【読書日記】『さらさら流る』
あらすじも知らず、柚木麻子さんの原作というだけで借りてしまった本。要は図書館本です。
東京の川というか、先のオリンピックの際に埋められてしまい暗渠になった場所と恋の物語が描かれています。
ここだけ書くとロマンチックな感じもしますが、現代のリアルというか、かなり衝撃的な展開が待っています。
コーヒーチェーン店の広報部に勤務する菫は、たまたまネット検索をしていて、過去に恋人に懇願されて撮ったヌード写真が流出していることを知ります。そこから、元彼である光晴との出会いから別れまでを回想します。
ネット上のトラブル。女性の裸の写真の流出は、ネット上に流して、拡散するヤツが悪いんだけど、撮らせた方が責められがち。菫も自分が悪いのと苦しみ、精神的に病んでいきます。
そこで活躍するのが、中学時代からの友人である百合や菫の家族です。百合は菫のために弁護士を紹介し、家族も温かく見守ります。百合を通して写真の流出を知った光晴も、なぜこんなことが起こったのか、悩みます。真相を知ると本当に腹が立つし、バカヤローという感じなのですが。
友達や家族に支えられて自分自身や日常を取り戻そうとする菫。写真流出騒動で全てを失う光晴。全く違う人生を生きている2人ですが、ラストはそれぞれ前に進む決意をします。
もう、会うことはない2人。すれちがっても声をかけることもないかもしれません。暗渠から始まった恋は、幸せだった分、別れの辛さというのが倍増になるのです。
お互いにないものがあるから惹かれあい、好きという思いが強すぎるからこそ、憎しみも強くなるのかもしれません。人を好きになる、愛するということはシンプルだからこそ、難しい。
『さらさら流る』の救いは、菫が画像を見つけたこと。家族や友達、同僚が見つけて、指摘されたら、もっともっと悲しい物語になったはずです。本人が見つけたからこそ、迷い、悩みながらも前向きなラストになったのでは?
東京の暗渠になった川、物語に出てくる場所のなかに、自分にとって懐かしい所もあり、そういった意味でも興味深く読むことができました。
ただ、柚木さんの『ランチのアッコちゃん』みたいなのを想像して読むとちょっと違うので、戸惑ってしまうかも。
「読者メーター」で、教えてもらったインタビュー記事を貼っておきます。