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「野菜も人も畑で育つ」は、2023年のベスト本かもしれない

まだ3ヶ月残っていますが、2023年に読んだなかで最も学びが多かった『野菜も人も畑で育つ』を紹介します。

本書は長野県にある「のらくら農場」の代表が経営論をまとめた1冊です。

僕がのらくら農場を知ったのは、同社がICC FUKUOKA 2023の「フード&ドリンクアワード」でグランプリを受賞したニュースです。どんな会社か興味がわき調べるなかで、本書にたどり着きました。

読み終えての感想は、「自分が目指したい経営の方向性に近いかも」ということです。

完成されたシステマチックな経営スタイルではなく、一人ひとりの想いを尊重しながらチームで問題解決する経営スタイルに惹かれるものがありました。

というわけで、印象に残った内容を抜粋します。

誰にでもできる仕事に、誰も来ない

人材募集のサイトに載せるとき、うちが書けないフレーズがある。それは、「誰にでもできる簡単な仕事です」というものだ。

嘘をつくわけにはいかないので、募集サイトには「複雑で覚えることがたくさんあります」と書くしかない。ところが、そう書いたほうが、向上心のある人が来てくれるようになった。

人材募集については、応募数を増やすために業務の難易度を下げて説明しがちですが、知らず知らずのうちに自分たちで仕事の価値を下げていたなと。ハッとさせられました。

我慢ではなく、不満を解決する力を身につける

農場の基本的な約束事がこれ。怒鳴る・キレる禁止のルール。基本的に怒っちゃだめ。このミッションは簡単ではない。それは、怒るのを我慢するのとはノットイコールだからだ。おかしい、よくない、あの人苦手など、不満が生じないことなどない。我慢はときに必要だが、ただ我慢し続けるのではなく、不満を解決する力を身につけなければならない。

たしかに今まで出会ったキレない(優秀な)人は、感情のコントロールが上手いというより、不平不満を解決する力が高いかもと思いました。「なぜできないのか!」ではなく、「じゃあこうしてみたら?」と二の矢三の矢を持ってる印象が強いです。

横に立つコミュニケーション

横に立つコミュニケーション。これはのらくら農場でもっとも重要なキーワード。
人の正面に立たない。たとえば資料を相手に渡して、「いついつまでにやっておくように」というような命令口調で仕事を言い渡さない。

一方通行の上下の関係では、よいアイデアは生まれない。いかに「一緒に考えるチーム」にしていくか。乗り越えるべき壁を自分ごととして捉えるメンバーを増やすほど、集合知が生まれる可能性が増える。

「話しているうちに何か浮かんでくる」。これは本当だと思う。町長に質問されている僕のほうが、話しているうちにこれから農場が取るべき舵取りの思考がまとまってくる。横に立つコミュニケーションの力を、僕のほうが学んだ時間だった。

「横に立つコミュニケーション」はいい表現だなと。僕は家業に後継者として入社しましたが、「先頭で引っ張る」と「後方から支援する」のどちらにも違和感があったので、とてもしっくりきました。

線引きをあえて曖昧にする

担当の線引きをあまり明確にしないようにしている。キュウリ担当は、キュウリの様子を誰よりも気にする人、誰よりも変化を早く察知する人、というような曖昧な形に、あえてしている。

1人の人間が、ずっと同じ仕事をするほうが効率はいいので悩むところだが、担当者の気持ちを全員がわかる形を優先することにした。

土壌分析もぞうきんを洗う仕事も、価値の優劣はないとしている。そして、仕事場には、必ず誰の担当でもない仕事というものができてしまう。それをひょいと拾い上げる職場こそがよい職場である、と僕は考える。

効率の追求を目指すと、専門化や分業制に辿り着くわけですが、それによって社員同士の無関心が助長されるリスクも大きいと思うんですよね。弊社は顔と名前が一致する規模感なので、適度な曖昧さは残していきたいです。

60:60の関係でいこう

期間スタッフ用のシェアハウスとして、古民家を借りている。入居のときに必ず言うことがある。
「50:50(フィフティー、フィフティー)の関係なんてまずうまくいかない。60:60の関係でいこう」
疲れてしまって家事を分担できない日だってあるなかで、平等を求めすぎるとギクシャクしてしまうことがある。そんなときは、動ける人が動けばいいじゃない。あまりやり過ぎても疲れてしまうから、ちょっとだけ相手のために動く。無理しない程度に。その心遣いが、チームに潤いをもたらすと思っている。

「60:60の関係でいこう」はいい表現だなと(2回目)。ちょっとした心遣いの積み重ねが、チーム力を足し算から掛け算に変えると思いました。

「せめて」を積み重ねる

いろんなスタッフとつき合ってきて、とてつもない成長を遂げる人がいることに気づく。成長の因子はいくつもあると思うが、その一つに、良質な「自己否定能力」を持っていることがある気がする。 

自己否定を前向きに成長の燃料とすることができる人は、行動に「せめて」というセリフがつく。自分はわかっていないから「せめて」これだけは理解する。まだ仕事に慣れていないから「せめて」小分け作業だけはマスターする。この小さな「せめて」の積み重ねができる人は、信頼を獲得する。やがて新たな仕事を任されて、さらに成長するというスパイラルに入る。

仰る通りかと。来年の新卒研修で贈る言葉が決まりました(笑)

普通をたくさん重ねる

長男カケルが大学に進学するとき、友人が語りかけてくれた言葉がある。長男は法学部に行くことが決まっていた。「カケル君、法学部に行っても、司法試験に合格するような優秀な人になるだけが道じゃないよ。法律を一流とは言わないまでも、人から頼られるくらいわかっているのが大切。でも、そんな人は世の中にたくさんいるよね。英語が話せる人もたくさんいる。だけど、法律がわかって、英語が話せる人となると、一気に絞られる。もう一つフィルターがあると、ほとんど唯一の存在になれる。すべてが一流でなくてもいいんだよ」

「ミオちゃん。事務ができて、ミニトマトの栽培ができて、草刈り機が使える。マルチに穴を開けられて、肥料散布もできて、エンジン噴霧機も使える20代女子って、1万人に1人もいないと思うよ。胸張っていい。いろいろ身につけたな~。がんばった」と僕が言うと、「ふふふ」と彼女は照れ笑いした。
実際の仕事場に必要なのはこういう人なのだ。彼女が身につけたのは、一つ一つは普通のことかもしれない。しかし、この普通がたくさん重なると、とても魅力あふれる人材になる。

昔に読んだ『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』を思い出しました。他の人より少し得意なことが2〜3つあるだけで、十分な強みだし、個性ですよね。人材育成において意識したい考え方です。

というわけで

今年だけで3回読みました!組織マネジメントやチームビルディングに悩んでいる方にはおすすめです。

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