#1 ダイエットの向こう側
「す、す、好きです。付き合ってくださいっ！」
残業が終わり会社の外に出るとすでに日は暮れていた。街はネクタイを緩めたサラリーマンが居酒屋に吸い込まれていく。炭で焼いた焼き鳥の匂いが私を呼んでいる。しかし、今日は何だか疲れていたので居酒屋を背中に家路へ急いだ。
住んでいるマンション隣の空き地に、出勤時にはなかったモダン調のお洒落なプレハブが奥の隅っこに立っていた。
体は疲れていたが好奇心には勝てずステンレス製のドアノブを右に回しお店の中に入った。
「こんばんは」
ギゃーーーーーー
心臓が2回飛び出た。薄暗い店内はカウンターに4、5席は座れるスペースがあるのに1席しかないバーだった。大理石で出来たバーカウンターの向こうに、年齢は45歳ぐらいで映画俳優のようなダンディな男性マスターが立っていた。
「大声出してすいません。ここはバーですか。」
「ええ。」
「あ、、、そ、そうですか。すいません。また来ます。」
バーを後にし急いで家へ帰った。
その日は疲れすぎていたのか、シャワーを浴びたまでは記憶にあるが起きると朝だった。
週末、あのバーに行こう。。。
マスター：いらっしゃいませ。
さちえ：先日はすいません。
マスター：いいえ。お気になさらずに。お仕事は忙しいのですか。
さちえ：はい、今繁忙期で。
マスター：先日お顔を見た時、疲れてるのかなと感じました。繁忙期なんですね。
さちえ：つかぬ事をお聞きしますが、何で席は一つだけなんですか。
マスター：ここはいつからか相談所になってましてね。ふふふっ。
さちえ：。。。ん？私、場違いですか。
マスター：まぁ、こちらをお茶でも飲んで下さい。
さちえ：え、あ、ぁ。。はい。頂きます。
マスター：チキンの唐揚げは出てきませんよ。
さちえ：え。(何で私が唐揚げ好きってわかるの)
マスター：美味しい物は糖と脂肪で出来ている。ってね。
さちえ：そうなんです。私は炭水化物が好きで揚げ物好きでアイスクリームは常にストックがあります。全部糖と脂肪が含まれています（笑）
だからこんな体型なんです。
マスター：学生時代と比べて体型は大分変わりましたか。
さちえ：10kg増です。だから彼氏もいません。本当は痩せて結婚したいです！！！
私の名前は宜野座さちえ32歳。
小学生のときからポッチャリ体型だった。高校生の時初めて好きな人ができたけど、自分の体型では告った所で振られるのが目に見えてたので胸に仕舞い込んだ。
そんな苦い高校時代を送ったので、大学デビューをしようと受験が終わったその日から、炭水化物抜きと運動を始めた。
その結果、
失敗どころか元体重を上回る事になる。そんな中、あれは忘れもしない大学2年のクリスマスシーズン。初めて告白した。告白した相手は仲の良いグループの1人で、外見はジャニーズ系それにユーモアもあるので女子にも人気がある男の子だった。
「す、す、好きです。付き合ってくださいっ！」
結果は惨敗。自分に自信が持てない私がなぜ勇気を振り絞って告白できたのか。
それは悪魔の囁きだった。
「俺が好きなタイプは料理が得意な人。見た目はまったく関係ない。」
友人宅で仲の良い7人で飲み会をした時の話し。酔いも周り話しネタも尽きたところで、それぞれの好きなタイプを言おうとなって、私の好きな人が言った言葉がそれだった。聞いた瞬間心では両手の親指を立てたググググググを100回連発していた。
なぜなら私は料理が得意だからだ。さらに、その好きな男の子がタイプを言った後に、「あれ、さちえ料理好き出し2人付き合っちゃいなよ」とヤジられ2人顔を赤くした。これは絶対イケると確信が持てた。
絶対に、絶対に、
うまくいくはずだった。
その話には続きがある。
後日、その男の子に彼女ができた。付き合った子はなんと「包丁持ったことないんですぅ」って言うぐらいのぶりっ子で、料理の”り”の字もない女子だった。
あの言葉を信じた私って。。。
マスター：結婚ですか。なぜ結婚がしたいのですか。
さちえ：年齢的にもそろそろしないとまずいかなと。
マスター：結婚が目的ならお見合いはいかがですか。お互いの目的が同じだか、、
さちえはマスターの話を遮った。
さちえ：それは最後の手段です!!!やっぱり結婚は恋愛で、、、
