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間違いだらけの顧客中心主義(17)〜メディア/チャネル統合の考え方

皆さんこんにちは。通販エキスパート協会事務局です。

当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。

前回は「3つの価値要素」とそれを特定の重要顧客セグメントでどう具体化するかについてお話をしました。今回は創造した価値を「体験」として提供するメディアやチャネルについてお話したいと思います。

顧客中心主義については、下記の構造図をよくお見せしていますが、この中で「メディア/チャネル統合」に該当する部分が今回のテーマです。

顧客中心主義の戦略構造

まず、なぜメディア/チャネル統合の考え方が重要かというと、通販では従来から下記のような指摘がなされて来ました。

1.一般に、企業がチャネルを増やす動機は新規顧客の獲得、既存顧客の
  生涯価値向上、ブランドイメージの向上である
2.一般に、複数のチャネルを利用する顧客は、単一チャネル利用顧客より
  も優良顧客である
3.利用チャネルを購入プロセスの中で自由に選択できることは顧客満足度
  を向上させる

1つ目は、例えば化粧品やアパレルの通販を例に考えてみましょう。最初はカタログ通販としてスタートした会社も、オンラインストアを持つことが当たり前になっています。それは、2000年代以降の家庭におけるインターネット環境の充実、そして2010年代以降はスマホの普及によって、オンラインストアで商品を購入する、という生活様式がすっかり定着したことによります。

さらに、意外に思われるかもしれませんが、オンラインストア整備と同時に実店舗展開を進めた通販企業も有ります。FANCL、ORBIS、DHC、DR.CI:LABO、DoCLASSEなどです。実店舗は経営効率の面ではカタログ通販やオンラインストアに劣ります。それなのになぜ上述の通販各社は実店舗展開を行っているかというと、それは通販チャネルでは獲得できない新規顧客へのアプローチ、通販チャネルの既存顧客の体験向上による生涯価値の向上、実店舗があることによるブランドイメージの向上です。

この、カタログ(コールセンター受注)、オンラインストア、店舗というチャネルの組合わせは、通販由来ではない有名ブランドと戦わなければならない化粧品、アパレル通販にとっては各チャネルのそれぞれの強みを活かした統合的な顧客体験の提供が競争力の源になります。

次に2つ目の指摘ですが、これは業種を問わず言われていることです。実際、私がかつて勤務していた通販会社でも、年間購入金額が最も高いのは、カタログ通販、オンラインストア、実店舗をすべて利用している顧客層で、逆に最も年間購入金額の低いのは実店舗のみの利用顧客でした。

ここから伺えることは、各チャネルが事業部として独立して、それぞれの部門計画で動くより、チャネル統合型の顧客体験設計をまず行い、それに則って各チャネルがまさにONEチームとして動く、ということが求められています。この点につき、FANCLやORBISの社長インタビューがメディアでも取上げられているのでご覧になってみて下さい。

次に3つ目の指摘ですが、これはスマホの浸透を背景に、オムニチャネルOMOに代表される、「融合」あるいは「統合」といったキーワードでチャネル語られることが増えて来ました。上図で「統合された顧客体験」とあるのは、各チャネルを顧客が自由に選び、どのチャネルを訪れても顧客データや在庫データがきちんと連動して顧客への価値提供を支えている、そういう前提があっての話です。

オムニチャネルという言葉が出てからもう10年以上経ちますが、「なぜオムニチャネルが失敗するのか?」という話題もよく見かけるようになりました。共通する理由は、オムニチャネルを単なる「チャネルの追加」、「オンライン、オフラインチャネルの相互送客」とだけ捉え、「より豊かな顧客体験の実現のためには、各チャネルの壁をどうなくして統合・融合するか」という観点が抜けていることが挙げられます。

いかがでしょうか?メディア・チャネル統合は、単なるマーケ戦略だけでなく、組織編成や業績評価の問題も絡んだ複雑な問題なのです。

次回はある通販企業のメディア・チャネル統合戦略の失敗を取上げ、チャネル/メディア統合と顧客体験統合の関係について掘り下げたいと思います。

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