「来るもの拒まず」の採用を改善した話
家業のねじメーカーに入社してから、丸4年が経ちました。ほんと早いです。後継者という立場で、やるべきこと、できることを考え、取り組んできました。
こうした中で、注力したことの1つが「採用」です。
「来るもの拒まず」の採用を見直し、直近3年間で新卒6名が入社しました。いまも全員が配属先で頑張ってくれています。
今回は入社当時の状況を振り返りながら、採用改善に向けた取り組みをまとめてみました。
当時の状況
僕は前職で人材紹介事業を担当し、自社の採用にも面接官として携わっていました。このため、入社後まもなく、採用活動に参加するよう社長(父親)から指示を受けます。
当社は新卒採用がメインです。引退が迫るベテラン社員からの技術継承を目的に、2011年以降は定期採用に取り組んでいます。
だから、採用活動に参加する前は、それなりのノウハウを持っていると思っていました。どんな工夫をしているのか楽しみだったくらいです。
しかし、実態は想像と違いました。
期待していたノウハウも工夫もなかったんです。応募が少なく「来るもの拒まず」で採用した結果、ミスマッチによる早期退職が続いていました。
当時の状況をまとめると以下の通りです。
内情を知れば知るほど、「よくこれで採用できていたな」と。中小メーカーの採用事情を身をもって知りました。
改善に向けた取り組み
ここからは、採用改善に向けた取り組みを紹介します。
完全な主観ですが、取り組みごとの改善効果を◎、○、△の3段階で評価しています。
なお、当社の採用チームは、実務担当者1名+僕の2名体制です。専任担当者はいません。
①マイナビへの求人掲載(効果:◎)
知名度の低い中小メーカーが、お金をかけずに応募を集めるのは時間も労力もかかります。なによりノウハウがありません。なので、無料にこだわるのはやめて、有料のマイナビ(新卒)に求人掲載しました。
マイナビのメリットは、一定数の応募が見込めること、会社の信用力が上がることの2つです。当社の場合は、マシンオペレーター職の募集で毎年20〜30名の説明会参加を獲得できています。また、マイナビに求人掲載していると、候補者目線では体力(資本)のある会社に見えるそうです。
一方で、デメリットは求人が埋もれることです。マイナビは学生の登録数が多いからこそ、利用企業数も多いです。上場企業などの有名企業と横並びで掲載されます。採用人数や募集職種、地域によっては費用対効果が見合わないかもしれません。
②専門学校への新規訪問(効果:△)
マイナビへの求人掲載と並行して、採用実績のない専門学校に訪問を行いました。コロナ禍を理由に断られることもありましたが、複数の学校と新たに接点をつくれました。
学校訪問のメリットは、説明資料や求人票に対するフィードバックをもらえることです。当社も、「こういう手当や情報があれば学生に勧めやすい」といった意見をもらえたことで、求人内容の見直しにつながりました。
その代表例が「地域手当」です。近隣企業の手当に関する情報共有をきっかけに導入を決めました。
新規訪問した学校経由の採用実績はまだありませんが、いつかのご縁を期待したいです。
③Instagram、noteの開設(効果:◎)
新たな発信手段として、Instagramとnoteを開設しました。
Instagramでは、社内の日常や製品活用事例、メディア掲載などのライトな情報を発信しています。
一方、noteでは、社員インタビューや新卒1年目の働き方、福利厚生の裏側など、ホームページや求人票では伝えきれない一歩踏み込んだ情報を発信しています。
【Instagram】
【note】
正直、運用コストはかかります(特にnote)。当社の場合は、Instagramが100投稿、noteが10投稿を超えたあたりから、候補者にも認知されるようになりました。
反応がない中で投稿を続けることは大変でしたが、いまでは採用広報の強力な武器です。
④説明会資料のリニューアル(効果:◎)
候補者が理解しづらい技術力のアピールをやめて、製品の活用事例や会社データを中心とした説明会資料にリニューアルしました。文字を減らす代わりに、画像やグラフを増やしています。
ちょっとした改善ですが、候補者の反応は明らかに変わりました。伝えたいことではなく、知りたいことを届ける重要性を感じています。
説明会資料は候補者の反応や内定者の意見を踏まえながら、今後もアップデートしていく予定です。
⑤採用管理ツールの導入(効果:△)
採用活動に参加して驚いたことの1つが、採用管理です。候補者がどの選考プロセスにいるか、どんな理由で不採用や辞退になったかを、確認する方法がなかったからです。
