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ミドル・シニアが学ばない社会の未来は大丈夫か?

先日参加したとあるセミナーで、実際に50代の社会人が発言した言葉がとても印象的でした。最近、色んなところで講師としてキャリアやリスキリングについての講義を行う機会が増えているのですが、ミドル・シニア層から少なからず、どこか他人事のように反応を受けることがあります。

「この歳になって、新しいことなんて学びたくないってのが本音だよね」

そんな言葉を耳にするたびに、この問題の根深さを痛感します。

ミドル・シニア層の社員が研修やリスキリングの話を持ち出されると、関心が薄かったり、変化を受け入れたくないという反応を示すことが多いのです。「もう十分頑張ってきたし、今さら学び直すなんて…」と考えてしまうのかもしれません。僕自身もミドルとして、今更新しいことを学ぶとなると抵抗があるのは痛いほどわかります。

しかし、ミドル・シニア層が学ばないことは、個人の問題ではなく、社会全体の課題です。自分だけの問題では終わらないのです。

企業の競争力、経済の成長、そして社会の持続可能性──すべてに影響を及ぼす問題であり、見過ごすわけにはいきません。


スキル支援だけでは変容しない

ここ数年、リスキリングの必要性が叫ばれ、政府や企業はスキル取得支援に力を入れています。デジタルスキル研修や資格取得補助金など、スキルを学ぶための仕組みは整ってきました。

しかし、それだけでは変容は起こりません。

そもそもミドル・シニア層は「なぜ学ぶのか?」が明確でないため、学ぼうとすらしないのです。

リクルートの調査によれば、40代から50代でキャリアについて考えて行動しているのは3.0%弱で、約50%がキャリアについて考えられていないというデータが出ています。また、帝国データバンクの調査では、企業の46.1%がリスキリングに「取り組んでいない」と回答しており、そもそも企業側の支援体制も不十分なままです。

  • スキルを学ぶ前に、「なぜ学ぶのか?」が整理されていない

  • 学ぶ意欲が低いため、リスキリング施策が形骸化する

  • スキルよりも、まず「学びたい」という動機を作ることが必要

ミドル・シニア層にとって重要なのは、「なぜ学ぶのか?」を自分ごとにすることです。それがなければ、どんなにスキルを提供しても行動にはつながりません。


解決策は「やりたいスイッチ」を押すこと

ミドル・シニアに対して無理に研修を受けさせたり、スキルアップを強制するのは逆効果です。

本当に必要なのは、「学びたい」と思うきっかけをつくること、つまり「やりたいスイッチ」を押すことです。

  • 人は自発的に興味を持ったときに最も学ぶ

  • 「学ぶべきだから」ではなく、「学びたいから」になることが重要

  • 新たな環境や刺激が「やってみたい」を引き出す

この「やりたいスイッチ」を押す方法として、最も効果的なのが越境学習です。


学び直しの鍵は「越境学習」にある

越境学習とは、異業種や異なる環境で実際に働いたり、学んだりすることで、新たな視点やスキルを得る学習方法です。

  • 「座学では学べない、現場でのリアルな経験」

  • 「新しい環境に身を置くことで、強制的に思考を変える」

  • 「日常業務の枠を超えた、新たな気づきを得る」

  • 「自分のキャリア観を見直し、進みたい方向を明確にする」

実際に、ある企業が従業員を異業種企業に派遣し、越境学習を取り入れたところ、60%以上の参加者が「新しいことに挑戦する意欲が湧いた」と回答しています。

しかし、ミドル・シニア層に向けた越境学習の機会は極めて少なく、若手向けのプログラムが中心となっているのが現実です。その結果、多くのミドル・シニアは「学びたい」と思うきっかけを得られず、現状維持のまま社会の変化についていけなくなっています。


企業と国がともにマインドセット変革に投資すべき

現在、リスキリング施策はスキル取得に偏重しており、マインドセットの変革が軽視されています。

しかし、スキルをいくら提供しても、学ぶ意義を見出せなければ実践にはつながりません。ミドル・シニアに求められるのは、まず「学びたい」と思える環境づくりです。

企業ができること

  • ミドル・シニア向けの越境学習プログラムを拡充する

  • 社外での学びをキャリア成長の一環として認める

  • 若手偏重の人材開発費を見直し、世代横断的な学びの機会を作る

国ができること

  • 越境学習プログラムへの補助金制度の創設

  • 企業がミドル・シニアを研修に送り出しやすくする税制優遇

  • 地域コミュニティやNPOと連携し、現場での学びの機会を増やす

国と企業がともに、スキル習得だけでなくマインドセット変革にも資金を投入することで、ミドル・シニアが「学びたい」と思う環境を作ることができます。

スキルをいくら支援しても、それを活かす土台がなければ意味がありません。だからこそ、マインドセットの変革こそが最優先されるべきなのです。


まとめ──ミドル・シニアが学び直すために越境学習を推進しよう

スキル支援はもう十分。リスキリングを本当に機能させたいなら、マインドセットの変革にこそ投資すべきです。

「この歳になって、新しいことなんて学びたくない」── そんな考えが広がれば、日本社会は停滞してしまいます。

だからこそ、企業も社会も、そして国も、越境学習をもっと活用すべきです。

あなたの会社では、越境学習をどう活かしますか?


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たなか つばさ@仕事旅行社
ふつうの人が、仕事にワクワクできる世界を目指してます。そのために役に立ちそうな情報をつらつらと発信して行きます。もしよかったら応援ください。