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政治(経済・金融)講座ⅴ730「銀行株価の上昇の今後の行方と日本経済の今後の行方」
日銀の黒田総裁の「長期金利容認幅0.25%から0.5%変更」発言で日経平均株価が大幅に下落したが、反して銀行株価が16%前後の上昇を記録した。
金利引き上げ予想で市場は動いたようであるが、黒田総裁は「金利引上げではない」と否定している。市場は疑心暗鬼を生じている。金利引き上げできる経済環境であるかという観点から考察すると、まだまだ弱含みであると考える。 大した経済政策でも無いのに、経済に動揺が走っている。今回は報道記事から両方の相反する意見の記事を紹介する。来年はウサギ年である。ウサギの動きと同じに乱高下を繰り返す荒れた相場になることであろう。
皇紀2682年12月28日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
メガバンク、株価上昇も日銀のマイナス金利解除は当面ないとの見方
浦中大我 - 3 時間前
(ブルームバーグ): 日本銀行のマイナス金利政策は今後もなかなか解除されず、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の許容変動幅拡大後に銀行利益が直ちに押し上げられる効果もほとんどないとメガバンクの役員らは考えている。
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日銀の予想外の決定を受け、大手邦銀の株価動向を反映するTOPIX銀行業指数は先週16%上昇した。
日銀の政策に関する発言であることを理由にメガバンクの役員3人が匿名を条件に語ったところでは、マイナス金利政策が解除されない限り、利益の有意な改善を期待できる状況にはない。
役員の1人は、黒田東彦総裁の後任に部外者が選ばれなければ、来年4月の総裁交代後であっても、日銀がすぐに利上げに踏み切る可能性は低いとし、部内者が既存の政策を解除するのは難しいかもしれないと話した。世界経済が来年急減速すれば、日銀は利上げのチャンスを失う危険がありそうだと別の役員は語った。
三井住友銀行の広報担当者は「政策金利が10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上がった場合、概算ではボトムで200億円程度の増益効果が見込まれる」と説明する一方、日銀の金融政策の見通しについては回答する立場にないとした。
みずほフィナンシャルグループの広報担当は「金融政策は日銀の専管事項であるため、コメントする立場にないが、あらゆるシナリオを想定し経営へのインパクトについては常にシミュレーションしている」と回答した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はコメントを控えている。
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日銀「黒田バズーカ」の重すぎる罪…結局、ツケを払うのは日本国民だ その問題点を突く
近藤 駿介 - 13 時間前
とうとう日銀が金融政策を修正
12月20日に開催された今年最後の金融政策決定会合で、日銀は2016年9月から6年強続けて来た目玉政策である「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」、所謂「イールドカーブ・コントロール(以下YCC)」政策の一部修正を決めた。
主な変更点は、長短金利の誘導目標(短期政策金利▲0.1%、10 年物国債金利目標をゼロ%程度)は変えずに、0%付近としてきた10年国債利回りの変動幅を従来の±0.25%程度から±0.5%に拡大した点である。これは日銀が「指値オペ」によって市場から無制限に10年国債を買い入れる水準を、これまでの0.25%から0.5%に引き上げたということなので、実質10年国債の利回りが0.5%まで上昇することを日銀が容認したことになる。
黒田東彦日銀総裁がこれまで「YCCの変動許容幅の拡大は金利の引き上げに当たる」との見解を示してきたことから、日銀によるYCC一部修正は「実質利上げへの政策転換」との思惑を生み、翌12月21日の10年国債利回りは0.48%と日銀の許容範囲の上限に近いところまで上昇した。
こうした市場の「実質利上げへの政策転換」という見方に対して、これまで「YCCの変動許容幅の拡大は金利の引き上げに当たる」との認識を示してきた黒田日銀総裁は「市場機能を改善することで、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融等を通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うものでありまして、利上げではありません」と、「市場機能改善」という新たな目的を持ち出したうえで、「短期の政策金利を▲0.1%、10 年物国債の金利目標をゼロ%程度というYCCの基本」を維持しているのだから「利上げではない」という屁理屈を展開して見せた。
これまでも様々な詭弁を弄して頑なに異次元の金融緩和の意義とその継続を図ってきた黒田日銀総裁は、今回のYCCの一部修正も「利上げではない」と言い張りさえすれば世間を言いくるめることが出来ると考えていたはずである。しかし、今回は黒田日銀総裁の思惑通りにことが進む保証はない。
信頼とコミュニケーションの欠如
それは、これまで黒田日銀総裁が言いくるめる必要のある相手が国内世論だったのに対して、今回はグローバル化した金融市場を相手にしなければいけないからである。
さらに、これまで黒田日銀総裁が導入してきた「異次元金融緩和の拡大」(2014年10月導入)や「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」(2016年1月導入)、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC)」(2016年9月導入)といった政策は、全て金融政策としての効果が必ずしも定かではないものの、黒田日銀が主体的に導入してきたものであるのに対して、今回の「YCCの運用の見直し」は債券市場での金利上昇圧力に屈服する形で導入せざるを得なかったという点で大きな違いがある。
