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2024年夏の終わりの金沢ひとり旅(その2):元図書館司書が見た石川県立図書館

8月下旬に、2泊3日で金沢に行ってきました。
今回の金沢旅行の目的の1つが、石川県立図書館に行くこと。
大学の司書課程の授業では、全国各地の図書館を紹介をしています。その際、「百聞は一見に如かず」ではないのですが、自分が実際に見たことがある図書館の方が説明がしやすいように思っています。全国各地の話題の図書館をすべて見学することはできないので、東京近郊の新館を中心に足を運ぶようにしています。実際に行って見たことで、web情報ではわからない気づきがあったり、利用者の視点・図書館司書の視点の両方で図書館を評価しながら説明ができるからです。

金沢滞在中、日曜日の夕方、平日の午前中の2回、石川県立図書館を訪問しました。両日とも、利用者は多かったです。

石川県立図書館の外観は、本のページをめくるイメージ


本好きを魅了する図書館空間

石川県立図書館は、兼六園の近くにあった旧館時代に一度訪問したことがあります。複合施設内にあった図書館で、古くて館内も狭かったという記憶があります。

石川県立図書館が現在地に移転、リニューアルオープンしたのが2022年7月16日。メディアでもたくさん紹介されています。
「話題になっているし、早目に行かなくては。」と思っていたのですが、なかなか予定が合わず、この夏、ようやく訪問することができました。

訪問して、図書館好き、本好きの人だけではなく、様々な人を魅了する図書館になっています。

南ノ西口の案内板

館内は写真撮影OKです。ただし、資料の接写は禁止で、他の利用者に迷惑をかけないなどの配慮も必要です。
気になる場所を撮影しながら、館内を見てまわりました。図書館利用者だけではなく、観光客と思われる人、図書館関係者のような人もいたかもしれません。

「利用案内」(上)と「見学者ガイド」(下)。
「見学者ガイド」にはおすすめコース(30分コース、60分コース)が紹介されています。

図書館内に入って、本に囲まれたすり鉢状の円形の空間に圧倒されました。

グレートホールから円形の上を見上げて撮影してみました。
天井の青が印象的な写真になりました。

木材がふんだんに使われた図書館空間は、最近のトレンド?
1回目の来館時は気づかなかったのですが、2回目の来館時に回っていて、柱など、あちこちに金沢の建築物の特徴が取り入れられていることに気づきました。

木材がたくさん使われた建物です。

来館者は多いはずなのに、空間が広いからなのか、他の人があまり気にならずに過ごせるのは良いかもしれません。


思いがけない本との出会いを楽しむ

天井の高さは約15mの吹き抜け空間を4階まである書架が層のように囲んでいます。階段とスロープが組み合わされて、各階がゆるくつながっています。迷路のように書架の間を進んでいくと、
「自分は、今、どこにいるんだろう?」
とわからなくなりますが、目印となるのが、加賀友禅の五色「加賀五彩」。方角で色分けてしています。でも、慣れないと確実に迷いますし、迷うのも楽しいかもしれません。

1階フロアの方位磁石
天井から、方角を表す色のタペストリーが下がっています。
北側の閲覧スペース。サイン類や椅子なども、コーナーごとに色分けされていました。

1階から2階に続く、ホールを囲む円形の曲線の書架は、「本との出会いの窓」のほか、「暮らしを広げる」「仕事を考える」「文学にふれる」「自分を表現する」「好奇心を抱く」「日本を知る」などのテーマごとに本をキュレーションしています。書架スペースが多く、表紙を見せながら紹介できるのは良いと思いました。本の表紙を見せて書架に並べると、手にする人が増えます。

石川県に関する本を紹介するコーナー「石川コレクション」
本との出会いの窓。
様々な大きさの窓を使って本を紹介しています。

1階から2階にかけての書架の間はゆるいスロープになっていて(ややスロープの幅が狭い?)、本を運ぶためのエレベーターもあるのですが、
「本を運んで並べる作業は大変だろうな。」
と思いましたが、実際にはどうなのでしょうか?

同時に、どういうテーマで、どういう本を紹介するかという本のキュレーションすることは、これからの図書館司書に不可欠なスキルだと考えます。蔵書検索で本を探すこともできますが、本のキュレーション作業は本の内容も知っていないとできません。どういうテーマで、どういう本を紹介するかは「司書の腕の見せどころ」でもあるのです。

階段状に、曲線の書架が並んでいます。
2階、3階の外側の書架には、NDC順に本が並んでいます。
蔵書検索、資料の貸出手続き、座席の予約などがパソコンからできる「セルフステーション」。

石川県立図書館は、「本との思いがけない出会いの場」という空間づくりをしているように思いました。
一方で、蔵書検索パソコンはあるにしても、館内が広いので、
「慣れないと、特定の本を探すのは難しいかもしれないな。」
とも思ったのですが、どうなのでしょう?


