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新工場建設から学んだ5つのこと
2022年3月31日、奈良県五條市に念願の新工場が完成しました。
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大阪府東大阪市で創立してから65年。初の府外拠点となります。
このnoteは、家業の新工場建設プロジェクトを通じて、僕自身が得た5つの学びをまとめたものです。プロジェクト責任者、そして後継者の立場で感じたことをそのまま書きました。
自分の経験(失敗談)が、同じような立場や事業展開を検討されてるみなさまにとって、少しでも参考になれば幸いです。
5つの学び
①動かないと始まらない
「事業承継するまでに新工場の道筋はつけたい」
2019年5月に家業入社後、社長(父親)から数十回はこの言葉を聞きました。
家業は六角ボルトを主力とする中小ねじメーカーです。創立以来、東大阪市で事業を展開してきました。
しかし近年は、製造設備や社員の増加で工場内が手狭となり、生産キャパは限界を迎えていました。さらには工場の老朽化、近隣住宅からの騒音クレームなど、将来的な事業継続リスクも少しずつ顕在化。
新工場建設は重要な経営課題でした。
ところが、入社後しばらく経つと、あることに気づきます。
「経営課題なのに誰も動いていない」
正確には金融機関から不動産の紹介があれば見に行く程度で、こちらから積極的に探す動きはみられませんでした。
日常業務で手一杯の現場。思いはあるものの、高齢がゆえにフットワークの重い経営陣。
「動ける人」がいませんでした。
そして、2020年1月。年始挨拶で社長と出張中に、再び新工場建設への思いを聞きます。さすがにいてもたってもいられず、自分が探すことを決意。翌日、社長にその旨を伝えました。
とはいえ、工場を建てた経験もなれけば、これといったツテもありません。文字通りゼロからのスタートでした。
ただ、何も知らないからこそ、やることは明確でした。まずはインターネットで関西の工業団地を全件リストアップ。そこから1件1件、空き状況を問い合わせしました。
当時、僕と同じ島で仕事していた人からすると、「社長の息子がわけのわからない電話を始めた」と思われていたかもしれません。
でも最終的には、この問い合わせからご縁ができた工業団地に新工場を建設しました。建設決定までに紆余曲折ありましたが、あの時に動いてなければ何も始まらなかったことだけは断言できます。
思っているだけでは変わらない。動かないと始まらない。
強烈な原体験となりました。
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②反対意見と向き合う
新工場建設は会社にとって長年の課題でした。しかし、土地の候補が見つかり社内で検討を始めると、関係者によってかなりの温度差がありました。
チャンスを逃すまいと前のめりな人もいれば、明らかに後ろ向きな人もいる状況。
このため、立地条件や投資予算、建築レイアウトなど、事あるごとに意見がぶつかりました。
僕自身、反対意見のせいで思うように進まないことが、かなりのストレスでした。
しかし、今はむしろ感謝しています。反対意見のおかげで意思決定の精度が高まったからです。反対意見が「本当にこれでいいのか」と問い直すきっかけになりました。
改めて振り返ると、今回のような大きな意思決定は、勢いに任せて走り切るのではなく、途中立ち止まって冷静に考える時間が必要でした。
そういう意味でも、反対意見と向き合うことは必要なプロセスだったと思っています。
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③細部に宿るのは神ではなく悪魔
工事関係者との本格的な打合せは、2020年9月から始まりました。正直、打合せ前は不安より楽しみな気持ちでいっぱいでした。
しかし、いざ打合せが始まると、楽しむ余裕はすぐに消えました。ほぼ毎日、工事関係者と電話かメール。隔週の定例打合せでは、何かしらの意思決定を次々と求められました。
時間に追われる毎日。当初は懸念点がなくなるまで細かく確認していた内容も、ざっと目を通す程度で承認するようになっていました。
でも、こうした意思決定が決まってトラブルに。
「図面と実物のイメージが違う」
「そんな話は聞いていない」
「やっぱりレイアウトを変えたい」
時間が足りないのにかえって時間がかかった、なんてことはざらにありました。
『神は細部に宿る』と『悪魔は細部に宿る』
どちらも有名な格言です。細部をおろそかにするなという意味合いに変わりありません。
しかし僕にとっては、細部に宿るのは神ではなく悪魔だと痛感しました。
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④常に最悪の事態を想定する
社内のコンセンサスを得るのと同じくらい苦労したのが、金融機関からの融資承諾でした。申し込み時期に新型コロナウイルスが直撃したことで、状況が大きく変わりました。
さかのぼるとコロナ前は、どの金融機関も借りて借りての営業攻勢でした。なかには、積極投資をすすめるプレゼン資料まで持ってくる先も。
なのでコロナ禍とはいえ、建設計画がまとまり、正式に融資を申し込んだときは、すんなり承諾いただけると思っていました。
ところが、金融機関の態度はコロナ前から一変。頼りにしていたとある金融機関からは、先行きの不透明さを理由に、お断りとも受け取れるような厳しい融資条件を提示されました。
「いきなりスタンスが変わりすぎではないか」
「先行き不透明と言いつつ、売上予測の明確な根拠を求めるのは矛盾してる」
当時はやり場のない怒りを覚えました。
しかし、勝手に期待して、プランBやプランCの準備を怠ったことが最大の問題でした。
幸いにもメイン先の積極支援により事なきを得ましたが、この経験を通じて、常に最悪の事態を想定して動くことは新たな教訓となりました。
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⑤最後は「ヒト」
1人で動き始めてから完成するまでの2年間は、様々な問題にぶつかりました。
・土地の獲得競争
・建設計画のコンセンサス取得
・工事関係者との価格交渉
・金融機関との融資交渉
・人事異動の承諾
・施工中のトラブル対応
挙げればきりがないほどハードシングスな毎日でした。
でも、これを乗り切れたのは、関係者一人ひとりの強い責任感と積極的な協力のおかげにほかなりません。
私たちの要望に全力で応えてくださった工事関係者のみなさま
投資の必要性をご理解いただき、ご支援くださった金融機関のみなさま
建設にあたりアドバイスをくださった取引先のみなさま
そしてなにより、最後まで伴走してくれた社員のみなさま
心から感謝すると同時に、事業(プロジェクト)の成否を決めるのは「ヒト」だと改めて実感しました。
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これからの話
というわけで、「新工場建設から学んだ5つのこと」の紹介でした。
振り返りながら、いろんな感情が込み上げました。それだけ思い入れが強いプロジェクトでした。
しかし、新工場建設がゴールではありません。むしろ、これからが本番です。
いまは本格稼働に向けて絶賛準備中です。あれもないこれもないと毎日てんやわんやしています。たぶん近い将来、もっと大変な局面を迎えるに違いありません。
でも、一歩ずつ前進している実感だけはあります。現状維持のまま何もしない閉塞感とくらべたら、いまのほうが100倍充実しています。
何をもって成功なのかは正直わかりません。しかし、数年後に「あのときの決断は間違ってなかった」と胸を張って言えることが当面の目標です。
数年後の答え合わせを楽しみに、今日もやりきっていきます!
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