📗「トップ・シークレット」7冊無料公開&スペシャル短編公開！

角川つばさ文庫クラブ

2024年11月11日 12:30

このシリーズ、すべてがヒミツで超キケン。

毎巻話題のスパイ小説「トップ・シークレット」！
最新8巻の発売にあわせて、シリーズ①～⑦が無料で読めるようになりました！

◆ 8巻までまだ追いつけていないよ～というみなさんも…
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いまがチャンスです！

あわせて、8巻発売にあわせたスペシャル短編もこの記事で公開☆

7巻と8巻のあいだの物語。
4月の学園で、ナノとレオがイースターエッグをさがす？
おや、レオの様子が、いつもとちがうようですが……こちらもお見のがしなく！

全巻無料公開中☆

各巻のタイトルをクリックすると、すぐ読みはじめられる☆
※BOOK☆WALKERにジャンプします。

『トップ・シークレット（１）この任務、すべてがヒミツで超キケン』

『トップ・シークレット（２）二人の天才少女、あらわる』

『トップ・シークレット（３）難攻不落の部門試験！』

『トップ・シークレット（４）決戦前夜のショータイム！』

『トップ・シークレット（５）混乱のウィンターホリデー』

『トップ・シークレット（６）約束のプロミッション』

『トップ・シークレット（７）学年末旅行にしのぶカゲ』

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シリーズファンのみなさんからのコメントをお待ちしています！
あなたの"推し"コメントがきっかけで、作品を読む仲間が増える！？

スペシャル短編公開☆

4月の学園でくりひろげられる、NとLのスペシャル短編をどうぞ！

=あらすじ=
あたしナノ。世界一のスパイをめざして、超クールな学校〈スパイ学園〉で勉強中！
学年末旅行のあと。今日はみんなで、イースターパーティーだ！
ひみつの場所にかくされた「金のたまご」を見つけに、学校中をレオとさがしまわるよ。
だけどレオは、日本から帰ってきてから、なんだか様子がおかしくて……？

イースターパーティーで金のたまごをさがせ！

ＰＯＩＮＴ　０

「ウサギが〜　かっくした〜　金のたまごは、どこなんだい！」
　いまは、午前１０時。
　ここは、女子寮の、７０７号室。
　あたしは、鏡のまえで、シルクハットをしっかりかぶった。
　このハットには、ウサギの耳がついてるんだ。
　動くたびに、ぴょこんってゆれるのが、お気に入りなの！
「朝から、はしゃぎっぱなしね」
「ナハハッ　ナノ、今日は、朝の５時におきてたもんね」
　そう言ったシャルルとマキの頭にも。
　ウサギの耳のついた、かわいいカチューシャがついてる。
「だって今日は、イースターだよ！」
　そう！
　今日はイースターっていう祝日なんだ。
　この日は、『ウサギが、たまごやおかしを、もってきてくれる』って言われてるの。
　アメリカでは、たまごのからにカラフルな色をつけて。
　庭や、家にかざったりするんだ。
「それに、今日は授業もなくて、夜までずっとパーティーなんだよぉ！　たっのしみぃ～！」
　毎年、ブロッサム学園では。
　イースターパーティーがひらかれるの。
　学園のあちこちで、ウサギのぼうしや耳をつけた生徒たちが、おどったり歌ったりしてる。
　いろんな部活も、パーティーをもり上げていて。
　演劇をしたり、展示会をしたり、おかしをくばったりしてるんだ。
「ナノは、金のたまごをさがすの？」
　シャルルが、口のはしをあげて聞いてくる。
「もちろん！　中等部になって、はじめてのイースターパーティーだもん！　全力でさがすよ！」
　そうそう！
　このイースターパーティーでは。
　学園のどこかに、“金色のたまご”がかくされるの。
　毎年、そのなかみは、秘密(シークレット)だから。
　みんな、ワクワクしながら、たまごをさがすんだ！
「じゃあ、金のたまごを探してくるね！」
「いってらっしゃい。わたしは、『情報委員会』に行ってくるわ。また、お昼ごろに、食堂で会いましょ」
「ナハハッ　うちも、今日は、『アイテム開発部』で、新しいアイテムをつくるんよ！　またね！」
　あたしは、シャルルとマキに手をふって。
　部屋をとびだした。

