【映画感想】成功したオタク

【映画】成功したオタク(監督:オ・セヨン)

自分の足元が崩れるような絶望、罪悪感に苛まれた時、どのように気持ちに整理をつけるのか。
その答えの一つを見せてもらった。

普段ドキュメンタリー映画を観ることはなく、こちらもドキュメンタリーだとは知らずに観に行ったのだが、自身の辛い経験を見つめ直し映画作品として昇華させた、監督のオ・セヨンさん(かなりお若く見える)の行動力と賢さ、サバイブ能力がすごい。

オ・セヨンさんが青春の7年間を捧げた“推し”が犯罪者になってしまった。

素晴らしい男性だと信じていた“推し”に裏切られた悲しみ、推していたこと自体が恥ずかしく黒歴史になる絶望、それでも急には嫌いにはなれない罪悪感。

ファンならこういう気持ちになると思う。ファンであったことすら隠したくなる。
ところが彼女は一般人にも関わらず“推し”に認知されており、TVで本人と共演まで果たした有名な“成功したオタク”(=韓国語では“ソンドク”)だった。

犯罪者のファンであったことは隠しようもない事実。ならば、同じように「“推し”が犯罪者になってしまった」経験をした人達に話を聴きに行こうと、カメラを回した。

作中では10人弱にインタビューが行われていたが、中には意外と身近な人物もいた(セヨンさんの母親や、本作の助監督を依頼しようとしていた女性)。聞かれないから言わないだけで、同じような経験をした人はごまんといたらしい。

インタビュー相手もセヨンさんも、“推し”や“推し活”について語る中で、自分でも気が付かなかった自身の内にある感情が自然と出てきて、それを整理して前を向くきっかけになっていったように思う。
さながら「カウンセリング」や「セラピー」である。

気持ちがぐちゃぐちゃになってしまった時にどうするか?
まずは思っていることを正直に吐き出す。
そして同じ経験を持つ人と語らい、独りじゃないことを知る。

私は持病があるのだが、特に体調が悪い時などは同病の患者とコミュニケーションを取ることが癒しになる。そのことにも通じると思った。

“推し活”をしている/いないに関わらず、ままならない人生をサバイブする上で大事なことなんじゃないかと思う。

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