様々な座席を、目的に応じて使う

閲覧エリアには、さまざまな種類の約500の閲覧席が設けられているそうです。

1階ホールのケースで紹介されていた、館内の椅子ののミニチュアコレクション。

ホールを見下ろせる席。
外の景色を眺められる席。
本棚の後ろや本棚の間の書斎のような雰囲気の席。
閲覧室のあちこちに設けられた、気になった本を読んだり、休憩できる席。友人たちと会話をしながら作業ができる席。

中央のホールを見下ろせる閲覧席(個人席)は人気のようです。
ほぼ満席でした。
書架の後ろにも、1人用の座席、複数人で使えるテーブル席など、
さまざまな座席が設けられています。
予約制の「サイレントルーム」。
静かに読書や勉強をする部屋。

利用者の立場としては、様々な座席が設けられていることで、その日の用事や気分で図書館の座席を使うことができるのは、とてもありがたいことです。

一般用の閲覧スペースにも、書架の間に閲覧席や座席が設けられています。
(書架の間の閲覧席は人気のようで、埋まっていました。)

見学していて、様々な座席で思い思いの使い方をしている利用者の姿を見て「いいな」と思いましたし、「近くにこんな図書館があって、うらやましいな」と思いました。


子どもが自由に楽しめるスペース「こどもエリア」

1階に設けられた「こどもエリア」。

図書館の中に遊具が設けられていたり、子どもの好きな秘密基地のようなスポットがあちこちに設けられていたり。
子どもが図書館に行きたくなる工夫が設けられていました。

書架の上に設けられた遊具で、たくさんの子どもたちが元気に遊んでいました。
(たまたま、子どもたちの姿が映っていないだけ。)
書架の間に設けられた不思議なスポットですが、子どもが好きそう。

子どもたちが走り回っていても怒られない自由なスペースは、たくさんの親子連れでにぎわっていました。近所の保育園児たちが図書館に来ていて、紙芝居を見ていました。

子育て関係の本を置いたコーナーもありました。


カフェでひと休み

途中、図書館内のカフェ「HUM&Go」でひと休み。
HUM&Go」は、石川県内に4店舗あり、その1つが石川県立図書館内にあります。石川県の産材を使ったおしゃれな店内は意外と広く、様々な席があります。こちらも多くの人でにぎわっていました。

「HUM&Go」は、石川県立図書館内にある食文化体験スペースでイベントも行っているようです。

図書館ブレンドコーヒー(暑かったので、アイスコーヒー)とニューヨークチーズコーヒー。

石川県の食材を使ったメニューも多かったように思います。食事のメニューもおいしそうでしたが、今回はスイーツ系にしてみました。

石川県立図書館では、カフェの他に、館内に飲食ができるスペースがありました。長時間滞在する利用者がいる図書館には、飲食ができるスペースは不可欠だと思っています。


郊外の大規模図書館

地方の公共図書館では、十分な駐車場の確保が不可欠になります。図書館に限らず、買い物に行くにしても、何をするにしても車が不可欠。東京にいるとペーパードライバーでも何とか生活できますが、地方では、車がないと生活できません。

石川県立図書館も金沢市の中心部からは離れているので、400台分の駐車場を確保していますが、休日は満車になるくらい多くの人が訪れています。

私は2日ともバスを利用しましたが、バスで図書館を利用している人もいるようです。図書館の南東側にバス停がありますが、バス利用の人もいると思うので、館内にもバスの時刻表があるとよいと思いました。(金沢駅から、路線バスで30分くらいかかります。)


さまざまな使い方ができる図書館

実際に石川県立図書館を見学をしてみて、話題になるのも納得しました。この記事で使っているのはすべてスマホで撮った写真ですが、何よりも写真映えします。

図書館という本のある場所の展開、本の見せ方の工夫、目的に応じたさまざまな図書館のスペースや資料の使い方の提案もあります。館内を歩き疲れたらひと休みできるスペースもあります。

2階の企画展示コーナー(右下)。
企画展「発酵と暮らし-石川の海山技-」が開催中。

利用者のニーズを広く受け止めることができる図書館。
図書館の利用方法は図書館が決めるのではなく、図書館が提示したメニューから利用者が選ぶだけではなく、利用者が決める。
これからの図書館の方向性を提示している、そんな気がしました。

図書館関係者だけではなく、本が好きな人にも足を運んで欲しいと思いましたし、「石川県立図書館の見学だけに、金沢に行くのもありかもしれない」と思いました。


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