　◆

　寮を出れば。
「レオ！　おまたせ！」
「ナノ、７分のちこくだ」
　レオが、メガネをなおしながら待っていた。
「えへへ、ごめんごめん。イースターパーティーにめんじて、ゆるして！」
「しょうがないな」
　あきれ顔のレオは、かたを下げてうなずくと。
　ぐっと、こぶしをにぎった。
「中等部の、初のイースターパーティーだ！　絶対に、金のたまごを見つけるぞ！」
「おう！」
　レオは、こういう宝さがし系のイベントは、いつも“本気”をだすんだ。
　あたしは、初等部の１年生のときから、毎年、レオといっしょに、金のたまごをさがしてるんだ。
　中等部になっても、やっぱりレオといっしょにさがしたいなぁって思ってたら。
　レオが、「２人でさがそう」って、さそってくれたんだ。
　そんなレオの頭には。
　ウサギの耳がついた、小さなぼうしがついてる。
「今年の"ヒント"はなんだろうね！」
　イースターパーティーの、金のたまごさがしには。
　いつも“ヒント”があるんだ。
　そのとき、
　ヴヴッ
　あたしとレオの、スマートフォンが鳴った。
　生徒会から、いっせいに、“ヒント”がおくられてきたんだ。
　そこには。
『エウレカ』
　って書かれていた。
「『エウレカ』？　なにこれ」
　首をかしげれば、レオがしっかりドヤ顔をうかべた。
「『エウレカ』っていうのは、『わかった！』という意味のギリシャ語だ」
「へえ！」
「なにかを発見したときに『エウレカ』と、言ったりするんだ」
「なるほど！」
　レオは、むねをはってつづけた。
「古代ギリシャの、数学者のアルキメデスという偉人が、お風呂のなかで、ある発見をしたときに、『エウレカ！』とさけんだ、と言われているんだ」
「へえ！　じゃあ、そういう発見にまつわる場所に、金のたまごがあるかもしれないんだね！」
「そうだな。でも、生徒会のだす“ヒント”は、いつもひとひねりあるから、今回も、たんじゅんじゃないと思う」
　そう言ったレオは、あごに手をあてた。
「よし。とにかく、金のたまごがありそうな場所をまわるぞ！」
「おー！　学園探検のスタートだ！」

　◆

　あたしは、ちょうどいい木のえだをひろって歩きながら。
　となりのレオを見た。
　レオは、春の学年末旅行で、日本に行ったころから。
　たまーに、“へん”になる。
　たとえば、小テストがおわったあととか。
　図書館で宿題をおえて、ちょっと気がゆるんだときとかに、へんになるんだ。
　どうゆうふうに、へんになるかというと。
　バレバレの視線で、あたしをこっそり見てたり。
　そのくせ、あたしと目が合ったとたんに、顔を赤くして、目をそらしたりするんだ。
「どうしたの？」って聞いても。
「なんでもない」って言ってくる。
　なんでもないわけないのに。
　今日は、授業もないし、学園中でパーティーをしてる！
　だから、絶対、レオの気もゆるむはず！
　あたしは、今日、金のたまごを、いっしょにさがしながら。
　レオの態度が、へんになる理由をつきとめるんだ！
　金のたまごも。
　レオがへんになる理由も。
『エウレカ』（わかった！）って言うぞ！

ＰＯＩＮＴ　１

「レオ！　研究部棟が見えてきたよ！」
　木のえだでしめした先に、研究部棟がそびえたっていた。
　ここには、いろんな研究会が集まってるんだ。
「まず、レオのはいってる研究会に行こ！」
　おくまった場所にある、『考古学・古代暗号研究会』をのぞいてみる。
「おや、レオくん！　それから、きみはレオくんのご友人ですな！」
　うしろで手を組んだ会長が、いきいきと声をかけてくれた。
　そのむなもとには、ウサギのブローチがついている。
「部室で、金のたまごを、さがしてもいいですか？」
　レオがたずねると、会長はしっかりうなずいた。
「もちろん！　ぞんぶんにさがしてくれたまえ。人によって見える世界はちがうからね。我輩が見つけられなくても、きみたちなら見つけられるかもしれない。我輩もこれから学園中をさがしにまわるところですぞ」
　会長はうれしそうに言うと、部室を出て行った。
　あたしたちは、古い本や、紙の資料でうめつくされた部室のなかを、ぞんぶんに歩き回った。
「うーん、ないねえ」
　レオも、たなのすみずみまでチェックして、首をよこにふった。
「よし、次の場所に行くか！」
「おう！」
　それからあたしたちは、研究部棟をくまなくさがしたけれど。
　ここに、金のたまごはなかった。

