間違いだらけの顧客中心主義(11)〜「新規顧客獲得は独立したチームで行うべきか? 前半」
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皆さんこんにちは。通販エキスパート協会事務局です。
当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。
第10回でZ世代というカテゴライズに関して懐疑的なお話をしましたが、マーケティングにおいて世代論が良く登場する背景には、「いかに新規顧客を獲得するか?」という永遠のテーマがあるのは確かです。世代特性を理解することで、すこしでも彼(彼女)達に刺さるプロモーションが出来たら、というわけです。
そこで今回は、顧客戦略立案後の次のステップとして新規顧客獲得について考えてみたいと思います。とりわけ、最近はDX流行りで組織変革の話題も多いですから組織論的なお話も織り交ぜていきます。
組織というものは、ある特定の目的を効率的、効果的に遂行させるために作られます。商品企画部であれば商品企画機能を、オンラインストア事業部であればオンラインストア事業を効率的、効果的にに遂行するためにあるわけです。
さて、それでは新規顧客獲得チームについてはどうでしょう。新規顧客獲得という機能に特化したチームがあれば、獲得効率を向上させるための様々な施策の仮説立案、テスト、検証、展開あるいは次の仮説構築などのサイクルを高速に回せそうです。
一方で「部分最適」と「全体最適」という言葉を聞いたことがあると思います。ある特定の部門、あるいは業務プロセスで最適と思われる改善活動が、必ずしも組織全体の最適化に繋がらない、という意味で使われます。
もし、新規顧客獲得チームが部分最適に陥り、全体最適に繋がっていないとしたら、それは具体的にどのようなことが起きている場合でしょうか?
この場合「全体最適とは何を指しているか?」ですが、顧客中心主義における全体最適とは、顧客資産価値(全保有顧客のLTV合計)が最大化していることを指します。一方、部分最適とは新規顧客獲得数やCPO、CACなどの獲得効率の最大化です。
一見、より多くの新規顧客がより安いコストで獲得できれば、顧客資産価値の最大化に大いに貢献しそうです。しかし、これがそうならない可能性があります。
以下のグラフを見て下さい。利益を縦軸、継続期間を横軸に置き、
獲得後の利益の積み上げで累積利益が黒字化するポイントを示したものです。通常、新規顧客獲得時は、獲得コストに加えて初回商品の原価がかかっており、ECであれば発送コストもかかりますので、何回か購入が続かないと赤字です。
このグラフでは、Beforeの黒いラインは施策実施前の実績だとします。ここで、新規顧客獲得チームが頑張って、様々な獲得手法のテストを重ねた結果、よりCPOの低い獲得手法を見つけたとします。それがAfterのブルーのラインです。
もし、このブルーのラインの傾き=獲得後のパフォーマンスが黒いラインと一緒なら、より少ない赤字でスタートしますから、損益分岐点にまでより早く到達することになります。しかし、グラフのように獲得後のパフォーマンスが悪く、継続率も単価も低い状態が続くと、利益の積み上げスピードが出ず、ラインは角度がつかず寝てしまいます。つまり低CPOだが低LTVな集団ということになります。
こうなると、この新規獲得顧客の集団は顧客資産価値(全保有顧客のLTV合計)の最大化には貢献していないことになります。
このようなことが実際に起きているかどうか、ぜひ自社顧客データで確認してみて下さい。簡易的に確認する方法として、初回受注時に紐付けているはずのプロモーションコードで顧客をグルーピングし、そのグループ全体の12ヶ月後の累積売上(RFMの「M」)を出し、人数で割った平均値=「12ヶ月後一人あたり累積売上」をプロモーションごとに比較してみて下さい。
実際に私が以前勤務していた会社で調べたときは、この数値に獲得プロモーション間で最大数倍の開きが有りました。LTVで計算すると万単位で違って来るレベルです。こうなるとCPOで数千円効率化しても意味が無く、逆に有害だったことになります。
(以上、次回に続く)