金融政策は、中央銀行が金融市場や経済の資金の流れを変える意図をもって実施するるものである。従って通常は、金融政策の変更によって中央銀行がどのように資金の流れを変えようとしているのかという意図を汲み取って市場は資産配分を変更するので、結果的に中央銀行の意図した方向に資金は流れていくことになる。ここで重要なことは、中央銀行と市場の間の信頼関係とコミュニケーションが保たれていることである。
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問題はこの信頼関係とコミュニケーションの維持を黒田日銀が疎かにしてきたことだ。黒田日銀は基本的に市場との信頼関係とコミュニケーションではなく、政策の規模や実施タイミングによるサプライズで市場を支配しようとしてきた。
しかし、今回市場の圧力に屈する形で「YCCの変動幅拡大」に追い込まれたことで、市場と黒田日銀の立場は逆転してしまった。今回の「YCCの変動幅拡大」という政策変更におけるサプライズは、黒田日銀が白旗を掲げるタイミングが予想より早かったことくらいしかないからである。
コロコロと方針を変える日銀
金融政策としての意義は定かではなかったものの、これまでの政策変更に限って言えば曲がりなりにも日銀の意図は存在していた。しかし、市場の圧力に屈した形で実施した今回の「YCCの変動幅拡大」に、金融的な意図は見当たらない。それは、「YCCの変動幅拡大」方向に動いていた市場の動きを追認するだけなので、資金の流れを変更しようという日銀側の意図が存在しないからだ。
2013年4月から始まった異次元の金融緩和は、金融政策の目標をそれまでの「金利」から「資金量」に変える政策だった。それが2016年9月に導入されたYCCによって実質的に金融政策の目標は「金利」に戻され、「資金量」はYCCに伴う副次的産物に格下げされた。YCCが導入されて以降、金融政策決定会合後に公開される資料「当面の金融政策運営について」の「資産買入方針」という項目のなかから「長期国債について…」という記述は姿を消していた。
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しかし、今回「YCCの変動幅拡大」に踏み切った「当面の金融政策運営について」の中では「10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う」「本日公表する「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定」では、従来の月間7.3兆円から9兆円程度に増額する」という文言が加えられ、日銀が「金利」と「資金量」の二兎を追う方針であることが明らかにされた。
このように、黒田日銀の金融政策の目標は、日銀側の都合で「金利」から「資金量」へ、そして再び「金利」へ、さらには「金利」と「資金量」へと変遷し、その一貫性のなさは主要国の中央銀行のなかで抜きんでている。
今まで「破綻」しなかった理由
こうした一貫性のない政策がこれまで破綻してこなかったのは、2008年のリーマンショック以降、世界中で異次元の金融緩和が行われてきたからである。
しかし、昨今の世界的インフレと、「景気」よりも「インフレ抑制」を優先するFRB(米連邦準備理事会)による急速かつ容赦ない利上げによって、世界の金融市場の資金の流れは大きく変わってしまった。米調査会社EPFRの報告によると、今年になってから12月21日までに債券ファンドから2570億ドル(約34兆円)もの資金が純流出している。
リーマンショック以降世界が異次元の金融緩和に動く中で、世界の金融市場の資金の主役は兆円単位の資金を運用する年金やソブリンファンドなどになってきている。
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こうした大規模な資金を預かる機関投資家の運用の特徴は、インデックス運用あるいはインデックスをベンチマークにした運用が中心になっていることである。
自称「世界最大の機関投資家」である日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2021年度末時点のインデックス運用(パッシブ運用)の比率は「国内債券」76.6%、「外国債券」79.22%、「国内株式」93.65%、「外国株式」90.82%と高く、大半がインデックス運用になっている。
運用主体がインデックス運用の比率の高い年金資金やソブリンファンドになるということは、インデックスに採用されている国の市場動向は自国の事情にかかわらず世界の情勢から強い影響を受けるようになっているという事である。
世界の主要なインデックスの一つである「FTSE世界国債Index」の構成国とその割合を見てみると、日本の構成比率は16.41%(2022年1月末時点、以下同様)と米国40.05%、EGBI(欧州主要国)32.05%に次いで3番目と高いシェアを占めている。
こうした状況下で世界の国債インデックスに合わせて運用するファンドから資金が流出した場合、通常は構成国の割合に応じて売却することになる。そうしないと残されたポートフォリオ構成がインデックスから乖離してしまうからである。
世界的インフレと世界主要国が利上げに動く中で、世界の国債で運用するファンドから資金が流出することになれば、日本国債にも流出資金の16.41%相当の売が出るという事になる。こうした状況では、黒田日銀総裁が「利上げではない」と国内向けに強がりをいったところで日本国債の売却を止めることは不可能なのだ。
ツケを払うのは誰か?
FRBはインフレを「一時的」だと見誤ったことでインフレを追いかける形での大幅利上げ(Behind the Curve)に追い込まれた。そして日銀は市場の変化を見誤ったことで市場の金利上昇圧力に屈する形で「YCCの変動幅拡大」(Behind the Market)に追い込まれてしまった。
黒田日銀が市場との信頼関係とコミュニケーションではなく規模とサプライズで市場を動かすことができたのは、世界が異次元の金融緩和に向かっていたからである。
円安・株高に貢献したことで国内では「黒田バズーカ」と称賛されてきた黒田日銀の異次元の金融緩和は、世界的異次元の金融緩和の中に咲いた徒花に過ぎなかったのだ。
市場を動かせることを自らの力量であると過信してきた黒田日銀は、これからそのツケを払わされることになる。残念なことはその請求書は来年4月に退任する黒田総裁にではなく、国民に回されてくるということである。
参考文献・参考資料
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