この状況を知り、kintoneで採用管理ツールを作成しました。関係者全員が選考状況をいつでも確認できます。候補者一人ひとりへの対応スピードは上がり、連絡漏れや伝達ミスも減らせています。
最近は採用データの蓄積が進み、年度ごとの振り返りにも活用しています。
⑥面接フローの見直し(効果:○)
僕の入社当時は、役員と現場管理職が一緒に面接を行っていました。しかも、一次面接と最終面接の面接官は、ほとんど同じメンバーです。社長がいるか・いないかの違いだけでした。
ただ、この組み合わせだと、役員と現場管理職で意見が割れた場合、現場管理職は主張しづらくなります。なので、各選考の面接官は、一次面接を現場管理職と採用担当者、最終面接を役員に変更しました。
新入社員を受け入れる現場側も納得したうえで、「関係者全員で決めた」というコンセンサスを得たかったからです。
同時に5つの評価項目もつくりました。人が評価する以上はどうしても主観(好き嫌い)が入ります。基準を設けることで、多少なりとも平準化する狙いです。
⑦社員面談の導入(効果:◎)
状況に応じて、選考途中に社員面談を組むフローを導入しました。候補者の意向上げやミスマッチ防止が狙いです。
希望職種または出身校が同じ社員に協力をお願いしています。
面談の流れは、候補者の質問を社員が答えるQ&A方式です。採用担当者から社員に対して、「こういう話をしてほしい」といった依頼はしません。聞こえがいい話ではなく、率直な思いを伝えてほしいからです。
社員面談は候補者に好評です。入社の決め手になったケースもあります。
今後は、事前に面談者のnoteを送る取り組みも始める予定です。
⑧推薦図書のプレゼント(効果:△)
内定者フォロー施策として、推薦図書3冊をプレゼントしています。コロナ禍で外出しづらい時期に、新たに始めました。
推薦図書は以下の3冊です。自己啓発書、業界入門書、資格取得テキストを1冊ずつ選んでいます。
・入社1年目の教科書
・トコトンやさしいねじの本
・最新QC検定4級テキスト&問題集
読書の強制はしていませんが、社会人1年目に向けての予習になればと思っています。
⑨社内報の配付(効果:△)
もう1つの内定者フォロー施策として、社内報を毎月配付しています。少しでも会社の近況や社内の雰囲気を知ってもらいたいからです。
また、社内報は内定者本人だけでなく、ご家族にも読んでいただけるよう、あえて紙の印刷物を郵送しています。ご家族の協力あっての仕事です。社内報を通じて、当社に対する理解を深めていただけることを願っています。
⑩フォロー面談の実施(効果:○)
入社後のフォロー施策として、採用担当者が新入社員に年4回(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年)の面談を行っています。直属の上司ではない第三者の立場から、不満や不安、疑問を解消する狙いです。
当社は以下noteを参考に、面談前のアンケート記入をお願いしています。回答内容に沿った面談のほうが、会話もスムーズです。少なくとも、「最近どう?」といったコミュニケーションはなくなりました。
フォロー面談は本人の近況だけでなく、まわりの様子やチームの雰囲気も知れる貴重な時間です。
⑪年間休日数の増加(効果:◎) ※追記分
2019~2023年の4年間で、年間休日数を8日増やしました。年次有給休暇の一斉取得5日を含めた2023年の年間休日数は118日です。決して自慢できるレベルではありませんが世間並みに近づいてきました。
休日数の増加は、社長の強い意向です。製造業にとって稼働時間が減ることのリスクはありますが、今後の採用市場や働き方改革を踏まえた上で、積極的に推進しています。当面の目標は年間休日120日です。
直近3年間で入社した社員にヒアリングすると、「年間休日数、休みの取りやすさ」を会社を選ぶポイントの1つに挙げる社員も多く、採用と定着の両面で効果は高いと考えています。
最後に
たくさん紹介しましたが、目新しいものは1つもありません。人材獲得競争が激しい他業界ではスタンダードな取り組みばかりです。
当社に限って言えば、「中小メーカーは不人気だから採用が難しい」という固定観念が強く、明らかに努力不足でした。
あらゆる角度から情報を集め、小さな改善を積み重ね、ようやく定期採用に向けた土台ができあがりつつあります。
成功と呼ぶには程遠いですが、
「自分の仲間は、自分で探せ」
という社長からの教えを胸に、今年度の採用も頑張っていきます。
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