マスター：ほう。では恋愛で結婚する方法はお持ちですか。
さちえ：方法と言われても。。。まぁタイミングというか、、、
マスター：ですね。こればっかりは自分でどうにもできませんね。合コンやクラブなどに出会いを求めにいく人もいますが、いかがですか。
さちえ：30過ぎた私には無理ですね。場違いにも程がありますね。私が彼氏や結婚相手が見つからないのは、この体型だからです。
マスター：見た目は関係ありませんよ。もしあなたの言っている事が正しければ、あなたと同じ体型の人は全員独身という事になりますね。
さちえ：そ、それは、そうですが、、、でも綺麗な人は結婚確率は高いですよね。
マスター：それはどうでしょうか。綺麗の定義も主観でしかありません。あなたが思う綺麗な人について聞いてもいいですか。
さちえ：スタイルが良く顔も綺麗な人です。よく中身が大事だよって言う人いますが、それは大概容姿のいい人が言うので信じられません。
マスター：そうですか。あなたの考えが分かりました。ではお聞きしますね。これからどうしたいですか。
さちえ：ダイエットして綺麗になって結婚したいです。
マスター：では実行するだけですね。
さちえ：。。。。。そうですが。。
マスター：ダイエットの方法が分からないのですか？
さちえ：い、いやそうではなく。ことごとく失敗したんです。私だって行動はしました。糖質制限、毎日休まずウォーキング。ファスティングなど大体のダイエット法はやりました。
マスター：ふふふ。行動力がありますね。科学的に立証されているダイエット法は必ず効果がありますよ。
あっ、今日は次のお客さんが来る時間なので。ここまでにしておきましょう。
ただ飲みに来たつもりだったけど、相談しに行ったみたいなっちゃったなぁ〜。それはマスターの話術なのか。
帰り際にマスターから手紙を渡された。ラブレターか。ふふふ。そんなはずはないか。
さちえ：指示の通り一週間30分早起きして散歩しました。
マスター：素直でいいですね。
さちえ：何か意味があるんですよね。
マスター：1週間どうでしたか。
さちえ：どうって言われましても。。。ただ早起きしたぐらいです。
マスター：早起きはきついですか。
さちえ：はい。朝は出来るだけ寝たい派なので。あっ、強いて言えば寝る時間が早くなりました。正確には眠気がきて起きられないです。
マスター：早く起きる為に早く寝る。良いサイクルですね。きっといいことありますよ。
さちえ：いい事って何ですか。具体的に教えて下さい。
マスター：もうすでに、、、その内分かりますよ。ふふふ。
さちえ：。。。目的のない早起きはモチベーションが維持できません。
マスター：今までの生活スタイルをしても変わってこなかったのだから、違うスタイルを試す価値があるのでは。
さちえ：確かにそうですが、、、
マスター：30分早起きは定着してきましたね。来週からは月水金はウォーキング、火木はやりたい事の準備時間にして下さい。
さちえ：え、やりたい事？そう言われても。。。
私の職業は安定の公務員。世の中ではホワイト企業はロボットに置き換わると言われているが今のところ大丈夫。
公務員を選んだ理由は、安定している事はもちろん、親への安心材料。大学まで行かせてもらってるので、気になる企業はあったものの、立ち上げベンチャー企業で働くという選択肢はかなった。
さちえ：2週間頑張りましたっ！
マスター：それはそれは。
さちえ：散歩がない火曜日と木曜日は、英語の勉強時間にあてました。
マスター：ほ〜う。英語ですか。外国に行く予定でもあるのですか。
さちえ：実は昔から海外で働きたいという思いはあったのですが、封印していました。
マスター：私は応援しますよ。やりたいことに夢中になっている人は輝きますからね。では来月からはこちらおこなって下さい。
さちえ：あ、はい。月水筋トレ、、、筋トレが始まるんですね。
マスター：今のあなたならきっと続けられるメニューです。
さちえ：分かりました。頑張ってみます。
いつの間にかマスターのワールドに引き込まれていた。
出社ギリギリまで眠りたい派だった私が、今では早起きして運動したり勉強したりなんて、自分でも驚いている。
