イラストエッセイ「私家版パンセ」0067 「退屈なのは、あなたの世界が狭いから ー 井の中の蛙の物語」20241126
井の中の蛙が見ることができるのは切り取られた空と、一本の小枝だけだった。
彼は世界が退屈でつまらないものだと感じていた。井戸の中は狭くて、変化がない。友達もいなければ、楽しいこともない。彼の夢はいつかあの枝にたどりつくことだった。
彼は努力して井戸をよじ登るだけの力をつけた。そして井戸の中から這い出した。何度か壁から滑り落ちたけれども挑戦を続け、なんとか井戸の外に出ることが出来た。
あの枝は井戸からほんのわずかに離れたところにあった。手を伸ばすとすぐに触れることが出来た。蛙は木によじ登った。木は一メートルほどの高さだった。
「以外と小さな木だな」と蛙は思った。
しかし、木の上から見渡す世界は井戸の中とは比べ物にならないほど広かった。
蛙はワクワクした。
遙か彼方に山脈が見えた。おそらくあそこが世界の果てだろう。蛙は山脈を目指した。
数か月かけて、とうとう蛙は山脈の頂上にたどり着いた。
ところがそこは世界の果てではなかった。山の頂上の反対側に、大平原が広がっているのだった。そしてその平原の向こうには、今上って来たのとは比べ物にならないほどの雪をかぶった大山脈が横たわっているのだった。
「何と世界は広いことだろう!」と蛙は思った。
彼はもはや退屈を知らなかった。
私家版パンセとは
ぼくは5年間ビール会社でサラリーマン生活をした後、キリスト教主義の学校で30年間、英語を教えました。 たくさんの人と出会い、貴重な学びと経験を得ることができました。もちろん、本からも学び続け、考え続けて来ました。 そんな生活の中で、いくつかの言葉が残りました。そんな小さな思考の断片をご紹介したいと思います。 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。