#2 第一印象
1991年。
その日の僕は、かなり憂鬱な気分で
東大阪、近鉄八戸ノ里駅の階段を
ホームへと登っていました。
出来の悪い高校生だった僕は
近畿大学への特別推薦試験が失敗に終わり
なんとも言えない喪失感を抱え
トボトボと帰路についていました。
ホームに着くと、同じ近大附属高校の
制服を着た男子達が7人ほどで
群れをなしており、その中央には
お腹のあたりをいじられている
青白い顔の長身の男子がいました。
彼は「やめろ、、」と弱々しく発するも
まわりの悪友たちは聞く耳をもたず
やんちゃで意地悪な顔をして
腹部への攻撃をさらに強めました。
彼の額にはうっすらと冷や汗が
光っていました。
<気の毒なやつ>
これが、のちに共に起業を志し
ルート・シーの代表
「安間 雄一郎」の第一印象でした。
あとで聞くと、彼はその時
虫垂炎(盲腸)を患っていたらしく
試験中も油汗が止まらず
必死の思いで試験を終え
電車に乗ろうとしたところ
悪友にいじられていたとのことでした。
そういうわけで
推薦試験に失敗した僕たちは
近畿大学の夜の部、通称「2部」に
入学することになりました。
2部(夜間)の学生生活は、
一般の大学生のそれとは大きく異なり
朝から夕方までアルバイトで稼ぎ
夕方からサークル活動、そして
夜に授業に出るというサイクルでした。
僕たちは夜学生であるにもかかわらず
キラキラとしたお昼の大学生活に憧れ
厚かましくもテニスサークルに入りました。
ある時、1つ上の先輩に
夜学生であることを話すと
「じゃ、あんたら、ナイターズやな!」
と命名されました。
ナイターズ……。
なかなかのネーミングセンスに絶句しましたが
本当のことなので、仕方がない。と思いました。
ZOO の「Choo Choo TRAIN」がヒットし
チェッカーズが解散した年のことでした。
(つづく)