さらに英語も勉強出来て毎日充実している気がしていた矢先。。。
異動を告げられた。
2年後辺りの異動だと思っていたので寝耳に水だった。独身というのが決めてだったと聞いた。それを聞いて怒りと情けなさの感情がDNAの二重らせんのように絡まった。
異動を拒否する事が出来ない構造に大きな違和感を持ち始めた。
さちえ：マスター。聞いて下さい。異動になりました。
マスター：ほーう。そうですか。遠くにですか。
さちえ：車で1時間程離れた場所です。なのでここに来れるのは今日が最後です。
マスター：急な異動は大変ですね。私とのやりとりはオンラインでやれば大丈夫ですよ。
さちえ：あ、そーか。マスター天才！メニューをやるようになってから毎日がワクワクするようになったんです！
マスター：それはとても良い事ですね。ではまたオンラインで！
ここでマスターから頂いた私のメニューの一部を紹介します。
・散歩
・腸腰筋伸ばし
・肩甲骨回し
・ワイドスクワット
・ブルガリアンスクワット
最初の1ヶ月、行ったメニューはたったこれだけ。全部やっても30分で終わるメニューだったので物足りなさがあった。
ダイエット常連の私からすると、これでは何の結果も出るはずがないと確信めいていたけど1ヶ月で3kgも落ちたのだ。3kgも。。。
さらに、今の生活リズムになってから就寝が早くなったので毎日の夜の楽しみ、アイスクリームを食べなくなった。そして会社帰りのコンビニも寄らなくなったのでお菓子類なども買わなくなっていた。
さちえ：なんか画面越しだと変な感じがしますね。
マスター：すぐ慣れますよ。
さちえ：来月TOIECの試験を受けます。今の英語の実力が知りたくて。
マスター：そうですか。実力が発揮できるといいですね。
さちえ：あ、質問なんですが、お菓子類は食べない方がいいですか。たまにアイスクリームが食べたくなります。
マスター：食べても大丈夫ですよ。ダイエットで成功するには、ダイエットをしないこと。
さちえ：？？？どういう事ですか。
マスター：ダイエットが成功しない人って、ダイエットを夏のお祭りのように一つのイベントとして捉えています。
さちえ：それのどこが悪いんでしょうか。
マスター：では夏が過ぎ冬になったらどうでしょう。
さちえ：夏祭りが終わらないようにしたらいいと思います。ダイエットで目標達成しても続ければいいだけですよね。
マスター：そうです。おっしゃる通り。続ければいいんです。
さちえ：分かってますよ。続ければいいってことは。。。
マスター：続かないのはあなたのせいではありませんよ。
さちえ：違うんですか。いつも今度こそ絶対痩せるやると意気込んでジョギングを始めるんですが、2週間ぐらいすると面倒くさくなっ辞めちゃうんです。
マスター：みなさん同じですよ。年始宣言で「今年こそ5kg痩せる」と達筆な字で書きますね。言葉悪いですが、成功した人を見た事がありません。
さちえ：それ私です。あ、私のせいではないと言われたのが気になります。
マスター：コンビニに寄らなくなったら痩せましたよね。それはなぜでしょうか。
さちえ:それは、、お菓子を買わなくなったからですか。
マスター：正解です。感が鋭いですね。今の体型はすべて食べた物の表現体です。コンビニには専門店顔負けのケーキなど、魅力的な商品がこれでもかと陳列されていますね。だからついつい買ってしまう。
これはあなたが買いたいと思うような味付けになっていて、さらに手に取りやすいように陳列されています。
だからあなたが買いたいと思う前にカゴに入っているのです。コンビニの商品開発者さん達の勝利です。
さらに追い討ちをかけます。
糖質オフなのに甘いデザート、低カロリー弁当などと健康的な商品でさらにあなたの心に呼びかけます。
いかがですか。心辺りありますか。
ジョギングが続かないのも同じです。24時間面白い映画やドラマが見れるNetflix、見ないと落ちつかないSNSなど、ダイエッターがやらない理由を作るための娯楽が世の中には溢れています。
さちえ：本当そう思います。マスターはどうなんですか。
マスター：コンビニは支払いの為に利用するぐらいで、Netflixはみないですね。他に楽しみがたくさんあるので今の私には必要ありません。
