パイナップル。
スーパーで買い物中、見事なパイナップルを見かけた。ずっしりとした黄色い円柱から緑の葉っぱがフサッと生えている。存在感あり。お値段が298円。パイナップルってまるまる一個でこんなに安いのか!
この流れで自分が考えていたことは、
「美味しそうだなぁ」とか「一個は多いかなぁ」とかではない。
「舞台上で使えそうだなぁ!」だ。
私はパイナップル本来の楽しみ方を一つも想像していなかった。
そう気づいた瞬間、なんだかすごく怖くなった。
頭に浮かぶのは「これが机の上にあるだけでワクワクするな」とか、「ホテルのフロントなら海外に見えるな」とか、「298円でそんなアイコンが手に入るならこれは安いぞ…」とか、そんなことばかり。
もしこれが机の上に置かれていて、その部屋が東京で一人暮らしをしている息子の家で、そこを初めて訪問した母親なら何を思うだろうか。
舞台上に机1つ椅子2つ
男の一人暮らしの部屋設定
机の上にはパイナップルが3個並んでいる
玄関のある上手方向から二人、入ってくる
息子「あがってー」
母 「お邪魔しまーす、(部屋をみている様子で)あーなかなかいいじゃない!」
部屋を見渡し、手の離れた息子の成長を実感する母。と、目に入るパイナップル3個
ティファールで入れたお茶を出す息子
母 「あんた、、これは…?」
息子「ああそれね。それはね、実は食べる用じゃないんだ」
この時、母親はなんて言えばいいんだろう。
もはやこの息子は現実の自分とさして変わらない。実際に購入した場合の自分とマジ母。食べるため、よりも先に使い道がある。自分の母親で想像してみたら、けっこう引いていた。
明後日、誕生日を迎えて37歳になる。
まずい大人になってきている。
これまでの人生はパイナップルを買ったことのない人生だった。値段にさえ注目したことがなかった。「触れてくれるな」と言わんばかりに主張してくるトゲトゲした皮と、「そんなに固かったんですね」と思ってしまうほどの葉っぱ達。
買った。
これからの人生のため、私はパイナップルを買いました。
これからは買うし、食べるし、時にはビジュアルの強さに甘えて舞台の机の上に置かせてもらうし。切り方だってネットを駆使して調べちゃうし。
こう切ったり、
こう切ったり、
こう切ろうと思うし。
大人の階段が1段1歳だとしたら、37段目がパイナップルだとは思わなかった。でも登りました。軽やかではないけどちゃんと登りました。私はパイナップルを買ったんです。
あ、え?
よく見ると、「mini」だ。
これで、「mini」…?
「mini」じゃないパイナップルのサイズを想像すると、味よりもやっぱり机に置いた時の姿を思ってしまい、そんな息子の様子を母親は静かに遠くから見ているのでした。
#パイナップル #パイン #pineapple #菠蘿
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