ＰＯＩＮＴ　２

　つぎは、開発部棟だ。
　巨大な建物があたしたちにカゲをつくる。
　ここに、マキのはいっている『アイテム開発部』の、部室があるんだ。
　建物に近づいたとき。
　あらゆる窓とドアから。
　白衣をきた生徒が、あわあわと出てきた。
「逃げろー！」
「マキがまたヤバいのを作った！」
「爆発するぞー！」
　っていう、さけび声が聞こえてきたから。
「よし、やめておこう」
「うん」
　あたしたちは足の方向を、くるっと変えて。
　次の場所に向かった。
　生徒会も、爆発しやすいような場所に、金のたまごはおかないだろうからね。

ＰＯＩＮＴ　３

「やってきたぞ、情報部棟！」
　ガラスばりの、高い建物がそびえたっている。
　ここでは、『情報委員会』が、よく会議をしているんだ。
　この棟のなかには、秘密がいっぱいつまってるから。
　手つづきをしないと、なかに入れないんだ。
「きっと、ここに金のたまごはないな」
　レオの言葉を聞きながら。
　ちょうど入り口から出てきた先輩に、あたしは声をかけた。
「あ、シャルルはいますか？」
　なんとなしにたずねれば。
　情報委員会の先輩が、つかれきった顔で天をあおいだ。
「ああ、シャルルね……あはは……シャルルには、本当に手をやかされてるよ……あはは……」
　ひたいに手をあてながら、ブツブツとつぶやく先輩は。
　かなりシャルルに、ふりまわされているみたいだ。
「ああ、シャルルがいるか、という質問だったね。彼女は、もう食堂に向かったよ」
　そう言った先輩に、お礼と、おつかれさまです、と言葉をかけて。
　あたしたちは、歩き出した。

ＰＯＩＮＴ　４

―　今月のＭＡ特集では！　イースターにまつわるふしぎなお話を集めました！　―
『ＭＡ』の動画を、ラジオがわりにながして歩く。
　この動画は、お気に入りの記者のＭＡ子さんがつくったんだ。
「それ、どうせ朝からずっときいてるんだろ？」
「そう！　これで７回目！」
『ＭＡ』の動画が、１４回目の再生をむかえようとしたとき。
　げんなりした顔のレオが、「もう聞きあきた」って言いながら、動画を止めてきたとき。
　ちょうど、たどりついたのは。
　文化部棟。
　そのとき、タイミングよく、『ファッション部』のドアが開いた。
「やあ、ナノ。金のたまごをさがしてるのか？」
　ドアから、顔をだしてそう言ったのは。
「ディミリー！」
　『ファッション部』の部長のディミリーだ。
　頭には、ステンドグラスみたいなウサギの耳がついている。
「キャキャッ　ナノとレオじゃん！　チョー元気そうだね！」
　ひょこっと、布のあいだから顔をだしたキャシーが。
　糸をもった手を、ふってくれる。
　色とりどりの糸たちが、おどるようにゆらめいた。
「ここに、金のたまごはないよ。あるのは最高の香水とドレスさ！」
　ドアの前にやってきたシオンが、むねをはる。
　部室には、いろとりどりのドレスや、タキシードがならんでいた。
　ディミリーも、キャシーもシオンも、おそろいのウサギの耳をつけていて、とってもキュートだ。
「こんど、イギリスに一号店ができるんだ！　いまはその準備をやってるところなんだ」
　ディミリーが、うれしそうに教えてくれた。
「すごいな」
「最高にクールだ！」
「またいつでも遊びに来なよ」
「うん！　また行くね！」
　あたしたちは３人に手をふって、部室をあとにした。

