171回芥川賞をガチで予想する
しばらくずーっとハマっている趣味「芥川賞受賞作を予想する」。
今回も全作読めたので予想してみようかと思います!!
今回も5作品すべて面白くって、幸せでした🤤
まずは各書の講評!最後に受賞予想を載せています!
*読了した順です。他意はありません。
① バリ山行 / 松永K三蔵
〈講評〉
バリ山行=バリエーション山行。バリエーション山行とは、正規ルートでなく、道なき道を開拓する登山のことを言います。この物語は「人生とは登山である」みたいな話ではなく、藪をわけいるその一歩一歩こそがリアル、みたいな展開。登山描写も、その一歩ずつを描くような丁寧さで、自分も自然の中にいる気がしてきます。主人公の曖昧模糊な人生観や不安感が、バリ山行によって開いていく様はザ・純文学の様相。読者にアツいものを残します。野球で言えばストレートオンリーの直球勝負。はたしてどのように評されるか楽しみです。
② 海岸通り / 坂崎かおる
〈講評〉
単純に好きでした。介護施設の清掃員として働く主人公が、ホンモノの一歩を踏み出すまでの話。主人公の一人称の語りが軽妙で、最初はその文体に違和感がありました。しかし、「」で語られる口調は案外まともで、それが主人公の内と外の不一致を感じさせます。ニセモノの「海岸通り」行きのバス停と、ラストとの対比が見事でニヤリ。少しずつ主人公のキャラクターをつかませるミステリチックな構成も良く、読みながら何度かハッとさせられました。それでも最後まで完全には主人公を掌握させません。それがどう捉えられるのか、評が気になります。謎解きみたいで私は好きです。
③ いなくなくならなくならないで / 向坂くじら
〈講評〉
4年半前に死んだはずの親友が、いきなり現れて主人公と同居する話。一見、単なる女性同士の友情を描いた小説のように思えますが、いったん「不在」となった者が、また「顕在」してしまった、という点が新しい切り口だと思いました。好きだけど、嫌い。いてほしいけど、いなくなってもほしい。誰でも一度は感じたことのあるこの感情を、しつこく、ねちっこく書いていて、読後はタイトルの秀悦さに溜め息。大切なはずなのに、いなくなってほしい時というのは、嫌になるくらい、その人が今の自分を映してしまうからなんですよね。向坂さんは、詩人でもあられるからかジャブ、ストレート、フックの使い分けが上手で、それでいてどのパンチも芯で分かる、みたいな感じの文章でした。これが処女作とは思えないです。内容の深さについては賛否あり。個人的にはすごく好きです。
④ サンショウウオの四十九日 / 朝比奈秋
〈講評〉
胎児内胎児であった父を親に持つ、結合双生児の2人の女性を描いた小説。もう設定だけでお腹が膨れそうですが、これを描き切った朝比奈さんはすごい。物語は、伯父(つまり父の兄)の死をきっかけに、2人にとっての「死とは」「意識とは」という話に発展していきます。結合双生児であるからこそ、感じられる、見ることができる世界を文章で端的に示していたと思います。テーマ性は抜群。争点は、この壮大な設定をうまく収束させられているか、著者の言いたいことありきで設定を持ち込んでいないか、というところになりそうです。
⑤ 転の声 / 尾崎世界観
〈講評〉
「俺を転売してくれませんか?」と、転売ヤーに歌手自身が転売をもちかける話。現役のバンドボーカルでもある尾崎世界観さん。著作を初めて読みましたが、単純に面白かったです。ほんまの歌手が、歌手から転売を依頼する小説なんて書いて大丈夫⁈ と最初は思いました。しかし、転売がいくところまでいって本末転倒になる様を見て、「転売を皮肉りたかったんだな」と読解しました。定価にさらに価値をプラスして売買される「転売」。もはや何の価値にプラスのお金を払っているのか、払う側もわからなくなっているのでは? みたいな問題提起を感じます。この小説は、現実とは違う世界線で描かれる、ディストピアみたいな小説だと思っているのですが、ラストに向けた大胆な展開がどのように評価されるのかが気になります。
(受賞予想)
私の受賞予想はこちら!
バリ山行(△)
海岸通り(△)
いなくなくならなくならないで(◯)
サンショウウオの四十九日(◎)
転の声(△)
です!!
いや、今回もほんとに全作面白すぎた……でも今回は特に拮抗している気がする。たぶん全作「あいつがいなければ芥川賞だったのに…」みたいな作品群だったと思います。
その中でもやっぱり『サンショウウオの四十九日』はすごかった!!
テーマ性に対しての構成と技巧が認められれば本作かと……!
次点の『いなくなくならなくならないで』は単純に好き。笑
大穴『転の声』がきたら、文壇が盛り上がりそう…!
選評会と発表は本日7/17(水)!
楽しみましょう〜!
それでは!
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