さちえ：へーそうなんですね。私も今は夜起きれないので見ていませんが。でもコンビニの誘惑は本当にその通りです。寄ったら必ずお菓子買ってしまいますもん。
マスター：コンビニに寄っても余計な物を買わなかった時は、商品開発者に勝ったぜとガッツポーズをして下さい。
それは全く共感出来なかった。。
さちえ：質問です。私今のまま続ければ10kg痩せれますか。
マスター：質問に質問を返して申し訳ないですが、今の生活習慣を一生続けられますか。
さちえ：い、一生早起きですか。おやつもセーブ。。。できるかなぁ
マスター：一生続けられるなら10kg痩せることは可能ですよ。
それは異動した場所で起こった。
同じ部署にとても気の合う仲間ができた。彼女の名前は山田しほ。5つ年下だけど音楽やマンガの趣味が共通していた。
ある時ダイエット話の流れでマスターの話をした。すると、「私もそのメニューやってみたい」としほが言ってきたので私が行っているメニュー用紙をコピーして渡した。
「一緒にやってもいいですか」
「いいよ。明日からだけどいい？」
同じ社宅マンションなので一緒にメニューを行う事は可能だった。毎朝ウォーキングをやった後はそれぞれの部屋で筋トレを行う。そんな流れが2週間経過辺りからしほが寝坊で休みがちになってきた。
そして、
それにつられてか私も寝坊するようになった。
さちえ：マスターすいません。始めて1週間寝坊で起きられませんでした。
マスター： そうでしたか。友人と一緒にやったりしましたか。
ドキッ！
何でマスター分かるんだろう。
さちえ：はい。実は気の合う職場仲間が出来まして、どうしてもマスターのメニューを一緒にやりたいと言ってきたので、、、
マスター：運動を習慣化するには３つの条件があります。
・時間、曜日を固定する
・場所は変えない
・1人で行う
さちえ： あ、最後の1人で行うができてませんでした。なぜダメなんですか。
マスター：今回寝坊した原因は相手方の遅刻から始まってませんか。運動が習慣化している人と始めるのはいいですが、始めたばっかりの人同志だて片方が休むとつられます。一緒にやった方がモチベーションが続くと言う方もいらっしゃるが、運動を習慣化にするのにモチベーションは入りません。
さちえ： えっ、そうなんですか。
マスター：モチベーションの話は後日お話し致します。明日からまたメニューを続けて下さい。このメニューはあなたにしか合わないメニューなので、あなた以外の人がやっても効果は得られません。
マスターと話しをして始めて凹んだ。また1からやり直しと思うと気力がでてこなかった。
でも思い返せばダイエットした時と同じ感情だった。最初は張り切ってジムに入会し毎日ハードに運動して食事も制限した。しかし、頑張った分が体重に全然反映されなくてだんだん気力が失われていった。
そこから気力を取り戻す事なくいつの間にか辞める。そんなダイエットを少なくても4、5回経験していた。
今はマスターの為に辞めるわけにいかないというのが本音。こんな私に真剣に向き合って考えているのだから。
ぜったい。
ぜったい。
体を変える。
そう心に誓った。
さちえ：休まずにメニューを2週間やりました。
マスター：それは何よりです。休んだあとの運動はきつくなかったですか。
さちえ：起きるのがきつかったですがすぐに慣れました。今までの蓄積ですかね。ふふふっ。
マスター：おやつなどはいかがですか。食べたくなりませんか。
さちえ：はい。毎日食べたいと思っています。職場でお菓子入れのザルがあって常に山盛りに入っています。周りはコーヒーを飲みながらそのお菓子を食べているのですが、私は我慢しています。
マスター：それは過酷ですね。
さちえ：やっぱり痩せるには我慢しかないですよね。
マスター： ふふふっ。そんなこともありませんよ。ドーナツやチョコレートなど糖質を多く含まれている食べ物はもちろん太ります。糖質は「また食べたい」という中毒性があるのでついつい食べ過ぎてしまいます。
しかし最近では、カカオ75%、90%チョコレートなどの糖質を抑えた商品があるのでそういったのを利用するといいですね。飲み物は野菜ジューズや清涼飲料水には糖質が多く含まれているので避けて下さいね。一番いい方法としては１日５食にすることです。