ＰＯＩＮＴ　５

　文化部棟のろうかを歩いていれば。
　目の前から、もふもふしたものが歩いてきた。
　よく見れば、大きなウサギのきぐるみだった。
「あ、レオ、ナノ、元気ぃ？」
「その声は、タロか？」
「タロ！？」
　タロは、レオの相部屋の１人だ。
　ウサギのきぐるみをきたタロは、ゆっくりうなずく。
「おいらは、いまから『もふもふ研究会』にいくんだぁ。だから、正装をしてるんだ」
『もふもふ研究会』は、もふもふしている動物を研究しているらしい。
　この研究会の“正装（ちゃんとした服そう）”っていうのは、きぐるみをきることらしい。
　世界には、まだまだふしぎがあふれてる！
「いまから、新種のもふもふ生物について研究発表をするんだ。いつでも遊びに来てねぇ」
「金のたまごを見つけたいから、またこんど、遊びに行くね！」
「発表がんばれよ」
　かわいいウサギすがたのタロに、手をふって。
　あたしたちは先へ進んだ。

ＰＯＩＮＴ　６

　文化部棟の２階。
　そこに、人だかりができていた。
　スーツすがたに、ウサギの仮面をつけた人たちが集まってたんだ。
「『珍味部』の、特別なメニューはいかが？」
　珍味（ちんみ）っていうのは、めずらしい味のことだ。
　なるほど、このスーツすがたの人たちは、『珍味部』のメンバーなんだ。
「きみたち、イースターパーティーのために手に入れた、珍味を食べてみないか？」
　せっかくだから。
　ふしぎな木の実を味わってみた。
「あー、うーん、うん……えっと、悪くないね！」
「そうだな、えっと、どくとくな味がする」
　あたしたちの反応を楽しそうに見ていた部員たちが、からからと声をあげて笑った。
「それはよかった。ナノ、レオ、元気にしていたかな？」
「え、その声！」
　レオが、仮面の青年を、パッと見上げる。
「もしかして、マーティン！？」
　ウサギの仮面をはずしたのは。
　マーティンだった。
「もう１つ、いかが？」
　と、ほほ笑んでくるマーティンに。
　ていちょうに、ことわった。
「マーティンにまた会えるなんてうれしい！」
「『珍味部』だったんだな」
「世界中のふしぎなグルメを楽しむのが、ぼくの生きがいなんだ」
　マーティンは楽しそうに、珍味がのったお皿をかかげた。
「いつでも、珍味を味わいにきてね」
「気が向いたらいくね！」
　あたしたちは、マーティンの大きな手とあくしゅをかわした。

　そのとき、すこしはなれた場所で。
『珍味部』とコラボしている、委員会が展示をしているのに気づいた。
　そこでは、珍味を輸入したルートの映像がながれてる。
「『国際経済委員会』は、どんなクラブともコラボしてるな」
　レオが、感心しながらつぶやいたとき。
「よ、レオ、ナノ」
　そう名前を呼んだのは。
「さとる！」
　レオの相部屋のメンバーの、さとるだ。
「いい展示だな」
「だろ？」
　めずらしくほめるレオに、さとるが口のはしを上げる。
「ナノ、なにか必要なものはある？　『国際経済委員会』は、どんなものでも、そろえられるよ」
　目を細めて話すさとるは、商売上手だ。
「いまは大丈夫かも！　金のたまごの場所も、あたしたちで見つけたいんだ！」
「金のたまごの場所？　その場所なら、レオにまかせれば、すぐにわかるはず……」
　そう言いかけた、さとるは。
　チラッと、レオを見て。
「……いや、今回の金のたまごの場所は、むずかしいのかもな。ゆっくり、２人でさがすといいよ」
　と、かたをすくめて言った。
「そうだね！　初等部のときも、いつも１時間は、さがしてるから、今回も学園をしっかりさがしまわるよ！」
　あたしたちは、さとるに手をふって、先に進んだ。

