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イラストエッセイ「私家版パンセ」0057「孤独は大切」 20241011

 人は社会的な生物ですから、決して一人では生きられません。
 社会がなければ、子供を産むことも(生物の中で人間だけが一人で出産できません)、食料を得ることも、言語を習得することもできません。
 人間は社会の中で人間になってゆきます。
 ですから孤独は人間にとって最も深刻な病と考えることもできます。
 人は誰しも、他者から認められたいと願い、他者のために役に立ちたいと願います。これは本能なんですね。
 けれども人間は一人で生まれ、一人で死んでゆきます。どれほど近しい人であっても完全に理解しあうということは不可能です。
 孤独は社会的な生き物である人間にとって、最も忌むべきものでありながら、決して逃れることのできない運命でもあります。

 「人は皆、誰にも理解されぬ孤独を自身の内側に抱えている」というのはピカソの言葉だったと思います。
 多くの人はこの孤独を見ることを恐れます。そして現実の忙しさや、空騒ぎ、酒などで埋めようとするか、友や伴侶との絆によって忘れようとします。
 けれども少数の人は、その深淵と恐れおののきながらも対峙しようとします。
 この孤独こそ、あらゆる創造力の源だと、ピカソは言います。
 その恐ろしい孤独に耐えられる魂だけが、真に創造的な仕事を成し遂げるというのです。

 哲学者のニーチェは、孤独が人格を磨くと言いました。
 同じく哲学者のショーペンハウワーは、人は孤独である時のみ自由であると言いました。
 「森の生活」の著者、ソーローは、人の基準で生きるより、自分と向き合う生き方の方が豊かだと言いました。
 「海からのおくりもの」の著者、リンドバーグ婦人も、孤独を理解するもの同士しか真に対等な関係を結ぶことはできないと書いています。

 逆に考えると、創造的な魂、自由な魂は必然的に孤独になるのでしょう。
 その孤独から宝を引き出し、それを皆にシェアする。そのことで世界がほんの少し再生される。それがそのような魂がこの世界で果たすべき役割なのかも知れません。

オリジナルイラスト ピカソの肖像





私家版パンセとは

 ぼくは5年間ビール会社のサラリーマン生活を送り、その後30年間、キリスト教主義の私立高校で教師として過ごしました。 多様で個性的な生徒と出会い、向き合う中で、たくさんのことを学ばせていただきました。 そんな小さな学びの断片をご紹介します。 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。


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