さちえ：えっ、どういうことですか。
マスター：ふふふっ。1食を腹5分で抑えてそれを朝朝昼昼晩の5食にするやり方です。この方法は血糖値上昇を防げるので、太りにくくなります。
さちえ：腹五分かぁ。。。きつそう。
マスター：慣れるまでは大変ですが食との向き合い方が変わってきます。
さちえ：友人と外食ランチの場合は？
マスター：外食ランチは毎日ですか。
さちえ：いや、月に一回あるかないかという感じですが、、、
マスター：その時は気兼ねなく行ってください。20/365日外食に行くぐらいなんの問題もありません。後の345日を頑張ればいいだけの話です。
さちえ：なるほど、長期視点って事ですね。
マスター：明日から5食にしてください。
1食目7時、2食目10時 3食目12時 4食目16時 5食目19時。
すべて腹五分で抑えるようにした。
メリットは甘い物のつまみ食いをしなくなった。デメリットは腹五分しか食べられない不満足感。しかしその不満足感は慣れてくると気にならなくなった。
私の性格上、糖質を控えたお菓子では食べ過ぎてしまう事は分かっていたので、お菓子は食べない選択をした。それが功を奏したのか2ヶ月で体重が5kgも減った。
5kgも。。。
私今までどんだけ食べていたんだ。
マスターのメニューをやり始めてから変わったことがる。
それは、時間に対する考え方。
スマホを見過ぎていても、「あ〜もうこんな時間になっちゃった」と今まで流していたことが、何も得られていない事に時間を使うのが勿体無いと感じるようになっていた。
そんなのに時間を使うなら英語を勉強いた方がマシ！
さちえ：マスター聞いて下さい！！！
マスター：どうされました。
さちえ：TOIEC520点でした。昨日通知がきて思ったよりも点数が高かったので嬉しかったです。
マスター：ほーう。そうでしたか。次は700点、800点と目指されるのですか。
さちえ：もちろんです。すると転職への道が大きく広がります。特に800点の壁が大きいみたいなので。
マスター：勉強が好きなのですね。
さちえ：はい。点数として頑張った分が可視化されるので。
マスター：ではここで私のところへ来たコツコツタイプのお客さんの話です。
さちえ：私と関係があるのですか。
マスター：その方はバイトを二つ掛け持ちして生計を立てていました。元々旅行好きで海外で働きたいと思ってはいたけど中々一歩踏み出せずにいました。その方もあなたと同じようにTOIECを一生懸命勉強していました。「海外で何がしたいのですか」と私の質問に「何がしたいかはまだないけど、行ったら見つかると思います。」と答えてくれました。
さちえ：それ分かります。行ったら楽しい仕事が見つかると思います。そのためには最低英語が喋れなければいけませんからね。
マスター：その方は今どうしていると思いますか。
さちえ：アメリカとかで何かやっているのでは。
マスター：日本にいます。TOEIC850点を引っさげてアメリカへ渡ったのですが労働ビザを取れずにカムバックです。
さちえ：そうなんですね。残念ですね。私はそうならないようにもっと頑張らないと。
マスター：ふふふっ。その方、今社長やっていますよ。
さちえ：えっ、、、、すいません。理解が追いつきません。
マスター：その方、TOIEC教育の会社を経営しています。
さちえ：海外の夢を諦めたんですね。
マスター：その方は毎日イキイキしていますよ。アメリカから帰って来たときは落ち込んでいましたが、なぜ滞在できなかったのかをご自分で分析されていました。
逆の立場になると分かりやすいですよ。例えば、日本で働きたい外国人がいた場合、日本にとってのメリットはなんでしょうか。
さちえ：。。。。。
マスター：税金ですね。その方が日本に住所を持ち働くことによって所得税、住民税など税金を納めてくれますね。しかし、その納める税金が日本人の平均以下だったらどうでしょうか。職を失っている日本人を雇用しその方に同じ額の税金を納めてもらった方が自国としてはメリットがありますね。
さちえ：たしかに。それは分かります。自国民ファーストですね。
