MPH関係の質問に対する回答:某講演会の資料をNOTEに転用シリーズ

Q. 経歴にresearch fellowと拝見したのですが、HarvardでMPH取得後も同機関で研究にそのまま携われたのでしょうか?
Q. MPH後のキャリアに関して、現在も大学院との交流は続けていますでしょうか (advisorやcommunityなど)
MPHを取得することでしかできない社会的managementはございますでしょうか。


まず私はMPHとってません。research fellowとMPHは別物です。帰国後も交流はあります。下の方でも書きましたが、MPHがあるからこそできるものはないと思います。


Q. MPHを取ることのメリットとその後考えられる進路について教えていただきたいです。

MDであれば、少なくとも現状の日本ではキャリア上の追加的なメリットはないと思います。比較的未だまれな「MPHを取った人になれる」ことくらいではないでしょうか。
進路は、本来的には、厚労省・都道府県庁・政令市の保健所などの職員、医療機関の管理者、大学教員、臨床医などでしょうが、どれもMPHがなければなることができないわけでもありませんし、MPHよりも、MDであることと、くわえてMDとしての臨床医としての経験・能力・コネの方がはるかに重要だと思います。
MPHはこのように進路としての実利メリットではないですが、医師として、人として、マクロ的な視野を持つことは重要だと思います。あじわいぶかいというか。

Q.日本でとるMPHと海外でとるMPHの差が知りたいです。

海外のMPHのすべてを知るわけではないですが・・・・

海外の機関に就職するにはよさそうと思います。
海外でMPH修了し日本に戻ってきた場合には、

・英語はそれなりにできるんだろう

・1年くらいは海外生活をしたことがあるんだろう

・高い授業料を払ったんだろう

くらいの認識ではないかと思います。

海外で学んだことと疫学・公衆衛生の理解とは別次元の話です。
日本でも海外でも、MPHだけでは、その人が単独で研究できるとはまず思いません。

履歴書は何となくカッコいいような気はします(かけるものなら私も書きたい。けどコスパが?)。


Q. 総合診療科、家庭医に興味があり、地域の疫学を意識した医療、ケアに貢献したいと考えています。MPHをキャリアのどの段階で取得するのがよいかに関心があります。

それなりに臨床を1人でやっても大丈夫と思えるようになってからがいいのではないでしょうか。

専門医取得の必要性はよくわかりません。診療科によっても違うでしょう。例えばいわゆるジェネラルの人であれば専門医はあまり関係ないでしょうし、いわゆるスペシャリスト系は専門医があったほうがいいと思います(専門医がないのにスペシャリストとか言われてもw)

まぁもっともMPHやその後の研究やりながらの期間で、専門医とるというのも十分ありだと思います。実際、大学院生になってからの申請・試験の方が時間取れそうですし。フルタイムで臨床やりながら準備するのは大変ではないでしょうか。

研究をするにも臨床の理解はとても重要・必要です。現場感のない研究は、特に臨床系ではあまり求められていないと思い案す。

くわえて、リアルな話として、生活費を稼ぐ必要があります。多くの人は、非常勤医師として働くでしょう。その点も考慮する必要があるかと思います。

そもそも論を言えば、MPHは、いわゆるリサーチディグリーではなく、プロフェッショナルディグリーなので、実務経験がそれなりに無いとあまり意味がない(本質的にMPHを理解してなくないか?)と私は思います(学部からそのままMPHに進んでいる人???)。


現状の日本では、MDであれば、公衆衛生系で疫学をやり博士号を取るほうがいいでしょうし、修士号がよければ医学教育やマネジメント系をとるほうがいいように思います(これも後述)。


Q.そもそもMPHやるべき??
結論としてはMDならPhD(博士ね)の方がいいと思います。

MPHに何を求めるかにもよります。

名刺などにMPHと書きたいならMPHとるしかないと思います。

実利を取りたいのであれば、現状の日本であれば、医師であれば、PhDがベターと思います。

そもそもMPHだけでは、まず自律的に研究もできません(一部の天才除く。そういう天才はそもそも学位とか関係ない)。

研究はそんなに簡単なものではない(と少なくとも私は感じる)ので、1-2年のしかも講義型授業中心の修士課程ではできるようにはなれません。

一般論として現状では博士がないと、大学教員にもなりにくいです。

別に大学教員が素晴らしいというつもりはないですが、研究をやってみて面白い・続けたいと思った時には、1つの選択肢となります。

その時に、博士がないからちょっと・・・となるよりは、とってしまえばいいやんと思います。

日本の博士課程は、かなり安い授業料で、かなりのリソースにアクセスできると思います。コスパ良い!!

リソースとは、具体的には、図書館・論文関係の資源はもちろんですが、人間関係(教員だけではなく仲間もできる)・ネットワークもありますし、学内の研究会・講演会・授業などの情報へのアクセスもそうです。

くわえて、最近では、大学学内限定の奨学金や研究費なども様々あります。

などなど、正直私が知る限りでも、日本の多くの研究大学は、かなりコスパ良いと思います。

こういっちゃぁなんですが、日本の博士課程の授業料は、特に医師にとっては、激安でしょうから、長い人生、博士くらいとったらいいんじゃないかと思います・・・。

別に途中で辞めてもいいんだし。。


どうしてもMaster?というなら、私ならMPHではなく、他にします。

政策系であればMPA/MPP、定量分析であれば経済学、教育系であればM. Edu(カナダ・オランダ・英国)などの方がよほどいいように思います。

欧米ではこれらのDual courseもあるようですし、遠隔教育もあるようです。

ここらへんはかなり日本は弱いと思うので、欧米に行くのもありだと思います(まぁコロナ落ち着いてからでしょうけど)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?