投資家が日本市場の回復力を評価し、旺盛な投資需要を惹きつけた結果、アジア太平洋地域におけるオフィスセクターへの投資額は前年同期比110 %超増加し、45億米ドルにまで達した。

一方、足元では投資意欲が前向きに改善しつつあるものの、オフィス以外のセクターは回復度合いに濃淡が表れている。内藤によると「日本市場へ参入する海外投資家にとってオフィス以外に物流不動産と賃貸住宅が依然として高い人気を誇っている」という。

例えば、2023年4月には、プライベート・エクイティ大手のブラックストーンが保有していた日本の物流ポートフォリオ6物件をGICが8億米ドルで取得した事例が象徴的だ。また、米国の不動産投資・開発会社であるハインズが東京と京都に所在する賃貸住宅5棟を取得、今後5年間で資産価値を10億米ドルにまで拡大する意向を示している。

楽観視できる理由

アフターコロナを迎え、日本経済の回復と低金利環境の継続を背景に、2023年も投資意欲は引き続き旺盛であると予想される。

JLLのグローバルレポート「Global Real Estate Perspective」によると、世界的な金利動向として最終的に上昇する可能性はあるものの、急速かつ積極的な引き締め期間を経て、今後さらなる金利上昇の可能性は比較的低いとしている。その半面、日本の状況は多少異なる。内藤は「現在の消費者物価指数(CPI)は抑制されており、他の主要国に比べて大幅に低いため、日銀は短期的に利上げに動かない可能性がある」と指摘する。

144兆円超に膨らんだ商業用不動産ファンド、ECBがリスク指摘

Alexander Weber

2023年4月3日 21:21 JST

  • 投資家の資金引き揚げ機会は頻繁、ファンドの資産は流動性低い

  • 新規則が必要、換金機会の制限や通知期間の長期化など言及-ECB

商業用不動産に投資するファンドは過去10年に大きく拡大し、金融安定への脅威になっていると、欧州中央銀行(ECB)が警告した。

  不動産投資ファンドの純資産価値は過去10年に3倍以上に増え、1兆ユーロ(約144兆円)を超えた。ファンド業界の不動産市場への依存が強まったと、ECBが3日、「マクロプルデンシャル・ブレティン」で分析した。

  ECBはその中で、投資家は資金を引き揚げる機会が頻繁にあるのに対し、ファンドの保有する資産はかなり流動性が低いというミスマッチを指摘。これは金融システムを最近揺るがせたような取り付けにファンドが見舞われるリスクを高めていると論じた。

  従って、不動産ファンドの不安定は商業用不動産市場に「システミックな影響を及ぼす恐れ」があり、金融システム全体の安定と実体経済にも波及し得るとの見解を示した。

Source: European Central Bank


  ECBの研究者らはブラックストーンの不動産投資信託(REIT)「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」が最近、解約を制限しなければならなかった例を挙げた上で、不動産市場に関する懸念が解約請求をさらに増やす可能性があると指摘した。

関連ニュース:

  新型コロナウイルス禍に伴う在宅勤務および電子商取引の普及で、商業用不動産は打撃を受けた。そこへ、不透明な景気見通しとインフレ抑制を目指した急速な利上げによるリスクが追い打ちをかけている。

  ECBはブレティンで、ファンドが「流動性要求の急増に対処し、市場のストレス時に生ずる解約のコストを吸収する」のを容易にするような規則を策定すべきだと呼び掛けた。ECBによれば、資金引き揚げの機会を減らしたり通知期間を長くしたりすることが考えられる。
原題:ECB Warns of Risks Posed by €1 Trillion Real Estate Funds(抜粋)


ドイツ銀行、中国不動産会社・世茂集団の清算申し立てへ=関係筋

Clare Jim Xie Yu によるストーリー

3月2日、ドイツ銀行は、中国不動産開発会社の世茂集団の清算を香港で申し立てる準備をしていると、2人の関係者がロイターに明らかにした。写真は世茂集団のロゴ。2022年1月、上海で撮影(2024年 ロイター/Aly Song)© Thomson Reuters

Clare Jim Xie Yu

[香港 1日 ロイター] - ドイツ銀行は、中国不動産開発会社の世茂集団の清算を香港で申し立てる準備をしていると、2人の関係者がロイターに明らかにした。外国企業によるこうした動きはまれ。中国の不動産セクターではデフォルト(債務不履行)が増加、危機が深まっている。

世茂集団は2022年7月、10億ドルのオフショア債の元利金返済ができず、117億ドル相当のオフショア債全体がデフォルトと見なされた。

関係筋によると、世茂集団の債権者のドイツ銀は、債務再編条件が受け入れられないと判断。今月中に清算申し立てを行う意向だという。

ドイツ銀行はコメントを控えた。世茂集団はロイターの問い合わせに回答しなかった。

香港の高等法院(高裁)は今年1月、中国不動産開発大手の中国恒大集団の清算を命じた。同じく中国不動産大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)も今週、16億香港ドル(2億0450万米ドル)相当のタームローンを返済できなかったことを受け、債権者が清算を申し立てたと発表した。


参考文献・参考資料

米商業不動産、迫る借り換え5年で400兆円 利上げ影響 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

米商業用不動産の隠れリスク、オフィス値下がりで露呈-世界中に波紋 - Bloomberg

NYCB赤字転落で米地銀株急落:米銀危機第2ステージの幕開けか:米商業用不動産の調整は世界の金融リスクとなるか|2024年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

日本の不動産に海外投資家が注目している理由| JLL記事 (joneslanglasalle.co.jp)

あおぞら銀行を追い込んだ「米国不動産」の底なし沼、15年ぶりの赤字転落、後手に回った債権処理(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース

赤字のあおぞら銀行、米不動産融資に新型コロナの誤算 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

144兆円超に膨らんだ商業用不動産ファンド、ECBがリスク指摘 - Bloomberg

ドイツ銀行、中国不動産会社・世茂集団の清算申し立てへ=関係筋 (msn.com)

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