マスター：そうです。国としてあなたが自国に何のメリットをもたらしてくれますか。ということです。スペシャルのスキルを持ち尚且つ高額な税金を納めてくれるならウェルカムでしょう。
転職のモチベーションが激減した。。。
マスター：物事を逆算思考すると世界の見え方が変わります。
さちえ：逆算思考？
マスター：私はハリウッドでヘアメイクの仕事がしたい。それには実績が必要。友人知人５0人にお願いしてヘアメイクをさせてもらい実績を作りレジュメを作る。アメリカのコミニュケーション言語は英語なので、英会話を勉強する。
いかがですか。逆算すると分かりやすくなりませんか。
ヘアメイクの仕事なのにTOEICの点数をひたすら上げても無意味なのは分かりますね。
さちえ：確かに。。。
マスター：英語が好きな事と海外で働くということはまったくの別物と考えた方がいいでしょう。今あなたの思っている時間の無駄になってしまいます。
さちえ：な、な、なんで時間のことを、、、話していないのに。
マスター：顔に書いてありますよ。ふふふっ。
さちえ：ヘアーメイクのお仕事をするならまず美容学校行って資格を取ってからと考えますね。資格がないと働けもしないので。TOIECも同じで今の実力を数値化したものなので意味はありそうですが。
マスター：もちろん自分の働きたい場所に資格が必要なら取るべきですが、すぐに資格という印籠を欲しがるのは資格貧乏さんに多い傾向です。10個の資格も持っているのにまったく関係のない仕事している事がほとんどです。資格を取る事は手段であって目的ではありません。
マスターとのオンラインが終わると頭が真っ白になった。英語の勉強をしている間は海外での生活を毎日妄想していた。確かに私が行く事でアメリカにとってメリットがないと、自国民を優先して雇用するはず。
私のスペシャルスキル、スキル、、、
大学を卒業してすぐに現在の職場に就職したのでもう10年になる。30までにヘッドハンティングの声がかからない場合は自分に実力がないと何かの本に書いてあったな。同じ場所で働いて10年。私には何のスキルも身についてないのか。
はぁー。ため息しか出なかった。
さちえ：私ってカラダ変える意味あるんですか。
マスター：多いにあります。最初は恋人を作りたい理由でしたが、体を変えるきっかけは何でもいいんです。アメリカに行くのも恋人を作るにしても健康あってのことです。健康を疎かにしている人にチャンスは巡ってきません。
さちえ：今のところ健康です。ただ太っているだけです。それが不健康といえばそこまでですが。。。
マスター：人間の病気には2種類あります。自分で防げる病気と防げない病気です。癌などは健康的な食生活を送っても防ぐ事はできませんね。一方防げる病気というのは、生活習慣病と言われるものです。糖尿病が代表的な病気ですね。2型糖尿病の原因は食生活の乱れです。早い方で40代からなる方もいます。自分とは無縁と思っていませんか。
さちえ：確かに私が糖尿病になることは想像したことありませんでした。健康を意識するって難しいですね。
マスター：そう、難しいのです。しかし成功者はみんな健康の大事さに気付いています。だから食事も運動も健康から逆算して考え行動しています。
そんな美味しい物を食べない人生なんて楽しくないという意見がありますが、大概が糖質や脂質の多く含まれ味が濃い物を美味しい物と言っています。
さちえ：違うのですか。では美味しい物って何ですか。味が薄い病院食のようなもの？
マスター：ふふふっ。こちらのお店に行ってみて下さい。
ピコンっ。
ヒトクチというお店のurlが送られてきた。
さちえ：分かりました。行ってみます。
マスター：話を戻しますね。今のあなたの体型は、あなたの習慣を表したカタチです。もしあなたがカラダを変えたいのなら、習慣を変える事です。
さちえ：なるほど。マスターのメニューは習慣を変える為のメニューだったをですね。
マスター：お、気づきましたね。ダイエットを始めた瞬間から痩せない道を突き進んでいきます。
さちえ：ダイエットなのに痩せない道ってどういう意味ですか。
マスター：ダイエットはイベントです。365日のイベントはしんどいですね。大学祭を毎日できますか。