ＰＯＩＮＴ　７

　中庭を歩いていれば、ひらけた場所で。
　演劇部がミュージカルをしてる。
　ウサギが、たまごをさがして旅にでるお話だ。
　その歌にあわせて。
「金のたまごはどっこかなぁ～？」
　レオのとなりで、クルクルまわりながら歌っていたら。
「あ！　ナノ氏！」
「「「ナノ氏！」」」
『忍者郵便物部』の一条が、あたしを見つけて走ってきてくれた。
　一条は、ウサギのしっぽを、ちょこんとつけてる。
　あたしは、ジャンプしながら、ハイタッチした。
　一条のスマートフォンでは、オンライン通話の画面で二条、三条、四条が映ってる。
「一条も、二条も三条も四条も、元気？」
「「「「元気だよ！」」」」
　ぴったりそろった声が返ってくる。
「あっはは！　よかった！　せっかくだから、木のえだあげる！」
「わー！　ナノ氏ありがとう！　ちょうど探検用の木のえだがほしかったんだ！」
「イースターパーティーを楽しんでね！」
「あっはは！　よかった！　イースターパーティーを楽しんでね！」
「「「「ナノ氏も、レオ氏も！」」」」　

ＰＯＩＮＴ　８

　あたしたちは、いまは使われていない、古い校舎にやってきた。
　そのなかにある、空き教室のドアをいきおいよくあける。
　ここが、あたしのはいっている、『宇宙怪奇解明同好会』の部室なんだ！
「ベネディクトせんぱーい！　いますかー？」
「おじゃまします」
　いつもの教室に、ベネディクト先輩はいた。
　ウサギ型のゴーグルをつけた先輩は、かなづちで、ふしぎな石をたたいているところだった。
「おかしはそこにあるよ、すきに食べるといい」
　ベネディクト先輩が、中央のテーブルをゆびさした。
「わーい！　いただきます！」
「いただきます」
　先輩はよく、見たことのないおかしをくれる。
　今日のおかしも、虹色のキャンディだ。
『珍味部』の木の実より、おいしかった！
「金のたまごは、ここにもなかったね」
「次の場所に行くか」

ＰＯＩＮＴ　９

「プールも、ちがうかぁ」
　あたしとレオは、室内プールの周りを歩きながら。
うーんと、うなった。
「数学者の、アルキメデスが、お風呂で『エウレカ！』と言ったから、“水”にかんけいする場所だと思ったが……」
「ここにも、なかったね」
　たしかに、このプールのまわりには、ほかの生徒もたくさんいる。
「プールにも、中庭の池にも、ないなぁ」
　大広間も、体育館も、中庭も。
　ムービールームも、投影室も、多目的ホールもさがし回ったんだ。
　ほかにも、『世界のお風呂研究会』や、『ギリシャ数学同好会』の部室なんかも。
　それでも、金のたまごは、見つからない。
「あと見てないのは、図書館くらいかな？」
「そうだな、行ってみるか」
「おー！」

ＰＯＩＮＴ　１０

　図書館にも、たくさんの生徒たちがいた。
　レオは、ウサギの耳のついた生徒たちをながめながら。
『エウレカ！』と言った、アルキメデスという数学者のエピソードを話してくれた。
「アルキメデスは、当時の王さまに、『王かんが“じゅんすいな金でできているか”確認してほしい』と、たのまれたんだ」
「へえ！　王さまにたのまれるなんてすごいね！」
　あたしは、首をかたむけた。
「でも、そんなこと、確認できるの？」
「ああ。アルキメデスは、お風呂のなかに、しずんだ身体の量だけ、水が、浴槽(よくそう)の外にあふれたのを見て、浮力の原理と、比重のがいねんを、発見したんだ」
「……ほぉ～ん？」
　たぶん、７％くらいはわかった、と思う。
　たぶん。
　レオは、あきれ顔で、深く息をすうと、ひとさし指をたてた。
　あ、このままだと、レオの長い授業がはじまりそうだ！
　あたしは、あわてて両手を上げた。
「つまり！　アルキメデスさんは、王かんが、“じゅんすいな金でできていることを確認する方法"を、発見したんだね！」
「そうだ」
「エウレカ！（わかった！）　理解したよ！」
　ニッと笑えば、レオは、もっとあきれた顔をする。
　そんなレオの手を、ひっぱった。
「じゃあ、王さまにかんけいする本とかを見てみようよ！」
「そうだな。アルキメデスのいた時代の、王かんやかざりなどがのっているずかんをみてみるか」

