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十八世中村勘三郎を偲ぶ猿若祭(2024年2月歌舞伎座)

歌舞伎座の「猿若祭二月大歌舞伎」に行ってきました。

「十八世中村勘三郎十三回忌追善」とあるように、十八世中村勘三郎が勤めた演目が並びます。そして、勘三郎の息子の中村勘九郎・七之助兄弟、中村勘九郎の息子の勘太郎・長三郎、勘三郎の義弟の中村福助・芝翫のほか、片岡仁左衛門、坂東弥十郎、中村獅童など、ゆかりのある役者たちが出演していました。

今回、久しぶりに歌舞伎座で観た勘九郎の舞台にさまざまな可能性を感じました。



【昼の部】勘九郎の佐野次郎左衛門

昼の部では、『籠釣瓶花街酔醒かごつるべさとのえいざめ』の佐野次郎左衛門を勘九郎、兵庫屋八ツ橋を七之助が勤めました。
繁山栄之丞を片岡仁左衛門が勤めていましたが、元気そうだし、何よりも舞台姿の若々しさにびっくりしました。十八世勘三郎が佐野次郎左衛門の時も栄之丞を勤めていたと思うので、親子二代の佐野次郎左衛門の相手をしたことになります。
兵庫屋八ツ橋の七之助は、美しいだけではなく、吉原の太夫としての意地が感じられました。

勘九郎も、七之助も、丁寧に演じていたので、「どうしてそういう結末になってしまったのか」が良くわかります。

佐野次郎左衛門は、勘三郎も何度も勤めていますが、勘九郎のほうが次郎左衛門の実直さが出ていて良かったと思います。1つ1つの演技がとても丁寧でした。


【夜の部】勘九郎親子の『連獅子』

勘九郎、長三郎親子による『連獅子』。
舞台を観ながら、改めて、「勘九郎は踊りがうまい」と思いました。以前よりも余裕が感じられ、決まった時の形もきれいでした。
ただし、最後の毛振りが勢いにまかせているように見えたのが残念。最近の毛振りは、「とにかく数多く振ればいい」という役者さんが多く、そうすると、踊りというよりも何かの競技のように見えて、姿が美しくないと思います。毛振りの数よりも、毛振りの姿の美しさを優先させて欲しいと思っているのは私だけでしょうか?

勘九郎の次男の長三郎君、体全体を使って、教わったとおりに一生懸命に踊っている姿が良かったです。


勘九郎の進む道

勘九郎は、この先も父や祖父が勤めたさまざまな役を引き継いでいくと思います。勘九郎は、舞台姿も、口跡も父親そっくりになってきました。
ただし、似てはいるけれど、十八世勘三郎 ≠ 勘九郎 です。祖父や父が得意としてきた芸を引き継ぐだけではなく、勘九郎らしさを舞台で見せて欲しいと思っています。

踊りのうまい人なので、若い頃から見得の時の形などがきれいでした。でも、時々、サービスし過ぎというか、大げさというか、やり過ぎに感じることもあり……。(これは、勘三郎と同じ?)

2月の『籠釣瓶花街酔醒』の佐野次郎左衛門がとても良かったので、中村吉右衛門が手がけた播磨屋系の役を勘九郎で観たいと思いました。義太夫物も意外と(?)合うのではないでしょうか。


新しい歌舞伎座で、勘三郎の舞台を観たかった……。

1階ロビーには十八世中村勘三郎追善の祭壇があり、2階のロビーには勘三郎が勤めた思い出の舞台のパネルが展示されていました。眺めながら、
「この舞台、観に行ったな……。」
としみじみ、感慨にふけったのと同時に、
「もう13年もなるのか……。」
という気持ちになりました。

中村屋親子の『連獅子』

改めて、十八世中村勘三郎の舞台をもっと観たかった、新しい歌舞伎座の舞台で観たかったと思います。

2月の歌舞伎座の定式幕は、中村座バージョンも使われていました。

【アイキャッチ画像】
歌川国貞「中村座舞台開狂言仕初之図 (狂言仕初之図)」
国立国会図書館デジタルコレクション

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