さちえ：確かに。毎日はしんどいですね。いくら楽しいイベントでも毎日やっていたら飽きてきそうです。
マスター：ダイエットが飽きるとどうなりますか。
さちえ：辞めてリバウンドです。実際私がそうでした。ダイエットって最初は成功した姿を想像しながら出来るのでいいですが、思うように体重が落ちなかったり、同じ事の繰り返しなのでしんどく感じました。まさにイベントとして捉えているって事ですね。
週末、マスターに紹介してもらったお店に食べに行った。出てきた料理はコースだった。前菜から始まり最後はデザート。
私が普段美味しいと思って食べている物は、食材の味ではなくタレやソースを美味しいと思っていたんだなぁと気付かされた。料理はお米一つをとっても全て素材の香り、味がした。
マスターの言う美味しいとはこの事か。
さちえ：ヒトクチ行きました。美味しいの概念が変わりました。今まではパンケーキにたっぷりのメイプルシロップを美味しいと感じていたんだなぁと反省です。
マスター：パンケーキにメイプルは美味しいですよね。大事な事はパンケーキが何で作られているかを知ればいいだけです。
さちえ：パンケーキは小麦粉、卵、砂糖ですね。小麦粉は糖質、、そういう事か。小麦粉には元々糖質が含まれている、そこに砂糖を入れ卵を入れ、さらに上からシロップをかける。糖質三昧ですね。それに生クリームやフルーツを乗せるので、、、オーマイゴー。もう食べません。
マスター：一生食べないでも大丈夫ですか。
さちえ：い、い、一生は、、、
マスター：ですね。我慢のベクトル先は「食べたい」です。だから我慢し続けても最終的に食べてしまいます。それどころか辞められなくなります。だから食べたいなら我慢せずに食べる。作られている材料は知っているので砂糖を減らしたり、半分にしたり工夫すればいいだけです。
さちえ：なるほど。勉強になります。食べられると思うと先行き明るくなってきました(笑)
マスター：しかも今ならプロテインパンケーキという画期的な物もあるので利用しましょう。
さちえ：プロテインパンケーキ始めて聞きました。でも、口に入れる物の素材や栄養素を知るって大事ですね。
マスター：大事です。しかしそれを人に押し付けてはいけません。価値観の押し付けは相手にとっては迷惑ですから。
さちえ：分かります。この歌感動するよねってイヤホンを無理やりつけさせられ聞かされる感じですね。
マスター：ふふふっ。まさに。それでは次はこのメニューを行って下さい。
今回は運動メニューに食材別栄養素が書かれていた。
そこで私はひらめいた。
「私のダイエット記録」と題して料理をyoutubeで発信してみよう。そうする事で楽しく続けられるんじゃないかって。あわよくばお金に。。。
早速チャンネルを開設した。
1本目は何しようかな。
さちえ：最近は料理が楽しくてはまっています。糖質や脂質が低くても美味しい唐揚げやプロテインアイスなども作りました。
マスター：楽しんでいますね。
さちえ：料理をYoutubeに上げているのですが、親切な人がいっぱいいて「もっとこうやるといいよ」「おいしそー」とコメントがくるので、料理も上達してやりがいになっています。
マスター：トレーニングはいかがですか。
さちえ：はい、問題なく朝６時に起きてやっています。体調もすこぶるいいです。
マスター：では私のメニューは今日で終わりです。
さちえ：えっ。。。
突然のことだったので返す言葉が出なかった。
マスター：もうあなたは自走できます。目も輝いてイキイキしていますし、きっといい人生になりますよ。
さちえ：ちょちょ、ちょっと待ってください。マスターのおかげでここまでこれました。もう少しでいいのでメンターになってください。お願いします。
さちえのありのままの姿が人気を呼びYoutubeは海外の人まで見るようになっていた。そこで好きだった英語を生かし英語バージョンチャンネルも開設した。
そして体型はというと、
1年で体重が8kg減っていた。さちえにとって体重の増減はもう気にならなくなっており、毎日クリエイティブな事を考えて発信する充実な毎日を送っていました。
恋人は、、、
お読みいただきありがとうございます。
第二弾また書いていきます！