　　◆

「うーん、金のたまごはないねぇ」
　古代のジュエリーずかんや、金属ずかんのならぶたなにも、たまごはなかった。
　レオと首をかしげたとき。
　あたしは、ひらめいた。
「アルキメデスさんは、王かんについて考えてたんだよね。じゃあ、王さまとか、王かんの登場する“物語”の本だなにあるんじゃない？」
「行ってみるか！」
　あたしたちは、物語の本がならぶ本だなに向かった。
「昔、いっしょにいろんな絵本を読んだよね」
「そうだな。ナノは、あれがすきだったよな」
　レオがゆびさしたさきに、よく読んでいた絵本があった。
「わー！　なつかしい！」
　絵本にかけよって、立ちどまったとき。
　ぽんっ
　レオと、かたがぶつかった。
「あ、ごめん」
　ふり返れば、目の前にレオの顔があって。
「わ！」
　レオのほうが、顔を真っ赤にして、とびのいた。
「ちょっと、おどろきすぎじゃない？」
　いま、レオは、あの“へん”な感じになってる。
　ここで、レオが、なんでへんになるのか。
　つきとめてやる！
　あたしは、ぐいっとレオに近づいて。
　その顔をのぞきこんだ。
「ねえ、レオ、本当にどうしたの？」
「どうもしてない」
「してる！」
　顔をそらそうとするレオのほっぺを、両手ではさんで。
　ぐいっと、正面から見つめれば、レオの顔が、みるみる赤くなっていく。
　レオのほっぺをはさんでいた手に、すっごいねつが伝わってくる。
　あつすぎる！
　でも、そんなことより、赤くなったレオの顔を見てたら。
　なぜか、あたしまで、顔があつくなってきた。
　最近、こういう、顔があつくなったり、むねがドクドクしたりすることが、よくおきるんだ。
　あたしも、ちょっと“へん”になっちゃったのかも。
「ねえ、レオ、ここのところ、ずっと“へん”だよ？　本当に、どうしたの？」
「ナノには、ぜったいに言わない！」
　レオが、あたしの手をふりほどいた。
「なにそれ！」
　ムッとしたあたしに。
　顔をそらしたレオは、こまったように、まゆを下げた。
「ちがう、これは……おれの問題なんだ」
　首から耳まで、真っ赤になったレオが。
　目をふせる。
　その必死なようすに。
　なんだか、これ以上ついきゅうするのは。
　かわいそうな気がした。
「えっと、うん、わかった」
　あたしは、かたをすくめた。
「レオが言いたくないなら、言うまで待つよ」
　レオは、たくさんあたしに秘密があるから。
　一個ふえたって、ちょっとくらいは、がまんできそうだ。
「……ありがとう」
　小さな声で言ったレオの背中を、ぽんっとたたいた。
「よしゃ！　気持ちをきりかえて、さがすぞー！」
　そう言ったとき。
　本だなの、１番下の段が、目にとまった。
　そこにならんでいる本たちが、すこしだけ、前にでていたんだ。
「これ、王さまの絵本だ」
　その絵本をとってみれば――
　本だなのおくに。
　金のたまごがあった！
「「エウレカ！」」

ＰＯＩＮＴ　１１

「へえ、あなたたち、よく見つけたわね」　
「ナハハッ　すごいんよ！」
　いま、あたしは、レオと、シャルルとマキといっしょに。
　食堂の丸いテーブルをかこんでる。
　そして、テーブルの上には。
　レオといっしょに見つけた、金のたまごがある。
　頭くらい大きな金のたまごは、照明の光を反しゃして、キラキラとかがやいていた。
「まあ、おれたちなら、よゆうだな」
「よゆうよゆう！」
　ドヤ顔で言うレオに。
　あたしも、いっしょにドヤ顔をした。
「でも、けっこう時間がかかったんじゃない？　去年の、初等部のときは、１時間くらいで見つけられたんでしょう？　今回は２時間もかかったのね」
「ナハハッ　レオなら、本気だせば、４分くらいで見つけられそうなんよ」
　シャルルとマキの言葉に。
「たしかに……いつもより、時間がかかったね！」
　あたしは、レオをふりかえった。
　レオは、なにも言わないで、ただ、かたをすくめるだけだ。
　あたしは、ふと思った。
　レオが、能力（モード）をつかえば、きっと、数秒で見つけられたはずだ。
　それに、よく考えてみたら、能力（モード）をつかってなくても。
　レオなら、もっと早く見つけられそうだ。
「レオ、本気をださなかったの？」
　レオは、いつも、宝さがし系のイベントは、全力でやるのに。
「いや、べつに、そんなことはない」
　そう言ったレオは、あたしたちと目を合わせない。
　シャルルは、何かに気づいたみたいで。
「あー、はいはい。そういうことね」
　と、めんどくさそうにつぶやいて、ほおづえをついた。
「ナハハッ　レオは、ナノとのんびり学園を歩きまわりたかったんやね！」
　マキが、ドライバーをクルクル回して言った。
「え、そうなの？」
「べつに！　ちがう！　今回、時間がかかったのは、中等部の校舎が広かったのと、“ヒント”がむずかしかったからだ！」
　前のめりで、いきおいよく言ったレオのほっぺは、ちょっと赤い。
　必死なようすのレオを見て、まばたきを２回すれば。
　レオは、なんだか、バツが悪そうに、チラッとあたしを見た。
「だから、結果的に、ナノと学園をまわる時間がふえただけだ」
「そっか！　あたし、レオといっぱい学園をまわれて、うれしかったよ！」
　ニッと笑えば。
　レオが目を見ひらいて。
　まゆを下げて、やさしく笑った。
「おれも、あの時間が、楽しかった」
　なんでだろう？
　最近、やっぱり、あたしも“へん”だ。
　レオのすなおな言葉や、やさしい表情に。
　なんだかあたしも、顔があつくなる。
　首をかしげれば、シルクハットのウサギの耳がゆれた。
「そろそろ、金のたまごのなかみを知りたいんだけど」
　シャルルが、ほおづえをついたまま。
　あたしとレオに向かって、手をふる。
「そうだ、金のたまごをあけよう！」
　あたしは、食堂のまんなかで、金のたまごをかかげた。
「今年は、なにが入ってるんだろう！？」
　いつのまにか、あたしたちのテーブルの周りには、たくさんの生徒たちが、集まっていた。
　みんな、今年の金のたまごのなかみが気になるんだ！
　くぅ〜最高に楽しみだ！
　レオといっしょに、金のたまごの、まんなかにあるとめ具をはずして。
「「せーの！」」
　パカッと、開けた。
　そのとたん――
　パァーンッ
　いきおいよく、おかしが空中にとびだした。
　天井までとびあがったおかしには。
　ウサギ形のパラシュートがついていて。
　ゆっくりと落ちてくる。
「みんなで食べよー！」
　あたしたちは、ふってくるキャンディや、チョコレートを手でうけとめた。
「おいしい～！　あ、これ、チョコのなかにグミが入ってるから、レオがすきだとおもう」
　もぐもぐしながら、レオに、ふくろに入ったチョコレートをあげれば。
「ありがとう」
　レオが、うれしそうに、やわらかく目を細めた。
　そんなレオをながめながら。
　こんな時間が、ずっとつづけばいいのに、って思った。
「ナノ、どうした？」
「ううん、なんでもない！」
　けっきょく、レオが“へん”になる理由は。
『エウレカ！（わかった！）』とは言えなかったけど。
　レオと２人で、学園をまわって、楽しめたから。
　まあいいや！
「このチョコレート、なかなかおいしいわよ」
「ナハハッ　このキャンディー、ゆでたまごと合いそうなんよ」
「このチョコレートグミもうまい」
「あっははは！　イースターパーティーは、最高にハッピーだ！」
　あたしたちは、たくさんのおかしを、ほっぺにつめこみながら。
　パーティーを夜まで楽しんだ。
「イースターパーティーがおわったら、プロ試験だ。これから、準備もがんばろうな」
「「「おー！」」」

　〈ＭＩＳＳＩＯＮ　ＣＯＮＴＩＮＵＥＳ〉